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第1章 出会い〜旅の始まり
従魔登録をしよう!
しおりを挟む「……ルーシェさんは何か知っているんですか?」
俺は思わず聞いてしまった。
周りを見ていないからわからないが、皆にはユーリの詳しい種族とかは何も言ってなかったから多分びっくりしてるだろう。
ルーシェさんは俺とスコットさん達の『態度の温度差』で、なんとなく察したようだ。
「ゴメン、あまりにもびっくりしてしまって取り乱してしまったよ。」
「いえ、大丈夫です。」
「この事はあとで2人だけで話す?」
「いえ、どうせなら2人にも説明してやってください。」
「分かった。じゃあ2人にも話すとしようか。2人も覚悟は良いかい?」
ルーシェさんがそう言って2人を見る。
俺もチラッと確認したが、どうやら2人はまだ聞く覚悟は決めかねているようだった。
「まだ聞く覚悟がないなら後で話そう。とりあえずシエルくんに聞きたいが、もうこの子と従魔契約はしているのかい?」
「はい。この子は俺の魔力を与えて卵から孵しましたから、俺以外とは契約できません。」
「……なるほどね、君が選ばれたわけか。この事は誰にも言わないんだよ?もちろん、僕も言わない。知られると大変なことになるかもしれないからね。」
「はい、それはリッキーさんたちにもかなり念を押されました。」
俺の返事を聞くとルーシェさんは頷き、真剣な顔で俺を見る。
「じゃあ、まずは従魔登録をしようか。ギルドカードには一応記録させるけど、秘匿事項として載せることになる。だから通常のスキャンでは情報を読み取ることは不可能なんだ。それとすまないが、登録をしたとしてもその子はできるなら街中では自由にさせないほうが良い。私みたいに長生きの者や神聖法国の上層部なんかはすぐに気づいてしまうからね。」
「わかりました。じゃあとりあえず登録をお願いします。」
「わかったよ。じゃあその子もこっちへ。」
ルーシェさんは改めてギルドカードを透明な板に置いて、またステータス画面みたいな部分を操作をする。
「そういえばその子の名前は?」
「ユーリっていいます。」
「ユーリ、だね?じゃあその名前で登録するね!」
そう言うと何やらまた操作しだした。
「それじゃあ最後にユーリちゃんの手をここに置いて?」
ユーリが透明な板の上の指定されたところに手を置くと、一瞬光ってすぐに消えた。
「はい、これでユーリちゃんの従魔登録は完了したよ。ユーリちゃんの魔力も登録してあるし、何かあったらすぐにギルドに来てね。きちんと秘匿されるようにしておいたから普通の受付では情報が出ないけど、他の街に行った時にはその支部のギルマスの持っている魔道具なら確認できるからね。」
「そうなんですね、どうもありがとうございました!」
従魔登録が終わると、改めてルーシェさんが2人を見て「聞く覚悟はできたかい?」と聞いた。
結局2人は覚悟できたということで話を聞くことになった。
「さて聞く準備ができたようだから話すとしようか。あ、その前に……。」
ルーシェさんがまた鍵のついている棚に行き、手のひらに乗るくらいの大きさの丸い魔道具を持ってきた。
「これは盗聴防止の魔道具でね。重要な話をする時には必ず使っているんだ。うちの職員から重要な情報を漏らす訳にはいかないしね。」
そう言って魔道具に魔力を流した。
すると一瞬で魔道具を中心にこの部屋中に何かが広がったような……そんな感覚がした。
「さてと……これで準備ができたね。まずは何から話そうかな。ん~、まず言えることは、ユーリちゃんが誕生した事でようやくこの世界は荒れている状況から徐々に安定していくようになるってことかな。」
「……それはユーリの生まれに関してのことから言っていますか?」
「そうだね、それもあるけど、元々この『神竜種』っていうのは神の代理でこの世界にいる竜なんだ。その竜がいることで世界の安定が保たれると言われている。だからあまり途切れずに常にこの世界にいる存在なんだけど、実は先代の神竜がお亡くなりになってからこの200年ほど降誕されてない。何故かは分からないが、今回こうやって降誕されたということは多分託せるに値する者がこの世界になかなか誕生しなかったんだろうと思う。」
そんな事を言われて俺達は顔を見合わせてしまった。
なぜなら俺が異世界人であることを2人は知っているからだ。
なるほど、そう考えてみれば神様としてもこれ以上間隔を空けるわけにいかなくて、言い方は悪いが、あまりにも卵を託せる相手がこの世界に現れないから、たまたま見かけた地球のどこかで託せる相手を見繕ったってわけだ。
そのせいで俺が今、ここにいるというね。
確か山田の話では『向こうに行った彼が不便などしないようにといろいろ配慮した』との事だが、それはまぁ確かに危険がないようにだとか、便利な機能付きの鞄をよこしたりだとか色々してくれたと思う。
それに関しては、ホント色々助かった。
だけどね、俺としてはそのまま日本にいたかった。
日本で友人や家族と楽しく過ごせるほうがよほど良かったんだけど、さすがにもうそれは無理だと諦めたよ。
日本に通じる鞄があるじゃないかと思うかもしれないが、この鞄、実は追尾機能付きなので俺自身は鞄の中に入って日本に行くっていうことはできない。
かといって山田の話では、山田自身も対の鞄に入ってこっちに来るのは絶対に駄目だと『自称神様』に言われたって言っていたのでこちらへは来れない。
だから俺と山田はもう二度と実際に会って一緒に酒を飲んだり遊びに行ったりとかはできないのだ。
そこまで考えて、ふと気づいた。
……おや?もしかして……そう考えると俺の家族は対の鞄からこちらへ来れるんじゃないか?
えっ、どうなんだろう!?
それならこっちで家族皆と暮らせるなんてこともできるのか!?
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