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47 戦士の町ガラデア

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ひとしきり遊んだ次の日、俺たちは別れを告げる。

「ではゆくぞウルカ。このまま山脈を超えていく」

「あの魔法使いをここに置いていくのか。貴様もなかなか血も涙もないな」

「来た時のソリでスキー板を作った。徒歩であれば、帰りは行きよりもずっと速い。それにスノーフォールが送ってくれるそうだから、死ぬことはなかろう」

スノーフォールとフリックに見送られながら、ネーヴェ・カメリアとは反対側の麓へ下りる。

「グッドフェロウはすぐか?」

「グラシアル超えで、距離はぐっと近づいた。麓の町から駅馬車を乗り継いで、ざっと二、三週間といったところだろう。駅馬車があれば、だが」

「《ブーステッド》を使った貴様に乗っていけば二日くらいでつけるな」

「二日じゃ着けるか阿呆。平地で馬車で二、三週間だから、同じくらいはかかる」

通常霊域グラシアルの踏破に一ヶ月以上かかるのは、登るのが過酷だからだ。距離はそれほどではないので、一気に走れば日数はかなり短縮になる。
しかし平地ではそうもいかない。
単純な距離で時間がかかるのなら、馬車のほうが体力的にも安定する。

それに《ブーステッド》で走るのは並大抵の疲労ではない。
疲れているところに後ろから攻撃されては元も子もないからな。



麓の村に到着する。いまだに雪が降り積もってはいるが、ネーヴェ・カメリアほどではない。
霊域の範囲外へ出つつあるのだ。

「ちなみに、ほかの精霊剣はどういうものだ?」

駅馬車を探しつつ、魔王は尋ねた。

「我の前で使っていないものがあるだろう?」

「なぜお前に俺の手の内を明かさねばならんのだ」

「ただの世間話ではないか」

「《すごい精霊剣》相手は死ぬ」

「適当に答えるのをやめろ。精霊剣を使えばだいたいの相手を殺せるであろうが」

駅馬車を見つけて、馬車が来るのを待つ。

待っている間、魔王は長椅子に座りながら駅の掲示板を暇そうに見ていた。

なにやら近隣の町の情報が載っているビラも貼ってあるようだ。

「ほう~、『戦士の町ガラデア』で行われる三年に一度の大トーナメントか……」

魔王がビラを見てつぶやいた。

「決闘形式で行われる武闘大会とあるな」

と、俺もそのビラを見る。

「提案だ。我とここで勝負せんか?」

「残念だが年齢制限があるぞ」

「なんだと?」

「ビラのここに二十歳以上と書いてある」

「我は二十歳以上ぞ!」

魔王はビラの『参加資格・二十歳以上』と書かれたところをバンと叩いて言った。

残念だが受付に却下されて終わりだろうな。

「しかし、こういうのは見ても楽しいものだ。もし滞在するときがあれば、見に行くのも一興だろう」

「参加して荒稼ぎせんのか。旅費が稼げるぞ」

「俺が出たら確実に勝てるだろうが、誰かの見せ物になる気はないな」

俺はそのビラを大して確認せず、景色に目を移した。

「『優勝賞品は《剣帝》の称号、副賞として賞金一億バードルと精霊エアリアル』かぁ。相当大きな大会であろうな」

「!?」

俺は魔王の言葉に、もう一度ビラに目を落とした。そして、顔を近づけてよく見る。

「副賞のところに『精霊エアリアル』と、たしかに書かれている……!」

「ガン見するほどか?」

ガン見するほどであった。

霊域テンペストフロートを持つ精霊エアリアル。

それは俺が契約した第三の精霊剣《フォールディング・エア》の精霊だったのだ。
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