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23 一撃を見舞う

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ランドに怪我がないことを確認して、俺は安堵する。

横から蹴りを入れるという初撃はうまくいったようだ。
グランドイーターが痛みに転げまわるたびに、軽い地響きになっている。

あのまま斬り伏せても突進の勢いは殺せず、ランドはグランドイーターと激突してしまう。
グランドイーターの持つ鱗は、鎧よりも堅固で、重量もある。押し潰されたらひとたまりもない。

だからまずは蹴りで進行の勢いを殺した。

殺せはしないが、ランドや町並み、町の人々は守られるだろう。

「お前がおとりになってくれたおかげで、一撃がうまくいった。ありがとうランド」

「あ、あんた……」

ランドはというと、助勢に入った俺を見てさらに呆然としていた。

「しかも、その腕の紋章……!?」

ランドは、俺の腕でほのかに光る精霊剣の紋章と、俺の持つブーステッドを震える手で指差した。

「ホラ吹きの汚名は返上できたかな?」

「本当に、精霊剣使いだったのか」

「ああ、そのことで思い出したんだが」

俺は、立ち直ろうとしているグランドイータ―に注意しながら言った。

「お前チンピラすぎて掲示板で『うんちランド』って呼ばれてたぞ。普段の行いが悪いからそういう扱いになるんだ」

「見てんじゃねえよ! 今それ言うな!」

俺はじりじりと位置を変えていき、山の方を背にする。
グランドイーターは、俺の方を向いている。俺の持つ精霊剣の魔力に反応しているのだ。いい魔力供給源を見つけたとでも思っているのだろう。

「しかしこれは、なるべく綺麗に倒すどころのデカさではないな」

損壊箇所を少なくして倒せば、買い取れる箇所は増えるのだが。

「んなこと言ってる場合かよ! それに、いくらあんたが精霊剣使いでも、こんな化け物倒せるのかよ!?」

「さてな。やってみないとわからん!」

立ち直りつつあるグランドイーターに、俺は背を向けて走り出した。

「お、おい! 逃げるのかよ!?」

俺の逃げる足音を聞いて、グランドイーターはそれを追うため再び動き出す。

よし、とりあえずは、町から注意が逸れたか。

さて、あとはどう仕留めるか――

考えていると、グランドイーターは再び地中に潜った。

地面の揺れでわかった。
俺の真下から地面を食いながら地上に出るつもりだ。自分の口を落とし穴のようにし、獲物の周囲一帯ごと飲み込むつもりだろう。

「なるほど、そういう方法もワームの狩りにあったな」

俺は剣を構えた。そして地響きが近くなるタイミングで、

「ぬんっ!」

大地ごとワームを切り裂いた。

「なっ!?」

地面が割れ、足場がなくなりつつあったので、跳躍して踏ん張れる場所に着地する。

地割れのようになった裂け目で、頭部が真っ二つに割れたグランドイーターが見える。

「大地ごと仕留められるのは、自分だけとは思わないことだ」

最後の力を振り絞って、グランドイーターは地中から上体を出し、俺に最後の体当たりを仕掛ける。

俺は刃を縦にまっすぐ一閃し、それを斬り伏せた。

「しかし、体が半分地面に埋まったままだな。滑車でも使って取り出すか?」

ドドオッ、と二つに割れたワームの巨体が地面に突っ伏し土煙が上がった。

「あ、あんた、いったい何者だ……?」

膝をつき、あっけにとられるランドに、俺は冒険者登録証を取り出して答えた。

「知っての通り、Eランク冒険者トントン・トトントーンだ」
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