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第1章 出会い〜旅の始まり
閑話 山田の休日 2
しおりを挟む風呂から上がると紫惠琉からスマホにメッセージがあった。
どうやら姉に連絡を取ったらしく、明日の昼に紫惠琉のアパートの部屋前で待ち合わせることになったようだ。
もちろん独り身の俺は特に予定なんてないから、紫惠琉の姉に合わせて待ち合わせ場所に行くことにした。
ちなみに買い物リストはとりあえず食料のことだけしか書いておらず、日用品は少なかった。
なにぶん紫惠琉のアパートの中の家具やら電化製品、日用品やらはみんな鞄に突っ込んでおけば良いので、買い足すとしたらあとはティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品と食料や当日に廃棄した調味料くらいだろう。
まるで『異世界にお引越し』って感じだなと、最初は思ったもんだ。
ホント軽い感じで行けそうで、すごく身近な場所に思えてしまう異世界だが、実際は全く生活様式や常識が違う場所なんだから気を抜いたら危険だと思う。
ちなみに『自称神様』の話だと、俺はあっちに行くことができないが、紫惠琉の家族はあっちに行くことはできるはずだ。
実際に会えるというのは羨ましいと思うが、何の力もない一般人があっちに行って一緒に生活や冒険ができるかというとかなり厳しいんじゃないかな?とは思う。
まぁ、安全な場所で一時的に会うなら全然OKだろうけどね。
とりあえず明日会うことになっている紫惠琉の姉はどんな人なんだろうかと、今から少しソワソワしてしまう。
もし紫惠琉と会える可能性があるなんて話したら、どんな反応をするんだろうか?
そんな事を考えるとなかなか眠れないが、なんとか眠ることができるといいな。
- - - - - - - - - - - -
翌日、俺は少し寝不足のまま紫惠琉のアパートに向かった。
待ち合わせ時間にはまだ時間があるが、俺はとりあえず部屋の前まで行くことにした。
階段を上がって2階の右端にある角部屋が、紫惠琉の部屋だ。
何度も行ったことあるが、なかなかに広い部屋だった。
あ、そういえばコンロは元々あったのと取り替えて使っているから、元々あったコンロはコンロ台の下の扉の中にあるから今あるのと入れ替えて!って言われていたっけ。
そんな事を考えながら紫惠琉の姉を待っていると、階段の方から足音が聞こえてきた。
何気なくそちらを見ると、紫惠琉にすごく似ている女性が歩いてきたので、まず間違いなくこの人があいつの姉なんだろう。
彼女が近くまで来たので、俺の方から挨拶をする。
「もしかして紫惠琉のお姉さんですか?あ、はじめまして。俺、紫惠琉の会社の元同僚で、山田っていいます。」
すると彼女はふんわりと笑い、ペコリと頭を下げた。
「いつも弟がお世話になっています。紫惠琉の姉の沖 友梨佳といいます。今日は弟のためにお手伝いをしてもらえると聞いています。よろしくお願いしますね?」
そう話す彼女は、とても穏やかな性格なんじゃないかと思えた。
とりあえず玄関前で立ち話もなんなので中に入ることに。
鍵はどうやらお姉さんが持っているようだ。
鍵を使って中に入ると、あいつらしく部屋はとても綺麗に片付いている。
「しばらくこの部屋に来ていなかったけど、あまり変わらないのね。お姉ちゃん、ホッとしたわ!」
彼女はそんな事を言って部屋の中をあちこち見て回っている。
もしかして紫惠琉の部屋は彼女が掃除していたのかな?
