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しおりを挟む「本当の加護の力?」
「姉にも力があるのか? しかしそれなら……」
「そうだ、ステラリアを救えなかったではないか!」
そう、社交界のみならず、世界に知れ渡ったノームホルン公爵家の双子の名前。 でもいつしか、わたしの名前は『双子の姉』、『ステラリアの姉』になっていた。
「ダリア! 貴様のような穀潰しがよくそんな大言を吐けたものだな! お前が作ったのは子供の頃のこんな小さな金だけだろうがッ!」
でも、今はそれで良かったと思う、ノームホルン家の娘ではなく、
「あっ………ぁあッ! 私の金よッ!」
「――なっ、なんだと!?」
母の縋り付く石が金に変わる、でもそれは――――あなたの物じゃないの。
「こ、これは……」
「信じられん、これが真の神の加護か!」
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「う~む、これは、どこに飾ったものか……」
気に入ってくれた……かしら。
そ、それじゃちょっと気が早いけど、言ってしまおうかな……
「これが本当の神の力、錬金の加護を授かったダリア・ダラビットの処女作ですっ!」
ステラリアとは比べ物にならない純度、ただ金に変えるだけでなく、わたしならその量すら自在だ。 そして、どんな形にも出来る。 例えば―――
神々しく輝く黄金は膨れ上がり、
――――ダラビット家の紋章を型どっている。
「ちょっと気が早いんじゃないか?」
「わ、わかってるけど! ちょっと、言いたくて……」
にやけるリオネルから逃げるように俯く。 だって、ずっと我慢してたんだもの、ちょっとくらいいいじゃない……。
「あとで家の者に運ばせよう。 ジルベールよ、よもや追い出した娘の、それもダラビットの紋章をくれとは言うまいな?」
「――くっ……くく……ッ! ――こっ、こんな夜会はもう終わりだッ! 全員帰ってくれッ!」
はぁ、実力も無いくせに見栄っ張り、悪い貴族の見本のようだ。 まあ、帰れと言うなら帰りますね、ジルベール様。
「わたしの荷物は整ってる? ―――ロベルト!」
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「ジルベール様、申し訳ございませんがこのロベルト、二度目は堪えきれませんでした」
終わりよ、お父様だった人。
ステラリアからリオネルは返してもらった、あとは……ノームホルン家からも返してもらいましょう。
――――神の恩恵を。
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