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第1章 出会い〜旅の始まり
異世界、こんにちは!
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瞼越しのあまりの眩しさに、ふと目が覚めた。
眩しすぎて未だに目が開けられないが、すごい草や土の匂いが鼻に届いている。
それになんだか体もあちこち痛い。
(…もしかして昨日飲みすぎて家までたどり着けずに地面で寝てしまったんだろうか?)
あまりにも深酒をすると記憶をなくす事があったので、もしかして?と思い慌てて飛び起きた。
「…えっ?」
目を開けて周りを見渡すと、そこは森の中だった。
「ここはどこだ?会社からの帰り道にこんな森なんてなかったはずだけど…」
俺はそんなことを呟き、ふと自分の服装を見る。
昨日来ていたスーツや革靴はそのままだったが、他にはいつもの通勤鞄ではなく、たすき掛けで見知らぬ鞄をかついでいた。
「…あれ?この鞄はなんか見覚えあるけど、なにがあったんだったっけ…」
俺はそう呟くと鞄の中を見てみた。
鞄の中は何故か真っ暗で、中が分からない。
恐る恐る手を入れてみると、その瞬間、目の前に透明なボードが浮かんで現れた。
「なんだ、これ?」
ボードには日本語で「内容物の種類」、「名前」などが書いてあった。
「…卵?卵ってなんだ?」
そう呟くと、なんの感触もなかった手に卵の表面みたいなものが触れた。
そのまま持って取り出してみると、そこにはダチョウの卵のような大きさの卵があった。
「…あっ!なんか思い出してきたぞ!昨日山田と飲んだあと別れて1人で歩いていていたら不思議な店を見かけたんだったっけ…」
その店でもらった卵や鞄だったのを思い出し、その後に深い穴に落ちたのも思い出した。
「穴に落ちたのになんで地面に寝ていたんだ?」
俺は卵を持ちながら首を傾げてそう呟くと、立ち上がって周りを観察してみる。
まったく見覚えのない森だった。
辺りを見回しながら、ふとこの前読んだ異世界転移なんかの小説を思い出した。
あの小説にも穴に落ちたら異世界に転移していた…なんて書かれていたなと思い出したところで、もしかして俺も異世界に来ちゃった?とふとありえないことを想像してみた。
「まさかなぁ…?」
そんなことを思っていると、少し離れた茂みがガサガサと動いた。
はっとしてそちらを見た瞬間にその茂みから黒く大きな狼が出てきてこちらに走ってきた。
俺は驚いてその場から動けずにいると、その狼は俺から30cmほどの距離に来ると急に見えない壁にでもぶつかったかように「ギャンっ!」と鳴くと、一旦下がった。
そしてまた近づいてきて、今度は見えない壁を思い切りひっかきはじめる。
「えっ、なんだ、これっ!?」
俺は狼が怖くて卵を抱えながら縮こまっていると、そのうち狼は諦めてどこかへ去っていった。
「なんか狼はどこかに行ってくれたけど…やっぱりここ、日本じゃないのかな。」
そう呟いたら急にものすごく不安に襲われる。
全くの見知らぬ場所にたった1人でいるのだ。
それも周りにはもしかすると先程の狼みたいに襲ってくるやつがいるかもしれないのだ。
「このままここにいてもさっきみたいに襲われるだけだろうから、少し移動してみるか」
俺は勇気を出して足を踏み出そうと思ったが、そこで先程の出来事を思い出す。
「…そういえばさっきの狼、なんか見えない壁にぶつかったよな?」
俺は卵を鞄に戻し、両手で壁がありそうな場所に手を伸ばす。
だがそこには何も壁はなく、触ることはできない。
「…あ、そういえば昨日のばあさん、なんかよくわからない腕輪をくれたっけ。」
俺は鞄から腕輪を取り出すとよく見てみた。
とてもきれいな宝石のついている銀色の腕輪だ。
宝石の横から反対側のところまで、見たこともない文字や記号がびっしりと彫り込まれている。
昨日は全く気づかなかったが、この腕輪、ごく薄っすらと光っている。
「たしかあのばあさん、あらゆる攻撃から守ってくれる…なんて言ってたっけ?あれってホントなのかな?」
とりあえず藁にも縋る思いでその腕輪を手首に着けてみると、1度だけ強く光ると今度は全く光らなくなった。
なんだかよくわからないがこの先守ってもらえるならありがたいと思い、とりあえず移動を開始した。
しばらく周りをキョロキョロしながら歩いていると、遠くの前方から獣の叫び声や人の叫び声なんかが薄っすらと聞こえてきた。
(…!人の声だ!)
俺は慌ててその声のする方に走っていくと、そこには男女4名と先程の狼が2匹戦っていた。
辺りには狼の死骸が6体転がっている。
そうこうしている間にまた1匹、大きな剣を使っている男に倒された。
残りの1匹は他の狼より2まわりも大きいのではないかと思われるほどとても大きな個体だった。
その狼は戦っている男たちから目線を外すと、狼を見ていた俺と目線を合わせる。
俺がぎょっとしたのもつかの間、狼は男たちの前から俺の前へと移動してきた。
「…!危ない!」
男たちはそれまで俺の存在には気づかなかったのに、狼が急に動いたことによって気づいたらしい。
狼を追ってこちらに来てはいるが間に合わない。
狼は俺の目の前に来ると前足を振り上げ、男たちが来るよりも早く俺に向かって振り下ろした。
俺は突然の出来事に立ちすくんでしまったままで、驚きに目を見開いた。
すると、やはり狼の爪は俺の30cm手前で見えない壁に阻まれた。
狼の方はまさかよくわからないものに阻まれるとは思っていなかったようで、驚いて動きを止めてしまった。
その隙をついて、追いついてきた冒険者たちによってその巨大な狼は倒された。
眩しすぎて未だに目が開けられないが、すごい草や土の匂いが鼻に届いている。
それになんだか体もあちこち痛い。
(…もしかして昨日飲みすぎて家までたどり着けずに地面で寝てしまったんだろうか?)
