28 / 81
28 ランドに別れを告げる
しおりを挟む
俺と魔王は荷物をまとめる。旅の資金が溜まったので、この町を出るつもりだ。
今日は魔獣災害を退けたお祝いで、町中がお祭り騒ぎである。
華々しく見送られているような雰囲気の中、俺たちは二人、クインタイルを後にしようとしていた。
目指すは霊域グラシアルのある山脈地帯。
「行っちまうのかよ」
町を出ていこうとしたところで、ランドに声をかけられた。
「ああ。いろいろ世話になったな」
俺が返すと、ランドはバツが悪そうに舌打ちした。少し寂しそうに見える。
「どこに行くんだよ」
「ひとまずは、霊域グラシアルのある山脈へ」
「あ? ……そんなところまで行くのかよ」
「近くに町や村はあるか?」
グラシアルとその周辺には、かつて旅をしたことがあった。
俺の記憶では、村が一つあったはずである。
「町はあるぜ。ネーヴェ・カメリアって町だ」
「なるほど。……俺が知らない町だな」
「駅馬車が出ているから、それに乗っていくといい。ま、滞在はあまりおすすめしねえがな」
「通りがかるだけだ。ありがとう」
「…………」
「ランドどうした?」
「……べっ、べつに剣を教えてもらいたかったなんて思ってねえし!」
「何がだ?」
しかし滞在がおすすめできないか……治安でも悪いのか。
まあいい。ランドに別れを告げて、俺たちは駅馬車に乗る。
「我はべつにグッドフェロウまで直行できればいいんだがな」
「残念だがグッドフェロウまではグラシアルを超えていくのが近い。通り道だ」
「ふん、付き合わざるを得んか」
「旅費は出してやると言っているんだ。大人しく付いてこい」
「ま、行ってやらんでもないがな? そんなに不安なら?」
「スノーフォールに直接礼でも言ったらどうだ?」
「それもいいな」
「俺にも礼を言え」
「ありさっさーしたー!」
「現代語のはずなんだが、なんかバカにされてるような気がするのは気のせいか。あとお前現代語をマスターしつつあるのか? もしや。マナ・クォーツなしでか?」
「気のせいだろうすべて。……なんか臭くないか?」
「わかるか? 体臭ではないぞ。アイテムボックスにまだ入れてなかった」
俺は懐からカレー粉の瓶を三つ取り出す。
「増えとらんか!?」
「ああ。さっき買った。保存もきくしいいぞ」
「くさっ。それ美味いのか?」
「慣れればスパイスのいい香りがしてくるだろう」
「理解できんな」
「カレー粉を手に入れたのが一番の収穫だったかもしれん」
「お、おう……」
「今度カレー粉をまぶして焼いた肉を一切れくれてやるから、騙されたと思って食ってみろ。いや、なんだったら一瓶くれてやる」
「布教活動やめろ。騙されんぞ」
馬車に揺られながら、俺たちはひとまずネーヴェ・カメリアへ向かう。
相乗りしていた人に変な目で見られていたのは、あとになってから気づいた。
今日は魔獣災害を退けたお祝いで、町中がお祭り騒ぎである。
華々しく見送られているような雰囲気の中、俺たちは二人、クインタイルを後にしようとしていた。
目指すは霊域グラシアルのある山脈地帯。
「行っちまうのかよ」
町を出ていこうとしたところで、ランドに声をかけられた。
「ああ。いろいろ世話になったな」
俺が返すと、ランドはバツが悪そうに舌打ちした。少し寂しそうに見える。
「どこに行くんだよ」
「ひとまずは、霊域グラシアルのある山脈へ」
「あ? ……そんなところまで行くのかよ」
「近くに町や村はあるか?」
グラシアルとその周辺には、かつて旅をしたことがあった。
俺の記憶では、村が一つあったはずである。
「町はあるぜ。ネーヴェ・カメリアって町だ」
「なるほど。……俺が知らない町だな」
「駅馬車が出ているから、それに乗っていくといい。ま、滞在はあまりおすすめしねえがな」
「通りがかるだけだ。ありがとう」
「…………」
「ランドどうした?」
「……べっ、べつに剣を教えてもらいたかったなんて思ってねえし!」
「何がだ?」
しかし滞在がおすすめできないか……治安でも悪いのか。
まあいい。ランドに別れを告げて、俺たちは駅馬車に乗る。
「我はべつにグッドフェロウまで直行できればいいんだがな」
「残念だがグッドフェロウまではグラシアルを超えていくのが近い。通り道だ」
「ふん、付き合わざるを得んか」
「旅費は出してやると言っているんだ。大人しく付いてこい」
「ま、行ってやらんでもないがな? そんなに不安なら?」
「スノーフォールに直接礼でも言ったらどうだ?」
「それもいいな」
「俺にも礼を言え」
「ありさっさーしたー!」
「現代語のはずなんだが、なんかバカにされてるような気がするのは気のせいか。あとお前現代語をマスターしつつあるのか? もしや。マナ・クォーツなしでか?」
「気のせいだろうすべて。……なんか臭くないか?」
「わかるか? 体臭ではないぞ。アイテムボックスにまだ入れてなかった」
俺は懐からカレー粉の瓶を三つ取り出す。
「増えとらんか!?」
「ああ。さっき買った。保存もきくしいいぞ」
「くさっ。それ美味いのか?」
「慣れればスパイスのいい香りがしてくるだろう」
「理解できんな」
「カレー粉を手に入れたのが一番の収穫だったかもしれん」
「お、おう……」
「今度カレー粉をまぶして焼いた肉を一切れくれてやるから、騙されたと思って食ってみろ。いや、なんだったら一瓶くれてやる」
「布教活動やめろ。騙されんぞ」
馬車に揺られながら、俺たちはひとまずネーヴェ・カメリアへ向かう。
相乗りしていた人に変な目で見られていたのは、あとになってから気づいた。
17
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
異世界転移して5分で帰らされた帰宅部 帰宅魔法で現世と異世界を行ったり来たり
細波みずき
ファンタジー
異世界転移して5分で帰らされた男、赤羽。家に帰るとテレビから第4次世界大戦の発令のニュースが飛び込む。第3次すらまだですけど!?
チートスキル「帰宅」で現世と異世界を行ったり来たり!?
「帰宅」で世界を救え!
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
異世界を【創造】【召喚】【付与】で無双します。
FREE
ファンタジー
ブラック企業へ就職して5年…今日も疲れ果て眠りにつく。
目が醒めるとそこは見慣れた部屋ではなかった。
ふと頭に直接聞こえる声。それに俺は火事で死んだことを伝えられ、異世界に転生できると言われる。
異世界、それは剣と魔法が存在するファンタジーな世界。
これは主人公、タイムが神様から選んだスキルで異世界を自由に生きる物語。
*リメイク作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる