2 / 17
2,
しおりを挟む「……ひどい顔」
朝鏡に映るのはいつもの顔。 目には黒いクマ、食欲が無く頬はこけて、疲弊感が全面に出ている。
「ステラリア、もう少し抑えてくれないかしら……」
この4年でわかった事がある。
それは……
――――『加護』のほとんどは、わたしが授かっていたという事が。
なのに、
「今日もひどい顔ね」
「まったく、身体が弱いのは仕方ないが、少しはステラリアを見習ってほしいものだ……!」
朝食の席で、両親は嫌気が差した顔でこんな事を言ってくる。 本当はわたしが『錬金』してるのに……。
――でも、ステラリアはリオネルを譲ってくれたんだもの。 今日だってダラビット家に夕食に呼ばれているし、リオネルとは想い合う関係になれた。 婚約はお父様に許してもらえてないけど……。
「具合が悪いと言って、たった一度しか金を作れんとは……」
「ごめんなさい……」
それが、この4年でわかったもう一つの事。
錬金には、―――『対価』が必要。
体内にある魔力みたいな物なのか、それを吸い取られる。 でも、ステラリアにはそれが少ないらしく、あの子が自慢げに加護を使う度、わたしのそれが吸い取られるのだ。
「あの時は出来たのに……今頃二人の加護持ちでダラビット家をとっくに追い越していた筈なんだ……!」
「あなた」
「……わたしのせいで、ごめんなさい」
やりたくても、無闇に錬金する妹のせいで出来ません……。
でもそれも、もうしばらくの辛抱なの。 ステラリアは願いを叶え、シャルル第二王子と婚約した。 そして半年前に家を出て、今は王子妃教育の為に王宮に行っている。
婚儀が済んだら伝えよう、あなたの加護はわたしが請け負っていたんだって。
そうしたら、今よりもっとマシな顔でリオネルと……
と、思っていたら数日後―――
突然家に帰ってきた妹は、
「王族なんて息苦しいッ! あんなの足枷を付けられた罪人みたいだわッ!」
と言って、忍耐の無い自分を棚に上げた、だけならまだしも……
「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」
……わたしは開いた口が塞がらず、目のクマは一層広がっていった。
214
お気に入りに追加
3,378
あなたにおすすめの小説
【完結】返してください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。
私が愛されていない事は感じていた。
だけど、信じたくなかった。
いつかは私を見てくれると思っていた。
妹は私から全てを奪って行った。
なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、
母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。
もういい。
もう諦めた。
貴方達は私の家族じゃない。
私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。
だから、、、、
私に全てを、、、
返してください。

どうやらこのパーティーは、婚約を破棄された私を嘲笑うために開かれたようです。でも私は破棄されて幸せなので、気にせず楽しませてもらいますね
柚木ゆず
恋愛
※今後は不定期という形ではありますが、番外編を投稿させていただきます。
あらゆる手を使われて参加を余儀なくされた、侯爵令嬢ヴァイオレット様主催のパーティー。この会には、先日婚約を破棄された私を嗤う目的があるみたいです。
けれど実は元婚約者様への好意はまったくなく、私は婚約破棄を心から喜んでいました。
そのため何を言われてもダメージはなくて、しかもこのパーティーは侯爵邸で行われる豪華なもの。高級ビュッフェなど男爵令嬢の私が普段体験できないことが沢山あるので、今夜はパーティーを楽しみたいと思います。

婚約して三日で白紙撤回されました。
Mayoi
恋愛
貴族家の子女は親が決めた相手と婚約するのが当然だった。
それが貴族社会の風習なのだから。
そして望まない婚約から三日目。
先方から婚約を白紙撤回すると連絡があったのだ。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

私がいなくなって幸せですか?
新野乃花(大舟)
恋愛
カサル男爵はエレーナと婚約関係を持っていながら、自身の妹であるセレスの事を優先的に溺愛していた。そんなある日、カサルはあるきっかけから、エレーナに自分の元を出ていってほしいという言葉をつぶやく。それが巡り巡ってエレーナ本人の耳に入ることとなり、エレーナはそのまま家出してしまう。最初こそ喜んでいたカサルだったものの、彼女がいなくなったことによる代償を後々知って大きく後悔することとなり…。

貴族の爵位って面倒ね。
しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。
両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。
だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって……
覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして?
理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの?
ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で…
嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

そういう時代でございますから
Ruhuna
恋愛
私の婚約者が言ったのです
「これは真実の愛だ」ーーと。
そうでございますか。と返答した私は周りの皆さんに相談したのです。
その結果が、こうなってしまったのは、そうですね。
そういう時代でございますからーー
*誤字脱字すみません
*ゆるふわ設定です
*辻褄合わない部分があるかもしれませんが暇つぶし程度で見ていただけると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる