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62 精霊エアリアル

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「驚いたな。お前も縮むのか」

「力を削がれた。己の姿を維持するには、大型の狼より小型の犬の形態の方がエネルギーが少なくて済む」

「なるほど、そういう事情で可愛くなっていたのか」

「しかしゼノン……生きているのは感じていたが、自由に動けるようになったのか。とすると、封印が解かれたのか」

「ああ。しかしテンペストフロートは――」

俺は空飛ぶ島を広大な空から見つけようとした……が、ない。

「破壊された。細かい破片ならそのへんに浮いていると思うが……私がいないから、風に流れてどこかに散って行った可能性もあるか」

エアリアルはかわいらしい姿で悲痛そうな声をあげた。

「破壊された? 可能なのか?」

「ああ。霊域の外から《魔弾》の集中砲火を食らった。攻め込まれたんだ、人間にな」

「それでもお前は攻撃より防御のほうが得意だったはずだ。お前ほどの精霊が、人間にやられるのか」

「ああ。しかも金目当てでやられたよ……」

「できるとしたら相当な手練ではないか」

「まさしく」

「誰だ? いや、集団か?」

「そうだ。《あかつきの兄弟団》――その組織は、そう名乗っていた」

「……の?」

「リーダーはライジングと呼ばれている。聞いたことがあるだろ」

「!」

ライジング――決勝進出した者の中に、その名があった。

「《暁の魔法使い》ライジングか」

「そうだ」

「そいつなら決勝トーナメントに出ている。……自分で売っておいて取り返す気なのか。そうすれば失うものなく大金だけ手に入れることができるということか」

「人間やばいよな」

「俺も人間だがな」

「お前もたいがいやばい。別方面でだが」

「ライジングか……直接聞いてみるのが良さそうかな」

たしか、パーティーにも出席していたはずである。

「この檻は、風の魔力がうまく出せない。わたしでは出ることは不可能だ。しゃべることはおろか、お前の精霊剣の力を解放することもできない」

「厄介だな。封印魔法は俺たちが生きてきた時代にもあったが……」

魔王と俺を槍に閉じ込めていたのも封印魔法だ。

しかしこれは回復や防御などを司る聖魔法を使える聖女ネルが己の魔力のほとんどを使ったうえで創造した、特別な代物。誰でも使えるものではなかった。

……長い年月を経て、特別が特別ではなくなったということか。

「これも魔法技術の進歩か」

「そういうことだろう。わたしの魔法が人間の進歩に追いつかなくなったせいで、このようなことになった」

「これも時代か……世知辛いな」

「いや、まったく。しかし優勝できるのか?」

「負けたら別の方法を考えるさ。……もっとも、負けるつもりはさらさらないがな」

「それを聞いて安心した。もうお前しか頼れる者はいない」

「さっさと巨大な狼の姿に戻してやる。そっちのほうがかっこいいだろう」

「いや、これはこれで『かわいい』とちやほやされるからいいかもしれん」

「おい」

子犬が真面目な顔で言うので、俺は呆れた。

「威厳を持て威厳を」

「自由になりたいのは本音だ。まあ頼む」

暴風が吹き荒れると、俺はパーティー会場へと戻ってきた。

俺は早速、会場内にいると思われるライジングを探す。
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