48 / 80
48 エントリー
しおりを挟む
霊域テンペストフロートは、別の大陸の荒野にある。もし本当にエアリアルが賞品になっているのだとしたら、霊域まで赴き精霊を捕らえ、ここまで無事に運んでくる必要がある。
それは例えば、霊域グラシアルから精霊スノーフォールを無理やり霊域の外に連れてくる行為だ。
霊域持ちの精霊の力は人間では歯が立たないほど強大だ。特に霊域の中では無敵に近い。
実際に可能だとは思えない。
真偽を確かめる必要がある。エアリアルが本当に賞品になっているのかどうか、この目で。
……駅馬車を乗り継いで、戦士の町ガラデアまでやって来た。
三年に一度のトーナメントが開催されるからか、人の通りは多く賑わっている。
そして、やたらと屈強そうな者が多い。
トーナメントを見に来たものはもちろん、参加しようとするものも多く見受けられる。
町の中心には、巨大な闘技場がある。この町のランドマークでもあるようだ。
到着するなり、俺は魔王に言った。
「気が変わった。出よう、トーナメント」
「ほう? なぜまた? 見せ物にはなりたくないと言っていたではないか」
「旅費が底をつきつつある。荒稼ぎをするにはうってつけだ」
「魔獣でも狩っていたほうが楽に思えるがな」
「それでは大金は手に入らない。一気に手に入る手段があるなら、手に入れるべきだろう」
「目当ては副賞の精霊か?」
「それにも興味がないわけではない」
「ほほー」
魔王は見透かしたような顔で相槌を打つ。
実際、旅費がなくなってきたのもあるのだが。
闘技場は、大勢の参加者によるエントリーで賑わっていた。
古今東西から猛者が集まる、三年に一度の闘いの祭典。
剣客が主だが、魔法使いの姿も多い。
副賞の精霊目当てに参加する者もいるのだろう。
「大人一人、参加を頼む」
俺は受付のおねえさんに申し込みを申請する。
「はい。では参加料五万バードルになります。申請書兼誓約書へお名前と、もしあれば肩書や通り名をお書きください」
俺は参加料を支払い、名前を書く。誓約書には、もし大怪我を負ったり命を落としても問題としないといった旨の事項も書かれている。
当然だ。
決闘形式で剣を交えるからには、命を懸けるのは大前提である。むしろそうでなくては、相手に失礼となろう。
名前:トントン・トトントーン
肩書:Eランク冒険者
名前と肩書きを書いて、俺は受付のおねえさんに渡す。
それを確認したおねえさんは目を丸くした。
「あの、失礼ですが、大丈夫でしょうか?」
「何がだ?」
「この大会には、AランクどころかSランクの冒険者の方も、毎回一定数参加されますので」
低ランク冒険者の俺のような命知らずが生き残れる保証などない。そう言いたいのだ。
「命の危険が伴います。お子様のためにも、今一度考え直されては?」
「問題ないし、こいつは俺の子じゃない」
足元でにやにや笑っていた魔王を苦い顔で見下ろして、俺は答えた。
それは例えば、霊域グラシアルから精霊スノーフォールを無理やり霊域の外に連れてくる行為だ。
霊域持ちの精霊の力は人間では歯が立たないほど強大だ。特に霊域の中では無敵に近い。
実際に可能だとは思えない。
真偽を確かめる必要がある。エアリアルが本当に賞品になっているのかどうか、この目で。
……駅馬車を乗り継いで、戦士の町ガラデアまでやって来た。
三年に一度のトーナメントが開催されるからか、人の通りは多く賑わっている。
そして、やたらと屈強そうな者が多い。
トーナメントを見に来たものはもちろん、参加しようとするものも多く見受けられる。
町の中心には、巨大な闘技場がある。この町のランドマークでもあるようだ。
到着するなり、俺は魔王に言った。
「気が変わった。出よう、トーナメント」
「ほう? なぜまた? 見せ物にはなりたくないと言っていたではないか」
「旅費が底をつきつつある。荒稼ぎをするにはうってつけだ」
「魔獣でも狩っていたほうが楽に思えるがな」
「それでは大金は手に入らない。一気に手に入る手段があるなら、手に入れるべきだろう」
「目当ては副賞の精霊か?」
「それにも興味がないわけではない」
「ほほー」
魔王は見透かしたような顔で相槌を打つ。
実際、旅費がなくなってきたのもあるのだが。
闘技場は、大勢の参加者によるエントリーで賑わっていた。
古今東西から猛者が集まる、三年に一度の闘いの祭典。
剣客が主だが、魔法使いの姿も多い。
副賞の精霊目当てに参加する者もいるのだろう。
「大人一人、参加を頼む」
俺は受付のおねえさんに申し込みを申請する。
「はい。では参加料五万バードルになります。申請書兼誓約書へお名前と、もしあれば肩書や通り名をお書きください」
俺は参加料を支払い、名前を書く。誓約書には、もし大怪我を負ったり命を落としても問題としないといった旨の事項も書かれている。
当然だ。
決闘形式で剣を交えるからには、命を懸けるのは大前提である。むしろそうでなくては、相手に失礼となろう。
名前:トントン・トトントーン
肩書:Eランク冒険者
名前と肩書きを書いて、俺は受付のおねえさんに渡す。
それを確認したおねえさんは目を丸くした。
「あの、失礼ですが、大丈夫でしょうか?」
「何がだ?」
「この大会には、AランクどころかSランクの冒険者の方も、毎回一定数参加されますので」
低ランク冒険者の俺のような命知らずが生き残れる保証などない。そう言いたいのだ。
「命の危険が伴います。お子様のためにも、今一度考え直されては?」
「問題ないし、こいつは俺の子じゃない」
足元でにやにや笑っていた魔王を苦い顔で見下ろして、俺は答えた。
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~
剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる