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結婚が認められた国
第七話 因縁と集結
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先輩記者は勇者太郎たちと一緒にバルコニーからその光景を見た。
城下町を囲う、城壁、そしてその先。
夜の闇を照らす松明の群れが地平の先まで続いている。
「えー、先ほど勇者太郎王は我が王国の新聞記者を殺害しました!!」
甲高い男の声が響き渡る。
先輩記者は聞き覚えがあった。それは自分を暗殺者として育てた旧王の忠臣の声だった。
(あー、なるほど、僕を死んだことにして、戦争の口実にするつもりだったのか、通りでチョーカーの要求が無謀なものになるわけだよ)
「よって正義は我らにあり! 償いとして貴国が属国として我が王国に下り、勇者太郎王が人間であると証明するため寵愛している魔族の首を差し出すことを要請する。もし受け入れられないのであれば貴国を100万の軍隊が蹂躙し、必ずやその悪魔の血を根絶やしにするとお約束しましょうぞ」
その言葉に勇者太郎とラスボス子の眉がピクリと動いた。
「なんかこの言い回しどこかで聞いたことあるぞ」
「あるわね。なんだかギッタンギッタンにしてやりたい」
「分かる」
ニタァと邪悪な笑みを浮かべる二人を見て、先輩記者は改めて自分が戦った相手の強大さに気が付いた。
(夜だから、相手の人数が分からない。さすがに100万は大げさだと思うけど……それにひるみもしないなんて)
「せ、先輩。大変です。私たち、死んだことになってます。どうしましょう、知らせた方がいいんでしょうか?」
「ううん。僕が生きていることが分かると、彼らに戦う大義名分がなくなる。それは向こうとしては都合が悪いから最悪、知らせに言ったその場で殺されるかもしれない」
「……そうですか」
「僕は絶対に死ねない。後輩くんが命を救ってくれた。その恩をまだ返せていない。それにお二人にも」
先輩記者は後輩記者を見つめて言った。
後輩記者は顔を少し赤くして先輩記者に言葉を返した。
「お礼ですか……じゃあ、先輩。結婚しましょう! 私先輩とずっと一緒に居たいです!」
「へ?」
突然の後輩記者からのプロポーズに、先輩記者は固まった。
二人の様子に勇者太郎は笑った。ラスボス子もつられたのかニコリと笑った。
「ははは、このバルコニーで告白できればそれはもううちの国民だ。歓迎するぜ」
勇者太郎は二人に向かってそう言ってにっかりと笑った。
「おっすー、そろそろ入ってきていいかナ?」
「おう。来たか、友よ」
そういうと金髪で肌が黒いサングラスの男と金髪ロングヘアの女性が入ってきた。
宿屋を経営していた二人だ。
だが、その服装は魔法使いと神官の装い。二人とも宿屋であったときとはまるで別人のように先輩記者は感じられた。
「お待たせしました」
「なんで二人がこんなところに」
「こいつは魔法使いチャラ男。俺の友で、まあいろいろあって、有事の際は来てもらう約束なんだ」
「そそ、俺っち本業魔法使いでいろいろヤンチャして牢屋に入ってたんだけど、太郎っちが条件付きで釈放してくれたわけ、いやー太郎っちマジ心にパンダ飼っているわ」
そう言うと金髪の男は軍隊を眺めた。
彼と一緒に入ってきた神官風の女性もそれに倣う。
「んじゃ、こいつら何とかすれば刑期どれぐらい減る?」
「だいたい5年ってとこですかね」
「えー……マジすくな。やっとアンダー300年ってのに、先長すぎじゃね?」
「まあまあ、真面目に一緒に働きましょうよ」
この二人が勇者太郎とどういう関係なのか先輩記者には分からないが、それでもこの大軍を前に怯まない実力者だというのは伝わってきた。
「一応、幼馴染剣士にも連絡は飛ばしたが、あの状態じゃ無理かもしれないな……」
