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第一章 出会い〜旅の始まり
その頃、俺は……(リッキー視点)
しおりを挟む今日は久々に朝遅く宿を出て、昨夜話した通りに東門へ向かう。
いつもなら朝早いうちにチームは行動するんだが、今回はシエルがお昼頃に何かあるらしく、それに合わせて行動するとなると何時もより遅い時間になったのだ。
東門から草原エリアへと出ると今日は誰もいないようで、貸し切り状態だ。
シエルにもここは魔物が出ないのか聞かれたが、初心者が採集に来るくらいだから弱い魔物しか出ないと教えてやる。
さて俺達もここに解体に来ているんだから早速始めないと夕方帰るまでに間に合わないな。
シエルに魔物を鞄から出してもらうが、思ったより多い。
……終わるか?
さて始めるか!とホーンラビットを掴んだところで、シエルから待った!がかかった。
どうやら自分が解体のための台を作るから、その上で解体をしてほしいようだ。
まあ俺としても地面でするより大きな台の上のほうが自然な姿勢で作業できるから問題はないがな。
シエルが作った台は土魔法なのにまるで石のような滑らかさと硬さで、解体しても肉などに土汚れがつくことはなかった。
なるほど、この魔法は便利だな!
俺はスコットと違って力は普通の男性より少しあるくらいなのでデカい魔物は選ばずに小さい方を選ばせてもらう。
そのかわり数をこなすから許してほしいものだ。
さっそく解体の終わったホーンラビットの肉をシエルのところに持っていくと、すぐさま水魔法で軽く流した後に一口大の大きさに切っていた。何を作るんだろう?
それにしてもリリーのやつ、大丈夫なのか?
あいつ料理なんてしたことないから、迷惑かけてなきゃいいが。
俺はその後もたくさんの小さい魔物を解体してはシエルに渡していく。
その間にスコットの方もビッグディアーを1頭解体し終わったようだ。
あれは相当でかいから、かなり苦労したと思う。
それから少ししたらシエルからお昼を食べようと声がかかる。
どうやら今日のお昼はみんな各自で持ってきている昼メシの他に、『サラダ』とかいう生野菜を切ったものがそれぞれ1つずつ配られた。
すでに岩塩と油がかけられている。
初めて食べるが、とてもさっぱりしていていくらでも食べられそうだ!
街の屋台では肉類ばかりだからこういうのは新鮮な感じだな。
お昼を食べ終わるとおもむろにシエルが鞄から大きくて厚みのある四角くて平たい物体とこれまた四角いのだがあちこち角が丸みを帯びている形の物体を取り出した。
みんなして『一体、シエルは何を取り出したんだろう』と見ていると、シエルは大きくて厚みのある四角くて平たい物体を「コンロ」と呼び、その後取り出したとても大きくて細長く縦にデカい物体は物を冷やす魔道具だと説明された。
なんでも、この2つはシエルがいた世界の自分の部屋からこちらに持ってきたものだという。
すごいな、その鞄!?
こちらにいながら向こうのものが手に入るなんて。
それはそうと、あちらの世界のコンロって火が出ないんだな!?
えっ、どうしてそれで料理ができるんだ?
火がなければ加熱できないだろうに、この魔道具は火が出なくても鍋を加熱できるようだ。
あちらの世界って、一体どんな感じなんだろうな……?
チラッとシエルを見ると、その鍋に一口大の肉を入れては、加熱後の肉を出して……を繰り返している。
そしてそれを鞄の蓋をめくってコソッと見ては、口から出ている涎を舌で舐めているユーリが面白い。
あれはどう見ても、今作っているのを食べたくてしょうがないって感じだ。
とりあえずまた解体に戻ると、そのうちこの周辺に美味しそうな匂いが漂い始め、さっき昼飯を食べたのにもかかわらず涎が出てきてしょうがなく、つまみ食いをしに行かないように我慢するのが大変だった。
そのうち、どうやらその匂いにつられた魔物が辺りに出始め、料理をしているシエル以外の4人でその魔物を倒しては解体してシエルのところに持っていった。
何かの料理に使ってくれることだろう。
弱いとはいえ、あまりにも魔物が頻繁に出るもんだからユーリが結界を張ろうかとシエルに言っているのが聞こえた。
えっ、ユーリは結界張れるのか!?
それはすごいな!
たとえ急に危険な事が起こっても、とりあえずはその危険を防ぐことができるってことなんだから。
赤ちゃんとはいえ、さすが神竜ってことだな!
それからまたしばらくは、先ほどと違う美味しい匂いを嗅ぎながら解体に勤しむ。
今、解体しているものが今後美味しいものに変わる。
これからの旅がすごく楽しみだ!
今いる草原が夕日によって赤く染まり始めた頃、解体もすべて終わった。いや~、疲れた。
最後の方は4人で解体をしたから間に合ったようなもので、それだけの数があったっていうのが驚きだ。
やっぱりオークの脅威は森に何らかの変化を与えていたんだなと今頃ながらに思う。
「シエルのほうが終わったら街に帰るか?」
「そうね、ちょっとこのままの状態でずっといるのは勘弁してほしいわね。」
「確かに。私も早く宿に帰ってお風呂に入りたいです!」
みんな意見は一致だな。さすがに俺も長い時間この服は着ていたくないな。
「それにしてもシエルの出してきた魔導具、凄い品だったな。」
「ええ、火の出ないコンロや氷の入ってない氷室なんて、驚いたのなんのって!」
そう、この世界には『氷室』という氷を使って食品を冷やす魔道具が存在している。
氷室は庫内の上部に氷があり、それを魔力で氷が溶けないように維持されている。
それがシエルのいた世界では凍らせる機能もあるなんて凄いよな。
そうこうしていると、シエルの方も作業が終わったらしくこちらに歩いてくる。
「その骨やら皮なんかはどうするんですか?」
シエルは『解体後の残骸』を指さして言う。
それを見てスコットが答えた。
「ああ、これは売れないから焼却処分だな。人もここらにはたくさん来るだろうし、後に残しておくわけにいかないしな。」
その横でいつものようにエミリーが高火力の火魔法で骨や皮なんかを焼き払った。
その後、水魔法で火を消すと街に戻る。
東門では俺たちの格好を見て門番が「なんだ血だらけで。怪我してるわけじゃないようだから、そんなにたくさんの魔物を討伐したのか?」と聞いてきたが、疲れていてめんどくさかったので「いや、解体していたんだ。」とだけ言って中に入った。
門番は「お疲れ様だな!」とだけ言って肩を叩いて労ってくれた。
正直いって疲れている時はその対応だけなのが助かる。
はぁ~……早く宿に帰って風呂に入って美味しい夕飯食べたいよ……。
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