異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
上 下
30 / 196
第1章 出会い〜旅の始まり

悪いことはするものじゃない

しおりを挟む
街への道を、急に現れた暁の星の一部メンバーに塞がれた。

何となくこの後の展開がわかってはいるが、一応スコットさんが代表して聞く。

「暁の星のメンバーだな?一体俺たちに何のようだ?それに他のメンバーは?」

それを聞いてあちらの代表がニヤニヤしながら答えた。

「他のメンバーが今どこにいるのかは知らねぇよ。だが、お前たちにはここでくたばってもらうから知る必要はないだろうがな!」

その言葉が合図だったのか、全員で一気に襲いかかってきた。
……う~ん、セリフや行動がまるで三文芝居みたいだなぁ。

あちらはどうやら魔法が使える人がいないらしく、みんな武器を手にしている。

俺は何もできないだろうという判断なのか、俺以外のメンバーにそれぞれ1人づつ向かったようだ。

俺は後衛のエミリーさんとリリーさんが気になり、そちらを見る。

2人は魔法使いだから接近戦は苦手だと思ったのだが、どうやらそうでもなかったようだ。

エミリーさんは魔法で身体強化をしつつ短剣で戦っているし、リリーさんは持っているロッドを棍棒みたいに使っている。

……えっ、それってそういう風に使って大丈夫なの!?

俺は武器も構えずにみんなの戦闘を唖然と見てしまっていた。

そのうちにやはり向かってきた相手との力の差が歴然としていたスコットさんとリッキーさんが、戦っていた相手を早々に制圧し終わったようだ。

それを見て、エミリーさん達と戦っていた相手はどうやら分が悪いと判断したらしく、俺の方に向かってきた。

俺1人なら2人でかかれば何とかできるだろうと思ったのだろう。
2人は俺の前にきて剣を振りかざす。

俺も剣を構えて対応しようとしたのだが、もたついて反応に少し遅れてしまった。

その2人の後ろでみんなの叫び声が聞こえる。

2人の振り下ろした剣が俺の間近に迫ったのだが、やはりというか、見えない壁に阻まれて剣が弾き返された。

「なにぃ~!?」
「なんで剣が当たらない!?」

2人はとても驚いて一瞬動きを止めたが、その隙にリッキーさんが2人を制圧してくれた。

「ありがとうございます、リッキーさん!ホント、すごく強いですね!」

「いや、無事なら良いんだ。でもこの状況、まるで出会った時と同じだな?シエルがやられた!と思ったのに大丈夫だったなんて。」

「あ~…それについては後で話しますので、今は聞かないでください。それより、多分暁の星の他のメンバーが到着したんじゃないですかね?」

俺がそう言って振り返ると、ちょうど俺たちの方に走って来ている暁の星のメンバーがいた。

スコットさん達はそれを見て剣を構える。
俺は剣をしまってリッキーさんに伝えた。

「リッキーさん、彼らは敵対者じゃないですよ。」

「…なんでわかる?」

「俺の探査魔法ではどうやら魔物と敵対者、俺達にとって無害な人で色が違うみたいなんです。俺も最初は赤と青しか表示されなかったので気づきませんでしたが、洞窟で取り押さえている暁の星のメンバーが来た時にそれがわかりました。魔物は赤、敵対者は白、無害な人は青に光るんです。さっき戦った人達は白に光っていました。でも今から来る人達は青に光っています。」

「…なるほどなぁ、シエルはそう見えているのか。」

「はい、そうなんですよ。だから安全だと思います。」

そう俺がリッキーさんと話している間に暁の星の他のメンバーがこちらに到着したようだ。

こちらの状況を見て、暁の星のリーダーは申し訳無さそうな顔をして勢いよく頭を下げた。

「すまん、うちのメンバーが迷惑をかけた!」

「いや、それは大丈夫だったが…ちょっと管理不足だったんじゃないのか?」

スコットさんにそう言われて尚更申し訳無さそうにしている。

「今更言い訳にしか聞こえないだろうが、俺も昨日の夜にこいつから聞かされるまで気付けなかったんだ。それまでは言動にちょっと問題があっても犯罪には手を染めていないという認識だったんだが…こいつが言うには、実はメンバーとして活動していない時にそういう事をしていたらしいんだ。」

「はぁ~…つまり、お前たちは安全だと言いたいのか?」

「ああ、それだけは信じてくれ!俺たちは襲ったりしない!」

「だが、そいつは仲間だったんだろ?」

「そうだったようだが、そういうのが嫌でいつも止めていたらしい。元々俺たちは最初は2グループだったのが合同で依頼を受けるうちに意気投合して1つのグループになったんだが、街に帰ってギルドに報告に行った時に今回の事を考えて元の2つに戻すことにするよ。そしてこいつはそっちのメンバーからこっちに移籍させるつもりだ。」

暁の星のリーダーがそう言うと、制圧されている方のリーダーは焦った声で言った。

「リーダー、それだけは勘弁してくれ!俺たちだけじゃやっていけない!」

「いや、もう悪事を働いていることを知ってしまったからには無理だ。お前たちにはしっかりと罪を償ってもらう。そしてこいつは今回の事でお前達に愛想がついたそうで、こちらに来たいと言っていたから罪を償ったら暁の星に戻すつもりだ。」

そう宣告されると、制圧されたグループは一様にがっくりと項垂れてしまった。

それから俺達は取り押さえられた人達を縄で縛っていく。

絶対解けないことを確認し、刃物などを所持していないことも確認する。
持っているとそれで縄を切られて逃げられることもあるからな。

それが終わると皆で森を抜けて街へ向かう。
もうここまで来ると魔物の脅威はないから街へはすぐ着いた。

入口で身分証を見せて中へと入る。
中に入るとすごく気持ちが楽になった。

いや~、今回の依頼はめちゃくちゃいろんな事あって疲れたなぁ…。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

転生して何故か聖女なった私は、婚約破棄されたうえに、聖女を解任される。「え?」 婚約者様。勝手に聖女を解任して大丈夫? 後は知りませんよ

幸之丞
ファンタジー
 聖女のお仕事は、精霊のみなさまに助けてもらって国を守る結界を展開することです。 この世界に転生した聖女のエリーゼは、公爵家の子息と婚約しています。  精霊から愛されているエリーゼは、聖女としての能力も高く、国と結界を維持する組織にとって重要な立場にいます。    しかし、ある夜。エリーゼは、婚約破棄されます。 しかも婚約者様が、勝手に聖女の任を解いてしまうのです。 聖女の任を解かれたエリーゼは「ラッキー」と喜ぶのですが…… この国『ガイスト王国』は、どの様なことになるのでしょう。 ――――――――――――――――  この物語を見つけていただきありがとうございます。 少しでも楽しんでいただければ、嬉しいです。

異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし
ファンタジー
銀行に勤めるそこそこ頭はイイところ以外に取り柄のない23歳青山 零 は突如、自称神からの死亡宣言を受けた。そして気がついたら異世界。 異世界ではまるで別人のような体になった零だが、その体には類い稀なる才能が隠されていて....

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜悪役令息として追放された魔境でヴァイオリン練習し

西園寺わかば🌱
ファンタジー
「お前を追放する——!」 乙女のゲーム世界に転生したオーウェン。成績優秀で伯爵貴族だった彼は、ヒロインの行動を咎めまったせいで、悪者にされ、辺境へ追放されてしまう。 隣は魔物の森と恐れられ、冒険者が多い土地——リオンシュタットに飛ばされてしまった彼だが、戦いを労うために、冒険者や、騎士などを森に集め、ヴァイオリンのコンサートをする事にした。 「もうその発想がぶっ飛んでるんですが——!というか、いつの間に、コンサート会場なんて作ったのですか!?」 規格外な彼に戸惑ったのは彼らだけではなく、森に住む住民達も同じようで……。 「なんだ、この音色!透き通ってて美味え!」「ほんとほんと!」 ◯カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました。 ◯この話はフィクションです。 ◯未成年飲酒する場面がありますが、未成年飲酒を容認・推奨するものでは、ありません。

異世界転移~治癒師の日常

コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が… こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18) すいません少し並びを変えております。(2017/12/25) カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15) エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...