14 / 17
14,
しおりを挟む華やかな婚約発表が一転、大広間は静まり返った。 世界で僅か数人の加護持ち、それも公爵令嬢、まもなく花嫁になるはずだったステラリアは石像と化した。
「なっ、なんてことだ……」
「石に……なった……?」
周りは次第に状況を呑み込んでいき、これが悲劇だと認識する。
わたしは立ち上がり、怒りなのか絶望なのか、震える父に向かって歩を進める。
「すみませんお父様、救えませんでした」
「こっ……この役立たずがッ!! 結局お前は何もノームホルン家に貢献しないではないかッ! お前なぞもう娘でも何でもないッ! この家から出ていけッ!!」
今度はわかり易く顔を紅潮させ手を振り上げる。 それくらいは覚悟の上、これでさっぱりこの家と……
「――ぬっ!?」
わたしは決別の痛みに目を瞑ったが、
「ジルベール様、それはとても痛いのですよ? 私も最近ある女性にぶたれましてね」
その手は振り下ろされなかった。
「ぬぅ……! はっ、離せダラビットの伜がッ!」
リオネルの手を振り解き、息を切らせるお父様にリオネルは言った。
「婚約するはずのステラリアは石像になってしまった、私は石と添い遂げる気はありません。 ジルベール様、この婚約は――――破棄させていただく」
「こっ……こんな時に恥知らずがッ!!」
「そうですね、私はとんだ恥知らずですよ。 何故なら……」
「――わっ」
リオネルはわたしの肩を抱き寄せ、大広間に居る来客全てに向けて声を張り上げた。
「ダラビット家のリオネルは、婚約者を失ってすぐ心変わりをする恥知らずだッ! それも婚約者の姉であるこのダリアにね!!」
……ああ、やっと、やっと戻れた。 あなたの隣に……。
「フン! そんな病弱の役立たず勝手に持っていけ!」
お父様……いえ、もう父ではありませんね。
わたしの事は構いませんが、
「お言葉ですが、ダラビット家の方々に恥知らずはいません、本当の恥知らずというのは――――こういう者を言うんです!」
わたしが指差した先には、石化した娘にではなく、金に変わらなかった石に縋り付く元お母様の姿があった。
「どうして……私の、私の金はどうなるのッ!」
呆れて物が言えない、この人は金しか頭に無いのか。
「……そういう事か。 思うところはあるが、やれやれ、恥知らずな息子を持ったものだ」
ことの成り行きを見ていたアインツマン様は前に出て、
「これはダラビット家当主である私の責任だ! この愚息と追い出された娘も私が請け負おう!」
自分の私情で苦しめたわたしを、ダラビット家へ迎えてくれると言ってくださった。
「アインツマン様……」
さあ夜会は大詰め、あとは……
「お集まりいただいた皆様、そしてノームホルン家の方々にもお見せ致しましょう――――本当の加護の力をッ!!」
104
お気に入りに追加
3,339
あなたにおすすめの小説
どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね
柚木ゆず
恋愛
※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。
あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。
けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。
そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。
5年ぶりに故郷に戻ったら、かつて私を捨てた元婚約者が助けを求めてきました
柚木ゆず
恋愛
かつての婚約者によって全てを失い、最愛の人に救われてから5年。わたしは今は亡きおばあ様に結婚の報告をするため、久しぶりに故郷に戻りました。
お墓にご挨拶をして、おばあ様との思い出の場所を巡って。懐かしい時間を過ごしていた、そんな時でした。突然わたしの前に大嫌いな元婚約者が現れ、わたしだと気付かずこのようなことを叫んだのでした。
「お願いしますっ、たすけてください!!」
※体調不良の影響でお返事を行えないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じさせていただいております。
妹が嫌がっているからと婚約破棄したではありませんか。それで路頭に迷ったと言われても困ります。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるラナーシャは、妹同伴で挨拶をしに来た婚約者に驚くことになった。
事前に知らされていなかったことであるため、面食らうことになったのである。
しかもその妹は、態度が悪かった。明らかにラナーシャに対して、敵意を抱いていたのだ。
だがそれでも、ラナーシャは彼女を受け入れた。父親がもたらしてくれた婚約を破談してはならないと、彼女は思っていたのだ。
しかしそんな彼女の思いは二人に裏切られることになる。婚約者は、妹が嫌がっているからという理由で、婚約破棄を言い渡してきたのだ。
呆気に取られていたラナーシャだったが、二人の意思は固かった。
婚約は敢え無く破談となってしまったのだ。
その事実に、ラナーシャの両親は憤っていた。
故に相手の伯爵家に抗議した所、既に処分がなされているという返答が返ってきた。
ラナーシャの元婚約者と妹は、伯爵家を追い出されていたのである。
程なくして、ラナーシャの元に件の二人がやって来た。
典型的な貴族であった二人は、家を追い出されてどうしていいかわからず、あろうことかラナーシャのことを頼ってきたのだ。
ラナーシャにそんな二人を助ける義理はなかった。
彼女は二人を追い返して、事なきを得たのだった。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
傷物にされた私は幸せを掴む
コトミ
恋愛
エミリア・フィナリーは子爵家の二人姉妹の姉で、妹のために我慢していた。両親は真面目でおとなしいエミリアよりも、明るくて可愛い双子の妹である次女のミアを溺愛していた。そんな中でもエミリアは長女のために子爵家の婿取りをしなくてはいけなかったために、同じく子爵家の次男との婚約が決まっていた。その子爵家の次男はルイと言い、エミリアにはとても優しくしていた。顔も良くて、エミリアは少し自慢に思っていた。エミリアが十七になり、結婚も近くなってきた冬の日に事件が起き、大きな傷を負う事になる。
(ここまで読んでいただきありがとうございます。妹ざまあ、展開です。本編も読んでいただけると嬉しいです)
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
ここはあなたの家ではありません
風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」
婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。
わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。
実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。
そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり――
そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね?
※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる