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 ど、どちら様でしょう? と思いながらも、内心は薄々感づいていた。


「レ、レオーネ」


 ―――やっぱり。


 だと思ったけど、正直こんなにカッコイイなら見られたくなかったかな、最悪の悪女の姿は。 ……と言っても、どうせ別れなきゃならないし、そもそも今私はエルマなんだけどね。


「だから言ったんだ、エルマはこういう女だからサラと別れるなんて早まるなって」

「……本当、バカだったよ」


 レオーネはジャンの肩に手を置き、俯くジャンは悔しさに身を震わせる。


「お前は昔から素直な奴だったからな、オレはここまで腐った女は面白いと放置していたが」


 あの、ちょっと言い過ぎじゃない? ま、まあ、私の演技が素晴らしかったと思っておきましょう。


「こんなパーティーに出てる場合じゃないだろ。 ジャン、 お前が今行くべき所はもうわかった筈だ」

「……ああ、そうだな」


 顔を上げたジャンは、私をひと睨みしてから駆け出した。 恐らくはサラの元へ。

 そして残された私は……


 ―――最悪の状況でイケメンと二人きりに……!


 ……もう言っちゃおうかな、実は姉のリリアナなんですぅ、って。

 だって、いくら私でもこんな美男にボロカス言われたら立ち直れない。 あとでレイアの豊満な胸に顔を埋めて泣くしかないわ。 ――あっ、そういえばレイア大丈夫かな……。


「エルマ」

「――っ……」


 う、うぅ……後生なんで優しめにフってください。


「どうしようもない女だと思ってたが、少しは良いところもあるんだな」

「え」


 あ、あれ? 何で褒められたの?


「サラの為に一芝居打ったんだろ? まあ、元々お前のせいでこうなったんだけどな」


 この男、私の演技に気づくとは……状況的には救われるけどなんか悔しい! 女優としては負けた気分だわっ!

 ――っと、そんな事言ってる場合じゃないわね。 レオーネともきっちり別れないとジータとの約束を守れない。


「ふ、ふんっ、どっちにしろ私はこういう女よ、あなたとも―――いッ………たぁあ!!」


 な、なに!? いきなり前髪上げられたと思ったらおでこにデコピンされたんですけど!?


「これで許してやるよ」

「は、はぁ!?」


 ちょ、ちょっと、許されても困るのよ、私はあなたと別れなきゃ……


「オレと恋仲だとか、ふざけた嘘を周りに吹聴してた事だ。 サラの為に体を張った事に免じてな」


 ……どういう事? それじゃレオーネと良い感じってのも嘘だったの? ……あの妹ぉ―――1つくらい本当の事ないのっ!?

 はぁ……。 もういいわ、ジータには別れたって言っとけばいい話だし。 うん、そうとなれば、


「友達を置いて来ちゃったの、悪いけど迷いそうだから広場まで案内してくれない?」

「何でオレがそんな――」

「今日社交界デビューで気弱な子なのよ! 私が付いててあげないとダメなのっ!」

「……まったく、図々しい女だな」


 はっ! 今更嫌われたって痛くも痒くもないのよ。 エルマはもうダメでもレイアは幸せにしたいの。


「わかったよ」


 という事で、呆れながらもレオーネは私を案内してくれて、二人でレイアの所へ戻っていると―――



「そんなの嫌っ! 愛してるの、あなたを失いたくない……ッ!」



 ……あら、誰だか知らないけど、どこもかしこも修羅場なのね―――って、


「レオーネ伏せてッ!」

「――は、はぁ?」


 涙を流して別れを拒んでいたのは、その姿が似合わない女だった。



「嘘でしょ……――――ジータ?」



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