異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

文字の大きさ
上 下
2 / 196
第1章 出会い〜旅の始まり

異世界、こんにちは!

しおりを挟む
瞼越しのあまりの眩しさに、ふと目が覚めた。 

眩しすぎて未だに目が開けられないが、すごい草や土の匂いが鼻に届いている。

それになんだか体もあちこち痛い。

(…もしかして昨日飲みすぎて家までたどり着けずに地面で寝てしまったんだろうか?)

あまりにも深酒をすると記憶をなくす事があったので、もしかして?と思い慌てて飛び起きた。

「…えっ?」

目を開けて周りを見渡すと、そこは森の中だった。

「ここはどこだ?会社からの帰り道にこんな森なんてなかったはずだけど…」

俺はそんなことを呟き、ふと自分の服装を見る。

昨日来ていたスーツや革靴はそのままだったが、他にはいつもの通勤鞄ではなく、たすき掛けで見知らぬ鞄をかついでいた。

「…あれ?この鞄はなんか見覚えあるけど、なにがあったんだったっけ…」

俺はそう呟くと鞄の中を見てみた。

鞄の中は何故か真っ暗で、中が分からない。

恐る恐る手を入れてみると、その瞬間、目の前に透明なボードが浮かんで現れた。

「なんだ、これ?」

ボードには日本語で「内容物の種類」、「名前」などが書いてあった。

「…卵?卵ってなんだ?」

そう呟くと、なんの感触もなかった手に卵の表面みたいなものが触れた。

そのまま持って取り出してみると、そこにはダチョウの卵のような大きさの卵があった。

「…あっ!なんか思い出してきたぞ!昨日山田と飲んだあと別れて1人で歩いていていたら不思議な店を見かけたんだったっけ…」

その店でもらった卵や鞄だったのを思い出し、その後に深い穴に落ちたのも思い出した。

「穴に落ちたのになんで地面に寝ていたんだ?」

俺は卵を持ちながら首を傾げてそう呟くと、立ち上がって周りを観察してみる。

まったく見覚えのない森だった。

辺りを見回しながら、ふとこの前読んだ異世界転移なんかの小説を思い出した。

あの小説にも穴に落ちたら異世界に転移していた…なんて書かれていたなと思い出したところで、もしかして俺も異世界に来ちゃった?とふとありえないことを想像してみた。

「まさかなぁ…?」

そんなことを思っていると、少し離れた茂みがガサガサと動いた。

はっとしてそちらを見た瞬間にその茂みから黒く大きな狼が出てきてこちらに走ってきた。

俺は驚いてその場から動けずにいると、その狼は俺から30cmほどの距離に来ると急に見えない壁にでもぶつかったかように「ギャンっ!」と鳴くと、一旦下がった。

そしてまた近づいてきて、今度は見えない壁を思い切りひっかきはじめる。

「えっ、なんだ、これっ!?」

俺は狼が怖くて卵を抱えながら縮こまっていると、そのうち狼は諦めてどこかへ去っていった。

「なんか狼はどこかに行ってくれたけど…やっぱりここ、日本じゃないのかな。」

そう呟いたら急にものすごく不安に襲われる。

全くの見知らぬ場所にたった1人でいるのだ。

それも周りにはもしかすると先程の狼みたいに襲ってくるやつがいるかもしれないのだ。

「このままここにいてもさっきみたいに襲われるだけだろうから、少し移動してみるか」

俺は勇気を出して足を踏み出そうと思ったが、そこで先程の出来事を思い出す。

「…そういえばさっきの狼、なんか見えない壁にぶつかったよな?」

俺は卵を鞄に戻し、両手で壁がありそうな場所に手を伸ばす。

だがそこには何も壁はなく、触ることはできない。

「…あ、そういえば昨日のばあさん、なんかよくわからない腕輪をくれたっけ。」

俺は鞄から腕輪を取り出すとよく見てみた。

とてもきれいな宝石のついている銀色の腕輪だ。

宝石の横から反対側のところまで、見たこともない文字や記号がびっしりと彫り込まれている。

昨日は全く気づかなかったが、この腕輪、ごく薄っすらと光っている。

「たしかあのばあさん、あらゆる攻撃から守ってくれる…なんて言ってたっけ?あれってホントなのかな?」

とりあえず藁にも縋る思いでその腕輪を手首に着けてみると、1度だけ強く光ると今度は全く光らなくなった。

なんだかよくわからないがこの先守ってもらえるならありがたいと思い、とりあえず移動を開始した。

しばらく周りをキョロキョロしながら歩いていると、遠くの前方から獣の叫び声や人の叫び声なんかが薄っすらと聞こえてきた。

(…!人の声だ!)

俺は慌ててその声のする方に走っていくと、そこには男女4名と先程の狼が2匹戦っていた。

辺りには狼の死骸が6体転がっている。

そうこうしている間にまた1匹、大きな剣を使っている男に倒された。

残りの1匹は他の狼より2まわりも大きいのではないかと思われるほどとても大きな個体だった。

その狼は戦っている男たちから目線を外すと、狼を見ていた俺と目線を合わせる。

俺がぎょっとしたのもつかの間、狼は男たちの前から俺の前へと移動してきた。

「…!危ない!」

男たちはそれまで俺の存在には気づかなかったのに、狼が急に動いたことによって気づいたらしい。

狼を追ってこちらに来てはいるが間に合わない。

狼は俺の目の前に来ると前足を振り上げ、男たちが来るよりも早く俺に向かって振り下ろした。

俺は突然の出来事に立ちすくんでしまったままで、驚きに目を見開いた。

すると、やはり狼の爪は俺の30cm手前で見えない壁に阻まれた。

狼の方はまさかよくわからないものに阻まれるとは思っていなかったようで、驚いて動きを止めてしまった。

その隙をついて、追いついてきた冒険者たちによってその巨大な狼は倒された。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...