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41 教会を追い詰める

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東西の精霊教会、その中心。

暖炉で暖かくなっているその部屋に、東の教会の神父と西の教会の神父が、絢爛な料理の数々を並べて酒を飲み交わしていた。

「いや、今日も今日とて食事がうまい」

「本当だな。しかし東と西で対立を促し、我々は流通の担い手になって手数料――いや流通免罪符として金を中抜きするというアイデアのおかげだな」

「素材の流通を担っている冒険者協会も、領主や教会に言われれば従わざるを得ない。よく考えられているシステムよな」

「まあ、住人は割を食っているがな」

「住人がひもじい思いをしたり死んだりしてくれているおかげで我らは贅沢ができるんだ。必要な贄よ。感謝しないとな」

「いや、全く。これほど楽しいものはないな!」

「本当にな! 思想を分けて対立させるのくっそ楽しいわ! クセになっちゃう!」

「俺らにとっちゃクソどうでもいいがな!」

「霊域の解釈なんて知ったこっちゃねえよってな!」

通常、魔獣を狩って得た素材は冒険者協会が市場へと流すが、この町では西へ素材を流す際には教会を通さなければならない。その際に高額の流通手数料を抜いて流す。抜いた金は、神父の懐に納める。外からくる素材は高い関税のせいで、やはり流通するときに高価になる。

しかも肝心の教会は、東西が対立しているわけではなかった。ただ、自分ら以外には対立を煽っている。

「なるほど、そういうことなのだな」

途中まで話を聞いていた俺は、部屋の中へ入っていく。

「なっ、なんだ、貴様は!」

狼狽える神父二人。

俺に次いで、ちびフォールも部屋の中に入る。

「市場への流通の間に教会を挟むことによって、金の中抜きをすることが可能と。それが目的らしいぞ、領主」

「残念ですね」

あとから、東の領主が入ってきて、残念そうに首を振った。

「なっ!?」

「領主まで!?」

神父は驚いたが、

「りょ、領主様、スノーフォール様がお怒りになりますよ。教会に対してこのような無礼など」

東の神父が領主に諭すように言う。

「べつに怒らないよ?」

ちびフォールは答えた。

「……は?」

「私、スノーフォールだけど怒らないよ。教会とかいうのも、人間が勝手に作った物だしね?」

「ス、スノーフォール様そっくりの、子ども?」

「本人だってば」

ちびフォールは頬を膨らませるが、言っても無駄な人間というのはいるものだからな。

「ええい! 護衛は何をしている!」

西の神父が叫ぶが、護衛は全て俺が倒している。もう誰も来ないだろう。

「おい領主! 付き合いの長い我々と、ぽっと出てきたこいつら、どっちを信じるんだ!?」

「こんなガキ、ただのスノーフォール様に似ているだけの子どもだろう! 騙されおってからに!」

すでに自分で悪事を自白しているというのに、無茶苦茶だ。東の領主も狼狽えるばかりである。

「じゃあ、この姿ならどう?」

ちびフォールは笑った。

冷気があたりを漂いだし、室内のはずなのに雪が降りだす。

そして、周囲一帯を凍り付かせていく。

降り積もる雪がちびフォールに集まり、大きくなって精霊スノーフォールが形作られた。

突貫で作られた氷の宮殿。そこに精霊スノーフォールが降り立つ。

「ひ、ひいっ、本物!?」

東西の神父が尻餅をつく。

「だからそう言ってんじゃん」

スノーフォールは不機嫌そうにプンプンと眉を釣り上げる。

「やはり、あなたがたが……」

東の領主はうやうやしく膝をついた。

「精霊スノーフォールよ、ネーヴェ・カメリアの東西を隔てる壁や関税は、あなたのためにあるらしい。必要か?」

俺があえて問う。

「んー、いらなーい」

スノーフォールは軽く答えた。

「精霊スノーフォールがそう言っている。これでも撤廃しない理由などあるまいな?」

「ぐっ!」

神父二人が歯噛みする。

その時、追加の僧兵がなだれ込んでくる。

「遅いぞ! さっさと全員殺せ! こいつらはスノーフォール様を侮辱する異端者だ!」

東の神父が僧兵に命令した。

「やれやれ……」

俺は腰の剣に、手をかける。
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