妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏

文字の大きさ
上 下
15 / 17

15,

しおりを挟む
 

「本当の加護の力?」
「姉にも力があるのか? しかしそれなら……」
「そうだ、ステラリアを救えなかったではないか!」

 そう、社交界のみならず、世界に知れ渡ったノームホルン公爵家の双子の名前。 でもいつしか、わたしの名前は『双子の姉』、『ステラリアの姉』になっていた。

「ダリア! 貴様のような穀潰しがよくそんな大言を吐けたものだな! お前が作ったのは子供の頃のこんな小さな金だけだろうがッ!」

 でも、今はそれで良かったと思う、ノームホルン家この人の娘ではなく、

「あっ………ぁあッ! 私の金よッ!」

「――なっ、なんだと!?」

 母の縋り付く石が金に変わる、でもそれは――――あなたの物じゃないの。

「こ、これは……」
「信じられん、これが真の神の加護か!」

 来客達の感嘆の声、腕を組んだアインツマン様は台座の上、今わたしが錬金した金を見て二度頷く。

「う~む、これは、どこに飾ったものか……」

 気に入ってくれた……かしら。
 そ、それじゃちょっと気が早いけど、言ってしまおうかな……

「これが本当の神の力、錬金の加護を授かったダリア・の処女作ですっ!」

 ステラリアとは比べ物にならない純度、ただ金に変えるだけでなく、わたしならその量すら自在だ。 そして、どんな形にも出来る。 例えば―――

 神々しく輝く黄金は膨れ上がり、


 ――――ダラビット家の紋章を型どっている。


「ちょっと気が早いんじゃないか?」
「わ、わかってるけど! ちょっと、言いたくて……」

 にやけるリオネルから逃げるように俯く。 だって、ずっと我慢してたんだもの、ちょっとくらいいいじゃない……。

「あとで家の者に運ばせよう。 ジルベールよ、よもや追い出した娘の、それもダラビットの紋章をくれとは言うまいな?」

「――くっ……くく……ッ! ――こっ、こんな夜会はもう終わりだッ! 全員帰ってくれッ!」

 はぁ、実力も無いくせに見栄っ張り、悪い貴族の見本のようだ。 まあ、帰れと言うなら帰りますね、ジルベール様。

「わたしの荷物は整ってる? ―――ロベルト!」

「ロベルトだと? フン! 馬鹿な、奴ならもう……」

 この計画の功労者、わたしがこの屋敷で唯一信用出来る人物。 その人は入り口近くで丁寧にお辞儀をして、

「はい、整っております、ダリアお嬢様」

 リオネルに計画への協力を伝える手紙を届け、この屋敷から去った後、わたしからの手紙を読んで街に残ってくれていた。

 もう一通の手紙、ロベルト宛に書いたものには、今日、こうなるから、

「これからもよろしくねっ」

 そう書き綴った。

「貴様ぁ……この裏切り者めッ!」

 よく言うわ、今まで尽力してくれたロベルトを引き留めもしなかったくせに。

「ジルベール様、申し訳ございませんがこのロベルト、二度目は堪えきれませんでした」

 終わりよ、お父様だった人。

 ステラリアからリオネルは返してもらった、あとは……ノームホルン家からも返してもらいましょう。


 ――――神の恩恵を。


しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね

柚木ゆず
恋愛
 ※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。  あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。  けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。  そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。

婚約して三日で白紙撤回されました。

Mayoi
恋愛
貴族家の子女は親が決めた相手と婚約するのが当然だった。 それが貴族社会の風習なのだから。 そして望まない婚約から三日目。 先方から婚約を白紙撤回すると連絡があったのだ。

殿下が望まれた婚約破棄を受け入れたというのに、どうしてそのように驚かれるのですか?

Mayoi
恋愛
公爵令嬢フィオナは婚約者のダレイオス王子から手紙で呼び出された。 指定された場所で待っていたのは交友のあるノーマンだった。 どうして二人が同じタイミングで同じ場所に呼び出されたのか、すぐに明らかになった。 「こんなところで密会していたとはな!」 ダレイオス王子の登場により断罪が始まった。 しかし、穴だらけの追及はノーマンの反論を許し、逆に追い詰められたのはダレイオス王子のほうだった。

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。 その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。 元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。 代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。

私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗
恋愛
侯爵家の令嬢であるアルティアは、家で冷遇されていた。 彼女の父親は、妾とその娘である妹に熱を上げており、アルティアのことは邪魔とさえ思っていたのである。 しかし妾の子である意網を婿に迎える立場にすることは、父親も躊躇っていた。周囲からの体裁を気にした結果、アルティアがその立場となったのだ。 だが、彼女は婚約者から拒絶されることになった。彼曰くアルティアは面白味がなく、多少わがままな妹の方が可愛げがあるそうなのだ。 父親もその判断を支持したことによって、アルティアは家に居場所がないことを悟った。 そこで彼女は、母親が懇意にしている伯爵家を頼り、新たな生活をすることを選んだ。それはアルティアにとって、悪いことという訳ではなかった。家の呪縛から解放された彼女は、伸び伸びと暮らすことにするのだった。 程なくして彼女の元に、婚約者が訪ねて来た。 彼はアルティアの妹のわがままさに辟易としており、さらには社交界において侯爵家が厳しい立場となったことを伝えてきた。妾の子であるということを差し引いても、甘やかされて育ってきた妹の評価というものは、高いものではなかったのだ。 戻って来て欲しいと懇願する婚約者だったが、アルティアはそれを拒絶する。 彼女にとって、婚約者も侯爵家も既に助ける義理はないものだったのだ。

処理中です...