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17,
しおりを挟む「はぁ」
「――おっ……と、大丈夫か?」
屋敷を出た途端、力が抜けた。
ずっと気を張っていたし、加護の力も使ったから……いつもよりマシだけど。
「平気、でも少し疲れたわ」
「そうだな」
寄り掛かれる存在がわたしを支えてくれる。 その様子を見たアインツマン様が、
「私の出番は無さそうだ」
そう言って優しく微笑み、わたしもそれに微笑みを返した。
「……なんだ? その意味深な――」
「素敵な紳士の方、馬車まで運んでくださる?」
片眉を落としながらリオネルはわたしを抱き抱え、馬車の中では専用の枕が迎えてくれた。 この枕も、これからはあまり出番が無いかもしれないけど。
◇◆◇
運命の夜会から数ヶ月後―――
「……よしっ」
鏡に映るわたしの顔は、すっかりクマも消えて疲労感も無くなった。
あれから加護の力は一度も使ってないし、何より、いつ借金取りが来るかという恐怖が無くなったのが一番だ。
今リオネルは、お義父様に付いて領主の仕事や商家とのやり取りを学び始めた。 わたしはというと、
「このドレスは……派手過ぎない?」
「とても良くお似合いです、ダリア様」
ロベルトとドレス選びをしている。 お化粧も薄くしたし、今日はお義母様と一緒にお茶会。 ダラビット家の人間として、少しずつ社交界に慣れていかないと。
「ふふ」
アインツマン様とコリーン様を義父母と呼べるのが本当に嬉しい。 屋敷の人達も皆良い人だし、わたしの人生はやっと輝き出した。
あと考えなければいけないのは、加護の使い方だ。 これは家族全員で話し合っている。 そしてあとは、ステラリアの事。
あの時ロベルトは言った、――――加護を授からなければ、と。 それは多分、加護さえ無ければステラリアもこうは育たなかった……そう言いたかったんだと思う。
「わたしはそうは思わないけど、昔から我儘な所あったし」
リオネルもそうだ、石化したステラリアを見る目は悲しげだった。 その気持ちもわかるの。 幼い頃、三人で駆け回っていた一人なのだから。
「でも……」
ノームホルン家は目に見えて衰退している。 今ステラリアの石化を解けば、あの夫婦は錬金をしろと詰め寄るだろう。 あの苦しみと、石化の恐怖を体験した娘に。
当然ステラリアは拒否する、そもそも錬金出来ないのだから。 そして、最後は嫌がる妹を無理矢理どこかへと嫁がせる。
「貴族の娘としては当たり前かもしれないけど、王子との婚約さえ嫌なら帰ってきた子だから……」
どうしたものか。
加護に頼っていたノームホルン家の経済状況は最悪、今や家財道具を売り払っているとか。 元々悪評があったのも祟って貴族階級を剥奪されそうらしいし……。
国もあの家にもう加護持ちが居ないのを知っている。 遠からずノームホルン家は没落するだろう。
「……そうね」
これも家族皆で考えよう、ロベルトも入れて。
加護の力は強大で、一人の意見で決めていい物じゃない。 一緒に向き合ってくれる人達が、わたしには居るから。
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