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59 本選突破
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本選第一リーグ第一試合に勝利した俺は、賭け金の払い戻しをしに受付にやってくる。
「…………」
受付のおねえさんは、あっけにとられていた。
俺が勝つことは考えていなかった様子だ。
「どうだ? 問題はなかっただろう?」
俺が試合する前、さんざん怪しまれたからな。これでおねえさんも少しは溜飲が下がっただろう。
「は、はい……試合見てました。お強いんですね」
おねえさんは、なんだか棘が抜けたかのようだ。
「優勝を狙っているくらいには健闘できる」
「そ、その、試合前は、すいませんでした。でも、私は、やっぱり……」
「次の試合も心配してくれるのか? 優しいんだな」
「…………!」
「まあ、死なんさ。あと、あれは俺の子じゃない。育てる責任はまったくないが、事情があって一緒にいるだけだ」
あれは魔王だからな、とはさすがに言えない。
心配することないよう伝えたのだが、おねえさんはなぜか顔を赤らめ、無言になっていた。
「なんだか顔が赤くないか? 風邪なら休んだ方がいい」
「け、結婚はされてないんですか」
なぜそんな質問をしてくるのか理解に苦しむが、俺は首を振って否定した。
「していないが」
「じゃ、じゃあ、私にもチャンスがあるってことですね!?」
「いや、何がだ?」
賭け金の払い戻しを受けて、魔王と合流する。
「ふん、勝ちおったか」
おもしろくなさそうな魔王。
「賭け金が三十倍になった。今日はごちそうが食える。お前にもいい草を奢ってやろう」
「いらん。さっき唐揚げとジュースを食らったからな」
「ムカつくほど楽しんでいるな」
「そうだトントン、貴様に差し入れをやろう」
「いらん。どうせ毒草だろう」
「信用がないな。まあ、毒草なんだが」
「自分で食え」
「我に金があればこの世のありとあらゆる毒草を貴様の口にプレゼントしてやるのにな」
「その減らず口を聞けなくするような毒草があればすべからく食わせてやりたいのだが?」
皮肉を言い合って次の試合に備える。
俺は順調に勝ち進んでいき、ついでに賭けで所持金を増やしつつ、本選第一リーグを突破した。
本選では《剣帝》は本気を出さなかった。背中の大剣ではなく、ただのショートソードで勝ち進んだからだ。切り札を最後まで取っておく選択は、俺と同じである。
彼は前回でも優勝しているが、それは三年前の話だ。三年、何も研鑽していないわけがない。本当の実力は隠していると見るべきだろう。
次は最後の峠、決勝トーナメントである。
「ふん、生き残ってきたか」
面白くなさそうに魔王が言った。
「当然だ」
「つまらん。じつにつまらん」
「俺は面白い」
「はっ、これだから人間は野蛮よ」
「野蛮な魔族がなんか言ってやがる」
言い合っていると、俺たちの前に一人の男が現れる。
「トントン様、決勝出場おめでとうございます」
「誰だ?」
礼装をした老翁であった。当然ながら、面識がない。
「失礼いたしました。私はルコールと申します。この度は、主催者の使いで参りました」
ルコールと名乗った老翁は、うやうやしく礼をしながら言った。
この大トーナメントの主催者ーーその使いの者か。何の用だろうか。
「…………」
受付のおねえさんは、あっけにとられていた。
俺が勝つことは考えていなかった様子だ。
「どうだ? 問題はなかっただろう?」
俺が試合する前、さんざん怪しまれたからな。これでおねえさんも少しは溜飲が下がっただろう。
「は、はい……試合見てました。お強いんですね」
おねえさんは、なんだか棘が抜けたかのようだ。
「優勝を狙っているくらいには健闘できる」
「そ、その、試合前は、すいませんでした。でも、私は、やっぱり……」
「次の試合も心配してくれるのか? 優しいんだな」
「…………!」
「まあ、死なんさ。あと、あれは俺の子じゃない。育てる責任はまったくないが、事情があって一緒にいるだけだ」
あれは魔王だからな、とはさすがに言えない。
心配することないよう伝えたのだが、おねえさんはなぜか顔を赤らめ、無言になっていた。
「なんだか顔が赤くないか? 風邪なら休んだ方がいい」
「け、結婚はされてないんですか」
なぜそんな質問をしてくるのか理解に苦しむが、俺は首を振って否定した。
「していないが」
「じゃ、じゃあ、私にもチャンスがあるってことですね!?」
「いや、何がだ?」
賭け金の払い戻しを受けて、魔王と合流する。
「ふん、勝ちおったか」
おもしろくなさそうな魔王。
「賭け金が三十倍になった。今日はごちそうが食える。お前にもいい草を奢ってやろう」
「いらん。さっき唐揚げとジュースを食らったからな」
「ムカつくほど楽しんでいるな」
「そうだトントン、貴様に差し入れをやろう」
「いらん。どうせ毒草だろう」
「信用がないな。まあ、毒草なんだが」
「自分で食え」
「我に金があればこの世のありとあらゆる毒草を貴様の口にプレゼントしてやるのにな」
「その減らず口を聞けなくするような毒草があればすべからく食わせてやりたいのだが?」
皮肉を言い合って次の試合に備える。
俺は順調に勝ち進んでいき、ついでに賭けで所持金を増やしつつ、本選第一リーグを突破した。
本選では《剣帝》は本気を出さなかった。背中の大剣ではなく、ただのショートソードで勝ち進んだからだ。切り札を最後まで取っておく選択は、俺と同じである。
彼は前回でも優勝しているが、それは三年前の話だ。三年、何も研鑽していないわけがない。本当の実力は隠していると見るべきだろう。
次は最後の峠、決勝トーナメントである。
「ふん、生き残ってきたか」
面白くなさそうに魔王が言った。
「当然だ」
「つまらん。じつにつまらん」
「俺は面白い」
「はっ、これだから人間は野蛮よ」
「野蛮な魔族がなんか言ってやがる」
言い合っていると、俺たちの前に一人の男が現れる。
「トントン様、決勝出場おめでとうございます」
「誰だ?」
礼装をした老翁であった。当然ながら、面識がない。
「失礼いたしました。私はルコールと申します。この度は、主催者の使いで参りました」
ルコールと名乗った老翁は、うやうやしく礼をしながら言った。
この大トーナメントの主催者ーーその使いの者か。何の用だろうか。
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