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5章
wedding
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「こちらで間違いありませんか?」
「はい、大丈夫です。」
「ありがとうございました。」
2週間経ってようやく完成したジッポライター。
今日は湊都に仕事を休みたい、と伝え取りに来た。
理由を聞かれたけど、“慣れない仕事で少し疲れた”と社会人らしからぬ苦しい言い訳で切り抜けた。
湊都はやっぱり優しい。
そんな私を気遣って今日は休ませてくれた。
湊都の優しさを良いように使っているみたいで罪悪感があったけど、ジッポライターを見て少しその罪悪感が消えた。
今日は生憎雨模様。
湊都へのプレゼントを濡らさないよう慎重に家へと向かう。
早くプレゼントを渡したい、というドキドキ感を胸に歩を早めた。
「ただいま。」
「おかえり。」
湊都が家に帰ってきたのは20時だった。
相変わらず忙しいのか少し疲れているように見える。
「疲れてる?大丈夫?」
「あぁ・・・。」
バッグを置き、ソファに座る湊都。
私もその姿を見てソファに腰かける。
「休めたか?」
「あ、うん・・・。ありがとう。」
「無理しないで自分のペースでやっていけばいい。何かあったらすぐ言え。」
「ありがとう・・・。」
つい湊都の優しさに甘えてしまう。
甘やかしてくれるのは愛なのか・・・。
それは、分からないけど・・・。
「シャワー浴びてくる。酒飲むか?」
「うん。用意しとく。」
「ありがとう。」
冷蔵庫からお酒の缶を2個取り出して窓辺に座る。
あと忘れずにプレゼントも窓辺に持っていく。
未だに雨が降り続ける空を眺める。
真っ黒な雲におおわれて、星も月も何も見えない。
雨の日は少し心も落ち込むものだ。
朝起きてカーテンをあけて綺麗な青空だったらそれだけで心が踊るし、雨だったら少し憂鬱になる。
雨の匂いはそこまで嫌いじゃないけど、やっぱり暗い空は心が沈む。
「ナナ。」
「今日はずっと雨だね。」
「あぁ。そうだな。」
湊都が私を後ろから抱きしめる。
「髪乾かしてないじゃん。」
湊都の髪から水滴がぽたぽたと私の露出された肩に落ちる。
「あぁ・・・。」
「乾かさないと風邪ひくよ?」
「そうだな。」
疲れてるのか動きたくないらしい湊都。
「ちょっと待ってて、ドライヤー持ってくる。」
私が動こうとするとお腹に回った湊都の腕の力が強まった。
「どうしたの?」
「・・・。」
「湊都?」
「・・・組長がお前に会いたいって。」
「・・・。」
「俺は・・・まだそんなこと求めてないのに・・・。」
「湊都・・・。」
「・・・。」
私の肩に顔を埋める湊都。
お腹に回った湊都の大きな手を撫でる。
「会いたいって言うんなら会うよ?だってそれは私たちの問題で誰かに決められるようなものじゃないもの。そうでしょ?」
「・・・あぁ。」
「だから、いいよ。行こう。」
「・・・ありがとう。」
悲しげに笑う湊都。
きっと私のことを思って言うのをはばかられてたんだ。
私が重く感じてしまわないように。
「そうだ。湊都にプレゼント。」
「・・・?」
湊都にプレゼントを渡す。
「開けていいか?」
「もちろん。」
私の胸の前で丁寧に開ける湊都。
「・・・綺麗だな。」
「椿の花言葉は“完全な愛”。椿が散る時って首が落ちるように散るから不吉がられるけど、私はその潔さが好きなの。」
「確かに言われてみればあの散り方って潔いいな。」
「でしょ?その潔さがかっこよくて。湊都に似合うかなって。」
「ありがとな。」
「どういたしまして。さ、髪乾かそ。」
「はい、大丈夫です。」
「ありがとうございました。」
2週間経ってようやく完成したジッポライター。
今日は湊都に仕事を休みたい、と伝え取りに来た。
理由を聞かれたけど、“慣れない仕事で少し疲れた”と社会人らしからぬ苦しい言い訳で切り抜けた。
湊都はやっぱり優しい。
そんな私を気遣って今日は休ませてくれた。
湊都の優しさを良いように使っているみたいで罪悪感があったけど、ジッポライターを見て少しその罪悪感が消えた。
今日は生憎雨模様。
湊都へのプレゼントを濡らさないよう慎重に家へと向かう。
早くプレゼントを渡したい、というドキドキ感を胸に歩を早めた。
「ただいま。」
「おかえり。」
湊都が家に帰ってきたのは20時だった。
相変わらず忙しいのか少し疲れているように見える。
「疲れてる?大丈夫?」
「あぁ・・・。」
バッグを置き、ソファに座る湊都。
私もその姿を見てソファに腰かける。
「休めたか?」
「あ、うん・・・。ありがとう。」
「無理しないで自分のペースでやっていけばいい。何かあったらすぐ言え。」
「ありがとう・・・。」
つい湊都の優しさに甘えてしまう。
甘やかしてくれるのは愛なのか・・・。
それは、分からないけど・・・。
「シャワー浴びてくる。酒飲むか?」
「うん。用意しとく。」
「ありがとう。」
冷蔵庫からお酒の缶を2個取り出して窓辺に座る。
あと忘れずにプレゼントも窓辺に持っていく。
未だに雨が降り続ける空を眺める。
真っ黒な雲におおわれて、星も月も何も見えない。
雨の日は少し心も落ち込むものだ。
朝起きてカーテンをあけて綺麗な青空だったらそれだけで心が踊るし、雨だったら少し憂鬱になる。
雨の匂いはそこまで嫌いじゃないけど、やっぱり暗い空は心が沈む。
「ナナ。」
「今日はずっと雨だね。」
「あぁ。そうだな。」
湊都が私を後ろから抱きしめる。
「髪乾かしてないじゃん。」
湊都の髪から水滴がぽたぽたと私の露出された肩に落ちる。
「あぁ・・・。」
「乾かさないと風邪ひくよ?」
「そうだな。」
疲れてるのか動きたくないらしい湊都。
「ちょっと待ってて、ドライヤー持ってくる。」
私が動こうとするとお腹に回った湊都の腕の力が強まった。
「どうしたの?」
「・・・。」
「湊都?」
「・・・組長がお前に会いたいって。」
「・・・。」
「俺は・・・まだそんなこと求めてないのに・・・。」
「湊都・・・。」
「・・・。」
私の肩に顔を埋める湊都。
お腹に回った湊都の大きな手を撫でる。
「会いたいって言うんなら会うよ?だってそれは私たちの問題で誰かに決められるようなものじゃないもの。そうでしょ?」
「・・・あぁ。」
「だから、いいよ。行こう。」
「・・・ありがとう。」
悲しげに笑う湊都。
きっと私のことを思って言うのをはばかられてたんだ。
私が重く感じてしまわないように。
「そうだ。湊都にプレゼント。」
「・・・?」
湊都にプレゼントを渡す。
「開けていいか?」
「もちろん。」
私の胸の前で丁寧に開ける湊都。
「・・・綺麗だな。」
「椿の花言葉は“完全な愛”。椿が散る時って首が落ちるように散るから不吉がられるけど、私はその潔さが好きなの。」
「確かに言われてみればあの散り方って潔いいな。」
「でしょ?その潔さがかっこよくて。湊都に似合うかなって。」
「ありがとな。」
「どういたしまして。さ、髪乾かそ。」
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