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44 第二精霊剣《マグナフォール》

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二つ目の紋章が光っている。

ボルケーノ・バーストの砲台が火を吹かんとしているさ中、

「《マグナフォール》」

俺は第二の精霊剣《マグナフォール》を召喚する。

鞘に入った薄い青い剣だった。

この剣は、鞘に『封印』されている。力が強すぎて、剣を抜くときのみ力を開放するようにしないと周囲全てに効果が及んでしまうからだ。

「では、覚悟してもらおうか」

「やかましいわ! 発射あああっ!」

「なかなか解けんぞ、この氷は!」

鞘から抜き、そのまま剣を一閃する。

一閃した軌道に沿って、あらゆるものが凍結していき、活動を停止させていく。

一瞬でボルケーノ・バーストを、教会全体を、氷漬けにして沈黙させる。

「…………」

室内なのに、雪がちらちらと降る。

時さえも静止したと錯覚してしまうほど、動くものが皆無。東の神父も氷漬けになって、悲鳴さえも上げられない。

第二精霊剣《マグナフォール》。

その力は、周囲一帯を凍土と化し――あらゆるものの温度を活動限界の超えた氷点下へと『』。

人々が畏敬をこめる霊域グラシアル……その全てを一振りの剣に集約したかのような拵え。

ゆえの《偉大なる落下マグナフォール》。

――キンッ。

剣を鞘に戻す。静かな空間にそれだけが、風流とさえ思えるほど澄んだ音で響く。

「領主よ、後の処理は任せるぞ」

時間差で、凍ったものが粒子となって砕け散った。

「ひゃ、ひゃい」

寒さに凍えながら、領主は頷いた。

教会はすっかり破壊され、壁や天井が抜けて外の景色が丸見えだった。

空は、晴れ模様。曇りの多い地域だから、なかなか見られない光景だった。

氷の粒子が風に乗って宙に舞い、陽光がそれを反射してキラキラと光っている。
目を見張るほどの美しさに、俺はしばし見惚れる。

「ちょ、ちょうど教会が凍結で破壊されたので、スノーフォール様の罰が下ったという触れ込みで、精霊教会の解体と、関税の撤廃を進めましょう」

領主が頭を下げながら言って、小さい姿に戻ったスノーフォールを見た。

ちびフォールは笑顔で親指を立てる。

「ああ、そうしてくれ」

魔王を見ると、凍結などものともしていない様子で嘆息した。

「無茶苦茶しよる。まあ、我には効かんがな」

魔王は、自身の近くに《獄炎》を召喚し、その冷気から逃れていた。

「巻き込んで殺そうと思ったがそんなに甘くはないか」

「むしろ逆に燃やし尽くしてやろうかと思ったぞ」

「まあ、この程度で死ぬなどとは微塵も思っていない。それよりも、お前が思いのほか阿呆だとわかった方が進展だろう」

「アホ仮面に言われたくないわ! あと我の方が無茶苦茶してたし! 実質我の勝ちだ!」

「無茶苦茶するのが勝ち負けになっているのはよくわからんが、勝ちはどちらかと言われれば俺だと答えよう」

「その減らず口を今すぐ炎で塞いでくれようか?」

「その言葉はそっくりそのままお前に返す。氷漬けにして一切黙らせてやろう」

「…………」

「…………」

「ふん!」

「ふん!」

またケンカになりそうなので、俺たちはお互いそっぽを向いた。

「まーたやってる」

ちびフォールがそれを見て呆れ返った。
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