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第1章 出会い〜旅の始まり
さあ、夕飯だよ!
しおりを挟む俺が腹の上にユーリを乗せてソファーでのんびりとしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
俺がドアに向かって問いかけると、スコットさんが「もうすぐ夕飯の時間になりそうだから食堂行かないか?」と聞いてきた。
もちろん俺はすぐに支度して3人で食堂へ。
階段の途中からでも、もうカレーの匂いが立ち込めていて、めちゃくちゃお腹が空いてきた。
どうやら2人もこの匂いには抗えなかったようで「今夜はこの匂いのメニューを食べるぞ!」なんて言っている。
あれ?俺の作ったのを食べるんじゃなかったのかな?
まぁ、同じのだけど!
食堂へ行くと女将さんがニコニコしながら俺の方に歩いてきた。
「やっと来たね?お前さんから分けてもらったあのカレーっていう具、大好評だよ!まぁあの匂いを嗅いだらそうなるのは目に見えていたから、限定メニューだと言っておいたさ!」
「好評なようでなによりですよ~。」
それを聞いていた2人は驚いて俺を見る。
「えっ、この匂いのメニューはシエルが作っていたものなのか?」
「ってことは、俺たちは一杯だけじゃなくておかわりもできるってこと?」
そんな2人に俺は笑顔で頷く。
「ええ、買ってきたあの一番でかい鍋に作ったので、まだまだたっぷりありますよ!」
するとそれを聞いていた女将さんはニヤリとして猫なで声で俺に聞いてきた。
「まだまだあるならさぁ、鍋にもう一杯もらえないかねぇ?もう一日食事込みの宿泊代をグループ分ただにするからさぁ?」
それを聞いていたリッキーさんは少し顔をしかめていたが何も言わず、スコットさんは女将さんにさっきの話のことを詳しく教えてくれと聞いていた。
「なんだい、この子に何も聞いてなかったのかい?今夜のメニューの『カレー』っていう、ご飯にかけて食べる具を鍋一杯分譲ってもらう代わりに宿泊代を一泊分タダにするって約束したんだよ。」
「なるほど、それでもう一杯欲しいからもう一日分……ってことなんですね?シエル、まだ余裕はあるのか?この匂いでつられてきたのに完売だというのは少し可哀想だからな。分けてあげられるなら分けてやってくれないか?」
スコットさんが俺に頼んできたので頷くと、とりあえず3人でキッチンに行くことになった。
キッチンに行ってコンロに寸胴鍋を出すと、女将さんはいそいそとおかわりの鍋を持ってきた。
……ん?なんとなくだけど、さっきの鍋より大きい?でもまあ、いっぱいあるからいいか!
女将さんの鍋にたっぷりと入れてやると、女将さんは嬉しそうに持っていった。
「それにしてもめちゃくちゃいっぱい作ったんだな!これ、5人でおかわりしたとしても全然余りそうじゃね?」
「そうだな。でも確かシエルのその鞄、時間停止機能があったはずだから食べ残しても腐らずにまた食べられるはずだ。旅の食事が楽しみだな!」
そんな事を2人が話していると、女将さんがご飯をたっぷりと入れた器を5個持ってきてくれた。
「はいよ、約束のご飯だよ!おかわり分も遠慮せずに頼みなね!」
「はい、ありがとうございます!」
俺はその器に盛り始めたところでリッキーさんに聞いた。
「食堂のテーブルにエミリーさん達、います?」
それを聞いて素早く見に行ったリッキーさんは頷いて「2人共ちゃんと席を確保していてくれたよ。」と伝えてくれた。
ならば盛って持っていこう!
5個分のカレーが入った器を3人で手分けして持って、2人の待つテーブルに向かった。
テーブルに座っていた2人が俺たちに気づくと、目を輝かせて手を振ってくれた。
「こっちよ!そっか、この匂い、シエルくんが作っていたものだったのね。階段から降りてくる時にすっごい美味しそうな匂いがしてきて、食べたいって思っていたのよ~!」
「私もです!匂いを嗅いでいると妙にお腹が空きますよね!……おかわりはあります?」
そんな2人の反応に俺も嬉しくなった。
「はい、女将さんがおかわり分のご飯も出してくれるってことなので、大丈夫ですよ!まだまだかける具はたっぷりありますしね。」
それを聞いて2人は大喜びだった。
ほら、冷める前に早く食べようよ!
俺たちは席についていただきますをする。
4人は俺が食べる前に『いただきます』と言って手を合わせるのを毎回見ているうちに自然とするようになった。
やっぱり「この『いただきます』には食べ物を作ってくれた人だけじゃなく、材料になってくれた物に対しても感謝をする、そんな気持ちが込められているんですよ。」と教えたのが効いたのかな?
それから皆でカレーを食べ始める。
すると一口食べると、みんな揃って驚きの表情だ。
「辛いのに複雑な味で、なんて美味しいんだ!?」
「そうよね、辛いのは辛いんだけど、野菜の甘味やお肉の脂身の甘みとかいろんな味がするのよね!」
「ホント、美味しいです!」
「……。」
みんなが「美味しい!」と言いながらどんどん食べ進めている。
リッキーさんなんて美味しいとすら言わずに夢中で食べているよ!
こっそりと食堂の中を見ると、あちこちの席でカレーを夢中で食べている姿が目に入った。
そうだよね、カレーって美味しいもん!
俺はそんな皆を見ながら一口、カレーを食べる。
あぁ、久しぶりのカレー、なんて美味しいんだ!
そうだよ、この味だよ。いつも家で作って食べていた味。
実は山田はいろんなカレールーをたくさん送ってくれていた。
その中で俺がいつも使っていたメーカーのものをチョイスして今日は作ってみたんだ。
ホント、あとで山田には感謝を伝えなくては!
そしてどうやら俺がまだ数口しか食べてないのに、皆はもう食べ終わってしまったようだ。
名残惜しげに器を見ているので「おかわりいりますか?」と聞くと、みんな笑顔で頷いた。
「じゃあ器を持っていって、盛ってきますね。」
「1人じゃ持てないだろ?俺も行くよ。」
俺がそう言うとリッキーさんが持つ係に立候補してくれた。
2人で改めてキッチンへ
キッチンに着くと女将さんにおかわりのご飯をもらい、カレーをかける。
そしてすぐにまた席に戻り、俺も続きを食べ始める。
それからしばらくして、みんながカレーに満足したので部屋に戻ることにした。
実はあれから男性陣はもう一杯おかわりしたんだよ。すごい食べるよね!
それから俺は帰り際にキッチンに寄り、もう一杯分だけご飯をもらう。
それをすぐに鞄にしまい、みんなと部屋に戻った。
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