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43 寂しがり屋の精霊

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目の前には、横たわる巨大な雪だるま。

そしてスノーフォールが、雪だるまの手前にいた。

「ここまで、ありがとう」

と、スノーフォールが言った。

「何がだ? まだ何もしていない」

「取り込み中だと思うけど、ちょっとだけいいかな」

「ああ、構わないが」

「私ね、友達とね、遊びたかったんだ」

スノーフォールは少し寂しげに笑った。

「私の知り合いなんてゼノン……ううん、トントンしかいないし、ずっと一人だったから、本当に来てくれて嬉しかった」

「……分身が作れるなら、町にも繰り出せる。友達を作ろうと思えばできたはずだ」

「できないよ、そんなの! 霊域持ちの精霊だよ? 山脈を覆う永久凍土の世界は、同じ精霊だって近づこうとしない。恐れられることはあっても、友だちになってくれる人なんて、いるわけないよ。真実を隠しながら接するのなんて、私のガラじゃないし。……それに、私の魔法は広範囲だから危ないし、知っている遊びなんて雪合戦か雪だるまくらいしかないし……」

「そういえば、五百年前、俺がグラシアルに行った時も雪合戦したな」

思い出してくる。
あの時はすでにブーステッドを使えていたが、使いこなせていなかったし移動に使うという発想がそもそもなかった。普通にひと月かけて死にそうな思いでグラシアルの深部まで進んで、言われたのが「雪合戦して」とか、笑うしかなかった。

「グラシアルの深部にたどり着いたのも、『契約はしないけど遊んで行って』ってお願いを聞いてくれたのもトントンだけだったよね」

「まあ、あの時は俺も満身創痍だったからな。精霊と雪合戦してから死ぬのも悪くないと思っただけだ。そうしたら思いのほか楽しかった」

「伝わってきたよ、その感情。だから気持ちが変わって、私の剣を託そうと思った。純粋なんだよね、トントンって」

「まったく精霊の感情は理解できんな。もっとも、今まであまり友人と遊ぶ機会がなかったから、友人と遊ぶ感覚があれでいいのかは俺もわからんがな」

「今日は、あの時の感覚が蘇ってきたよ。町で無茶して暴れてさ、想定外のこともあったけど、ほんとうに面白かったよ。だから――遊んでくれてありがとう」

「!」

俺の右腕の紋章が光る。二つ目の精霊剣の紋章だった。

「精霊剣を使えるようにしたよ。これで私達の約束は完了!」

「ああ、ありがとう」

「ちびフォールは、ちょっと魔力を使いすぎたみたい。あれを止める魔力が、もうないかも」

「大丈夫か?」

「霊域グラシアルがあるかぎり、死なないけど……でも、最後のお願い。あれを倒して。あんな魔法発動されたら、町の人たちがたくさん被害に遭っちゃう。ここに暮らす人間のみんなを救って」

「……無論だ。任せておけ。我が友に誓おうじゃないか」

「へへ、頼んだよ」

吹雪で視界が塞がれると、俺はまた半壊した教会へ戻って来た。
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