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38 魔王、好き放題する

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「そうだ! ありったけの肉を買えい! 食料を買えい! そして温かい料理や飲み物を作れい!」

魔王はファンコイル商会を乗っ取って、その金で好き放題していた。

「そして貧民街に無料でふるまえい!」

貧民街の貧相な広場で、魔王はそこにいる人々に食料をふるまっていた。

ファンコイル商会の構成員たちを使い、来た者たちに炊き出しをごちそうしている。

このような光景が見られたのはいつぶりのことだろうか。
美味しそうな匂いと、人々が賑わう声で、貧民街は満ちていた。

広場の周囲に配置した照明代わりの黒い炎――魔王の魔法《獄炎》が揺らめいている。
その中心で、魔王は愉快そうに男たちに指示を出していた。

商会の頭領だった眼鏡の男は、好き勝手する魔王の横で泣いていた。

「ウ、ウルカ様、このままでは、私の商会の資金はすぐに底をついてしまいます……」

「知ったことではない。我は魔王ぞ」

「そ、そんなぁ……」

「底がつきたなら同じような組織を乗っ取りに行って金を作るぞ! 隊を結成せよ! 逆らう者は《魔弾》にて吹き飛ばす!」

「ひ、ひぃ……」

ここで、元奴隷組であるフェネンたち三人が、魔王の前に現れた。

「ウルカ様、肉は西部ではいささか高価です。そしてすぐに品切れになってしまいます」

「なぜだ? 西部のみなのか?」

「どうやら、領主が高い関税を敷いているのと、東西の貿易は精霊教会が受け持っているのが原因のようです。逆に、東部では薬草が手に入りにくく、高価となっています」

「領主と精霊教会が値段を吊り上げているのだな?」

魔王の表情が、みるみる愉悦に変わっていく。

「ではどちらもぶっ飛ばすしかあるまいなあ? ついでに真ん中の壁もぶち壊すか! 隔てるものは全て邪魔だ! 破壊して東の方まで肉、買いにゆくぞ!」

「承知しました!」

元奴隷組がうなずく。

「お、お待ちを……!」

眼鏡の男は、心底困ったように魔王にすがりついた。

「ど、どうかお慈悲を……憲兵にいくら賄賂を払っていると――」

「では死ぬか?」

「やりますぅ……」

新生魔王軍戦力、ファンコイル商会の残った構成員を取り込み、30名に。

魔王の好き放題は続く。
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