とりあえず俺は紫惠琉に言われた通り、部屋にある色々なものを『自称神様』から貰った鞄に次々と放り込んでいく。
それを見たお姉さんは驚いた顔で俺に問いかけてきた。
「……ねぇ、その鞄、なんかおかしくない?」
……やっぱりそう思うか。これは説明しておかないと。
「もしかすると紫惠琉から聞いてなかったですか?この鞄、異世界にいる紫惠琉が持っている鞄に繋がっているらしいんですよ。例えば……ほら、この冷蔵庫も鞄に少し入れるだけでこんな風にスルスルと吸い込まれて行くんですよね。確かに初めて見た時はびっくりしますよね~。」
俺はそう言って、中身を取り出して空になっている冷蔵庫に鞄の口を開いて少しかぶせた。
するとあんなに大きな冷蔵庫が、普通サイズのボデイバッグにスルスルと入っていく。
いや~、いつ見ても不思議だ。
絶対的に大きさの違うユーリがこんな狭い口から出入りするのを何回か見たが、ホント驚くよ。
初めてその光景を見たお姉さんは、その綺麗な顔であんぐりと口を開け唖然としている。
俺はその傍らで次々と買いだめしてあった日用品や家電製品を鞄に突っ込んでいく。
後回しにしていたコンロ台から紫惠琉の私物であるIHコンロを鞄に入れ、元々あったコンロを据えればここはOKだ。
部屋の中が捨てるもの以外にほぼなくなってスッキリした頃、お姉さんは再起動したようだ。
「そっか、これが昨日しーちゃんが言っていたことなのね?これはすごいわ!それに……確かに、異世界にしーちゃんが行ってしまったっていう証明にもなるわね……。」
そう言うとすごくしょんぼりししてしまった。
そっか……『異世界に行った』っていうことは『もう二度と会えない』と思っているんだな。
まぁ普通はそう思うよな。
「お姉さん、もしかしてもう二度と紫惠琉に会えないと思っています?」
俺のその一言で、お姉さんは何かを察したらしい。
「……ま、まさか…!?」
俺は神妙な顔をして頷く。
「ええ、実はこの鞄……生き物も入れるんです。」
「…と、いうことは?」
「あちらの鞄に繋がっているので、あちらに出ることができます。」
俺はとうとうこの鞄の秘密をお姉さんに教えた。まっ、元々今日教える予定だったけどな。
「でも、この鞄の中は時間停止しているので、あちらから出してもらわないと外に出れないんですよ。なので、紫惠琉に連絡取ってからじゃないと向こうにいけませんよ?」
そう、ユーリは特別なようだが、本来はこちらから中に入った『生き物』はあちらの鞄の所持者である紫惠琉から鞄の外に出してもらわなければならないのだ。
「なるほどねぇ~。それさえクリアすれば私も異世界に行ける、と?」
「ええ、『自称神様』ははっきりとは言いませんでしたが、実際にこの鞄から向こうの生き物が来ることありますしね。」
「えっ!?来たことあるの!?」
「はい、紫惠琉の従魔らしいですよ?」
それを聞いたお姉さんは今すぐにでも向かいたそうだった。
「でもまずはお姉さんが異世界に向かう前に、こちらでやらなきゃならないことをしないとですよ?」
お姉さんはハッとした顔で俺を見た。
「そうね、まずはこの部屋を解約しなきゃね!とりあえず契約した不動産会社に行きましょう!」
それから俺達は不動産会社に行き、事情を説明して契約を解除させてもらった。
本来は部屋の引き渡しには日数がかかるのだろうが、本人がもう来れないのと保証人であるお姉さんが今いることで、そのまま鍵を返して終わりとなった。
もし部屋に何か問題があったら、その時はお姉さんに連絡が行くようにしてもらい、俺達は不動産会社を出た。
不動産会社を出た俺達は今後の予定を話し合うことにした。
「これから俺は紫惠琉のために食材や調味料を買いに行こうと思いますが、お姉さんはどうしますか?」
するとお姉さんは少し拗ねたような顔をして話しだした。
「さっきからずっと気になっていたんだけど!私の事『お姉さん』って呼んでいるけど、絶対あなたのほうが年上たと思うんだけど!だからお姉さんじゃなくて名前で呼んでほしいわ!」
なるほど、もしかすると彼女のほうが年下かもしれないな。
実は、俺と紫惠琉は会社では同期なんだが、年齢が違う。
俺は他の会社から引き抜かれて今の会社へ来たし、紫惠琉は大学を新卒で今の会社へ来たからだ。
だから同期ではあっても年は5歳ほど違う。
「なるほど、その可能性はありますね。…ちなみに紫惠琉とは何歳違いますか?」
「あら、山田さんは女性に年齢を聞くの?まぁいいけど……しーちゃんとは4歳違うのよ。じゃあ、私の年を聞いたんだから、あなたの年も教えてね!」
「俺は紫惠琉より5つ年上ですよ。」
「ほらやっぱりあなたのほうが上じゃない!じゃあ私のことは『友梨佳』って呼んでよね!あと、敬語じゃなくて普通に話してほしいわ。」
「了~解。じゃあ紫惠琉に話すように話すってことでいいな、友梨佳さん?」
すると、そうしてくれと言った本人である友梨佳さんのほうが顔を赤くしている。
もしかして、呼ばれ慣れてないのかな?
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