そう呟いた勇者太郎は切り替えたとばかりに声を上げた。
「それじゃ、行くか!」
そして百万の軍隊を相手に、戦いが始まった。
城下町を囲う、城壁、そしてその先。
夜の闇を照らす松明の群れが地平の先まで続いている。
「えー、先ほど勇者太郎王は我が王国の新聞記者を殺害しました!!」
甲高い男の声が響き渡る。
先輩記者は聞き覚えがあった。それは自分を暗殺者として育てた旧王の忠臣の声だった。
(あー、なるほど、僕を死んだことにして、戦争の口実にするつもりだったのか、通りでチョーカーの要求が無謀なものになるわけだよ)
「よって正義は我らにあり! 償いとして貴国が属国として我が王国に下り、勇者太郎王が人間であると証明するため寵愛している魔族の首を差し出すことを要請する。もし受け入れられないのであれば貴国を100万の軍隊が蹂躙し、必ずやその悪魔の血を根絶やしにするとお約束しましょうぞ」
その言葉に勇者太郎とラスボス子の眉がピクリと動いた。
「なんかこの言い回しどこかで聞いたことあるぞ」
「あるわね。なんだかギッタンギッタンにしてやりたい」
「分かる」
ニタァと邪悪な笑みを浮かべる二人を見て、先輩記者は改めて自分が戦った相手の強大さに気が付いた。
(夜だから、相手の人数が分からない。さすがに100万は大げさだと思うけど……それにひるみもしないなんて)
「せ、先輩。大変です。私たち、死んだことになってます。どうしましょう、知らせた方がいいんでしょうか?」
「ううん。僕が生きていることが分かると、彼らに戦う大義名分がなくなる。それは向こうとしては都合が悪いから最悪、知らせに言ったその場で殺されるかもしれない」
「……そうですか」
「僕は絶対に死ねない。後輩くんが命を救ってくれた。その恩をまだ返せていない。それにお二人にも」
先輩記者は後輩記者を見つめて言った。
後輩記者は顔を少し赤くして先輩記者に言葉を返した。
「お礼ですか……じゃあ、先輩。結婚しましょう! 私先輩とずっと一緒に居たいです!」
「へ?」
突然の後輩記者からのプロポーズに、先輩記者は固まった。
二人の様子に勇者太郎は笑った。ラスボス子もつられたのかニコリと笑った。
「ははは、このバルコニーで告白できればそれはもううちの国民だ。歓迎するぜ」
勇者太郎は二人に向かってそう言ってにっかりと笑った。
「おっすー、そろそろ入ってきていいかナ?」
「おう。来たか、友よ」
そういうと金髪で肌が黒いサングラスの男と金髪ロングヘアの女性が入ってきた。
宿屋を経営していた二人だ。
だが、その服装は魔法使いと神官の装い。二人とも宿屋であったときとはまるで別人のように先輩記者は感じられた。
「お待たせしました」
「なんで二人がこんなところに」
「こいつは魔法使いチャラ男。俺の友で、まあいろいろあって、有事の際は来てもらう約束なんだ」
「そそ、俺っち本業魔法使いでいろいろヤンチャして牢屋に入ってたんだけど、太郎っちが条件付きで釈放してくれたわけ、いやー太郎っちマジ心にパンダ飼っているわ」
そう言うと金髪の男は軍隊を眺めた。
彼と一緒に入ってきた神官風の女性もそれに倣う。
「んじゃ、こいつら何とかすれば刑期どれぐらい減る?」
「だいたい5年ってとこですかね」
「えー……マジすくな。やっとアンダー300年ってのに、先長すぎじゃね?」
「まあまあ、真面目に一緒に働きましょうよ」
この二人が勇者太郎とどういう関係なのか先輩記者には分からないが、それでもこの大軍を前に怯まない実力者だというのは伝わってきた。
「一応、幼馴染剣士にも連絡は飛ばしたが、あの状態じゃ無理かもしれないな……」
そう呟いた勇者太郎は切り替えたとばかりに声を上げた。
「それじゃ、行くか!」
そして百万の軍隊を相手に、戦いが始まった。
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