あまりにも深酒をすると記憶をなくす事があったので、もしかして?と思い慌てて飛び起きた。
「…えっ?」
目を開けて周りを見渡すと、そこは森の中だった。
「ここはどこだ?会社からの帰り道にこんな森なんてなかったはずだけど…」
俺はそんなことを呟き、ふと自分の服装を見る。
昨日来ていたスーツや革靴はそのままだったが、他にはいつもの通勤鞄ではなく、たすき掛けで見知らぬ鞄をかついでいた。
「…あれ?この鞄はなんか見覚えあるけど、なにがあったんだったっけ…」
俺はそう呟くと鞄の中を見てみた。
鞄の中は何故か真っ暗で、中が分からない。
恐る恐る手を入れてみると、その瞬間、目の前に透明なボードが浮かんで現れた。
「なんだ、これ?」
ボードには日本語で「内容物の種類」、「名前」などが書いてあった。
「…卵?卵ってなんだ?」
そう呟くと、なんの感触もなかった手に卵の表面みたいなものが触れた。
そのまま持って取り出してみると、そこにはダチョウの卵のような大きさの卵があった。
「…あっ!なんか思い出してきたぞ!昨日山田と飲んだあと別れて1人で歩いていていたら不思議な店を見かけたんだったっけ…」
その店でもらった卵や鞄だったのを思い出し、その後に深い穴に落ちたのも思い出した。
「穴に落ちたのになんで地面に寝ていたんだ?」
俺は卵を持ちながら首を傾げてそう呟くと、立ち上がって周りを観察してみる。
まったく見覚えのない森だった。
辺りを見回しながら、ふとこの前読んだ異世界転移なんかの小説を思い出した。
あの小説にも穴に落ちたら異世界に転移していた…なんて書かれていたなと思い出したところで、もしかして俺も異世界に来ちゃった?とふとありえないことを想像してみた。
「まさかなぁ…?」
そんなことを思っていると、少し離れた茂みがガサガサと動いた。
はっとしてそちらを見た瞬間にその茂みから黒く大きな狼が出てきてこちらに走ってきた。
俺は驚いてその場から動けずにいると、その狼は俺から30cmほどの距離に来ると急に見えない壁にでもぶつかったかように「ギャンっ!」と鳴くと、一旦下がった。
そしてまた近づいてきて、今度は見えない壁を思い切りひっかきはじめる。
「えっ、なんだ、これっ!?」
俺は狼が怖くて卵を抱えながら縮こまっていると、そのうち狼は諦めてどこかへ去っていった。
「なんか狼はどこかに行ってくれたけど…やっぱりここ、日本じゃないのかな。」
そう呟いたら急にものすごく不安に襲われる。
全くの見知らぬ場所にたった1人でいるのだ。
それも周りにはもしかすると先程の狼みたいに襲ってくるやつがいるかもしれないのだ。
「このままここにいてもさっきみたいに襲われるだけだろうから、少し移動してみるか」
俺は勇気を出して足を踏み出そうと思ったが、そこで先程の出来事を思い出す。
「…そういえばさっきの狼、なんか見えない壁にぶつかったよな?」
俺は卵を鞄に戻し、両手で壁がありそうな場所に手を伸ばす。
だがそこには何も壁はなく、触ることはできない。
「…あ、そういえば昨日のばあさん、なんかよくわからない腕輪をくれたっけ。」
俺は鞄から腕輪を取り出すとよく見てみた。
とてもきれいな宝石のついている銀色の腕輪だ。
宝石の横から反対側のところまで、見たこともない文字や記号がびっしりと彫り込まれている。
昨日は全く気づかなかったが、この腕輪、ごく薄っすらと光っている。
「たしかあのばあさん、あらゆる攻撃から守ってくれる…なんて言ってたっけ?あれってホントなのかな?」
とりあえず藁にも縋る思いでその腕輪を手首に着けてみると、1度だけ強く光ると今度は全く光らなくなった。
なんだかよくわからないがこの先守ってもらえるならありがたいと思い、とりあえず移動を開始した。
しばらく周りをキョロキョロしながら歩いていると、遠くの前方から獣の叫び声や人の叫び声なんかが薄っすらと聞こえてきた。
(…!人の声だ!)
俺は慌ててその声のする方に走っていくと、そこには男女4名と先程の狼が2匹戦っていた。
辺りには狼の死骸が6体転がっている。
そうこうしている間にまた1匹、大きな剣を使っている男に倒された。
残りの1匹は他の狼より2まわりも大きいのではないかと思われるほどとても大きな個体だった。
その狼は戦っている男たちから目線を外すと、狼を見ていた俺と目線を合わせる。
俺がぎょっとしたのもつかの間、狼は男たちの前から俺の前へと移動してきた。
「…!危ない!」
男たちはそれまで俺の存在には気づかなかったのに、狼が急に動いたことによって気づいたらしい。
狼を追ってこちらに来てはいるが間に合わない。
狼は俺の目の前に来ると前足を振り上げ、男たちが来るよりも早く俺に向かって振り下ろした。
俺は突然の出来事に立ちすくんでしまったままで、驚きに目を見開いた。
すると、やはり狼の爪は俺の30cm手前で見えない壁に阻まれた。
狼の方はまさかよくわからないものに阻まれるとは思っていなかったようで、驚いて動きを止めてしまった。
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