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魔法世界と科学の力
前世の記憶と地球の呪文
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「人間に魂はあるか?」
と聞かれたら、
「あると思う」
と私は答える。「死んだら無に帰す」と考えるより幸せな気がするからだ。あると断言できると良いのだが、残念ながら確信が持てない。前世の記憶を持っている私でも。
コンピューターのパーツと脳の役割は似ているとよく言われる。パソコンがデーターをHDDに保存するように、人間は記憶を脳の大脳皮質に保存しているらしい。
では本人が経験してないデーター「前世の記憶」を持ってる場合はどう説明したものか。
コンピューターならデーターを外から持ってくれば良い。USBをつかって移動させるなり、インターネットからダウンロードするなりだ。人間の場合もおそらく同じ。何らかの手段で脳にデーターを移動させているのだろう。まだ発見できていない科学的なメカニズムがあるのか、魂があって記憶ごと運んでくるのか、あるいは魔法の力か。
ともかく、有史以来、自分が経験していないはずの記憶を持つと主張する人間は一定数存在している。かく言う私もその一人だ。
この世界とは比べ物にならないほど科学が発達した星、地球。私は地球での知識と朧気な記憶を持っている。
知識の方はかなりはっきりと覚えている。物質は原子からできていることも知ってるし、太陽は核融合で光ってることも知っている。
ただ、記憶の方は曖昧だ。名前も住所も、家族構成も仕事もわからない。
どこかへ旅行に行った時の景色は覚えているが、誰とどこへ行ったのかはわからない。高校生の時に好きだったマンガは覚えており、誰かとその話で盛り上がったのは覚えているが、相手の顔は思い出せない。
まあ、生きていても記憶は曖昧になっていくものだし、そう気にすることでは無いのかもしれない。自分がなぜ死んだのかはわからないが、死ぬほどの経験を思い出せないというのはむしろ幸運な気がする。
家族、知人を思い出しても会いにいけるわけでもないし、今の家族を大切にすれば良い。
私が5歳の時、原因不明の高熱で生死の境を彷徨った。何日もうなされ、それから奇跡的に回復した後、気がついたら前世の知識と記憶があった。この時に偶然何かしらの魔法が発動したのではないかと思う。
ただ、後天的に手に入れた可能性があり、この考えを進めていくと「本当に前世か」「私は本当に私か」という問題がでて眠れなくなるので、普段はあえて深く考えないようにしている。今の私はこの魔法がある世界にいるわけだし、考えている以上私は存在するのだろう。地球の呪文は便利だ。
「魔法帝国レオンハルト」というなかなか格好の良い名前の国、その端にあるらしいザック村。そこが私の現住所だ。両親、私、弟、妹の五人家族。一番下の妹を含め、家族全員で農作業を営んでいる。
名前はウォルタ。性別男、現在8歳。両親も含めて周りの人からは喋り方が偉そうだとよく言われる。気をつけるようにしてはいるのだが、口調というのはなかなか治らないものだ。もしかしたら前世の影響なのかもしれない。
ザック村に住む人々の仕事はうちに限らずこの農作業なのだが、全く自分には向いてない。前世の記憶を得てからは余計そう思う。典型的な肉体労働で身体のあちこちが痛くなる。
というより、村での暮らしが全くあってない。家族は好きだが、暮らしは好きじゃない。仕事以外の時間は基本的には、立ち話に花を咲かせるぐらいしか無ない。娯楽が少なく、日々の刺激はほぼ無い。繰り返される毎日は嫌いじゃないが退屈すぎる。
インターネットが欲しい。マンガが読みたい。それらは無理としてもせめて本が読みたい。
私は将来この村を出て都会へ行こうと決意している。
もっとも私に限らず同世代の多くが、村の現状に不満を懐き、都会への憧れを持っているようだが。
と聞かれたら、
「あると思う」
と私は答える。「死んだら無に帰す」と考えるより幸せな気がするからだ。あると断言できると良いのだが、残念ながら確信が持てない。前世の記憶を持っている私でも。
コンピューターのパーツと脳の役割は似ているとよく言われる。パソコンがデーターをHDDに保存するように、人間は記憶を脳の大脳皮質に保存しているらしい。
では本人が経験してないデーター「前世の記憶」を持ってる場合はどう説明したものか。
コンピューターならデーターを外から持ってくれば良い。USBをつかって移動させるなり、インターネットからダウンロードするなりだ。人間の場合もおそらく同じ。何らかの手段で脳にデーターを移動させているのだろう。まだ発見できていない科学的なメカニズムがあるのか、魂があって記憶ごと運んでくるのか、あるいは魔法の力か。
ともかく、有史以来、自分が経験していないはずの記憶を持つと主張する人間は一定数存在している。かく言う私もその一人だ。
この世界とは比べ物にならないほど科学が発達した星、地球。私は地球での知識と朧気な記憶を持っている。
知識の方はかなりはっきりと覚えている。物質は原子からできていることも知ってるし、太陽は核融合で光ってることも知っている。
ただ、記憶の方は曖昧だ。名前も住所も、家族構成も仕事もわからない。
どこかへ旅行に行った時の景色は覚えているが、誰とどこへ行ったのかはわからない。高校生の時に好きだったマンガは覚えており、誰かとその話で盛り上がったのは覚えているが、相手の顔は思い出せない。
まあ、生きていても記憶は曖昧になっていくものだし、そう気にすることでは無いのかもしれない。自分がなぜ死んだのかはわからないが、死ぬほどの経験を思い出せないというのはむしろ幸運な気がする。
家族、知人を思い出しても会いにいけるわけでもないし、今の家族を大切にすれば良い。
私が5歳の時、原因不明の高熱で生死の境を彷徨った。何日もうなされ、それから奇跡的に回復した後、気がついたら前世の知識と記憶があった。この時に偶然何かしらの魔法が発動したのではないかと思う。
ただ、後天的に手に入れた可能性があり、この考えを進めていくと「本当に前世か」「私は本当に私か」という問題がでて眠れなくなるので、普段はあえて深く考えないようにしている。今の私はこの魔法がある世界にいるわけだし、考えている以上私は存在するのだろう。地球の呪文は便利だ。
「魔法帝国レオンハルト」というなかなか格好の良い名前の国、その端にあるらしいザック村。そこが私の現住所だ。両親、私、弟、妹の五人家族。一番下の妹を含め、家族全員で農作業を営んでいる。
名前はウォルタ。性別男、現在8歳。両親も含めて周りの人からは喋り方が偉そうだとよく言われる。気をつけるようにしてはいるのだが、口調というのはなかなか治らないものだ。もしかしたら前世の影響なのかもしれない。
ザック村に住む人々の仕事はうちに限らずこの農作業なのだが、全く自分には向いてない。前世の記憶を得てからは余計そう思う。典型的な肉体労働で身体のあちこちが痛くなる。
というより、村での暮らしが全くあってない。家族は好きだが、暮らしは好きじゃない。仕事以外の時間は基本的には、立ち話に花を咲かせるぐらいしか無ない。娯楽が少なく、日々の刺激はほぼ無い。繰り返される毎日は嫌いじゃないが退屈すぎる。
インターネットが欲しい。マンガが読みたい。それらは無理としてもせめて本が読みたい。
私は将来この村を出て都会へ行こうと決意している。
もっとも私に限らず同世代の多くが、村の現状に不満を懐き、都会への憧れを持っているようだが。
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