封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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70 決勝第2試合、決着

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「魔法か。見たことがないな」

最近流行りの魔法か?
確かめるようにフューエルの顔を見ると、フューエルは首を振った。

「俺様もだ。なんだ? 市販のマナ・クォーツじゃねえな」

空中に固定する杭の魔法。

魔法を込めたのはどんな精霊だろうか?
霊域持ちの精霊の魔法なら、流通していないのもうなずけるが……

ライジングは、腰の剣でゼビカに切りかかる。ゼビカは長剣を手放して後退し回避する。

「……その魔法、どこで手に入れた?」

ゼビカはライジングに問う。

「《フィクシングアンカー》のこと? さあね?」

ライジングは笑いながら答える。

「まあいい。終わらせてから、ゆっくり聞くことにしよう」

ゼビカは腰に差していた短剣を抜く。

刀身に、何か文様が刻まれた短剣だった。
魔力を込めると、剣がほのかに光りだす。

「あれも精霊剣か?」

フューエルが首をかしげる。

精霊剣に似た魔法の剣――俺には心当たりがあった。

「いや、あれは……《魔剣》のたぐいだ」

魔族の使う魔法の剣を魔剣といった。ゼビカの短剣はそれによく似ている。剣に刻まれているのは、魔界の文字だ。

「魔剣?」

「うむ。フューエルよ、魔族と殺し合ったことは?」

「あるわけねえだろ」

「先の大戦で使われたことがある。使用できる魔族は限られていたがな」

「先の大戦って何のことだ?」

「あー、えー、五百年前の」

「ああ……物語で聞いたことあるな。不思議な魔法の剣、みたいな言われ方だったが。しかし五百年前のことをつい最近あったみたいな言い方しやがるな」

「ゼノンだからな」

「へーへー、そういう芸風だったなそういや」

「しかし現存しているとは思わなんだ。ゼビカめ、どこであんなものを手に入れたんだ」

「伝説の冒険者パーティの名は伊達じゃねえってこったな」

ゼビカは、魔力のこもった魔剣を構える。警戒するライジング。

それからゼビカは、魔剣を自らの肩に突き刺した。

「……!」

「おいおい、自滅か!?」

自滅ではない。儀式、のようなものだ。

魔剣は何かを犠牲にして力を得る。自分の血肉を魔剣に食らわせたのだろう。

「そっちこそ、そんな剣どこで手に入れたんだい?」

問いつつも、ライジングの顔色が変わる。

「教えるつもりはない」

「だろうね」

短剣を伝って滴るゼビカの血液が空中で静止し、そこから魔法陣が展開される。

短剣を振ると血しぶきが飛び、それも空中で停止。血の雫一つ一つから魔法陣が浮かんでいる。

「《魔神の腕》と、俺は呼んでいる」

魔法陣から現れたのは、様々な形をした異形の腕。鋭い爪をもつ腕、手首から先が剣になっている腕、マナ・クォーツを埋め込んだ腕、さまざまだ。

それが伸びていき、一斉にライジングへと襲い掛かる。

ライジングはたまらず《フィクシングアンカー》を展開しながら逃げるも、腕はライジングを追ってさらに伸びていく。
《フィクシングアンカー》がいくつかの《魔神の腕》を捕える。
――が、数が多くすべて防ぎきれない。

《魔神の腕》の一つがライジングへ襲い掛かる。
ライジングは炎の魔法や《障壁》の魔法で防ぎながらさらに後退。攻撃が防がれると、伸びていた腕は崩れて消滅した。

「召喚された腕が伸びて自動追尾でライジングへ攻撃してやがる……!」

フューエルが愕然としてつぶやく。

焦りながら逃げるライジングを追うゼビカ。

さらに短剣を体に刺し、血の飛沫を散らせる。

血液から、さらに増える異形。

四方八方からライジングを襲う《魔神の腕》。防ぎきれない。手数が多すぎるのだ。徐々にライジングの体が異形の腕に引き裂かれていく。

腕の一つがライジングの首を飛ばそうとした、その瞬間。

「――参った!」

ライジングが剣を捨てて諸手を上げた。

勝負が、決まった。
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