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魔法世界と科学の力
火矢の魔法と二次関数
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「やるじゃねーかウォルタ!この距離で当てるなんて!」
エイオスの視線の先にあるのは燃えている板。私が放った火矢の魔法が直撃した結果だ。
「言ったとおりになったろ。この魔法の軌道は計算で出せる。これが科学だ」
この世界には魔法と呼ばれる不思議な現象がある。自然現象、物理法則を無視して結果を発生させることができる技だ。矢のような形の炎を創り出し発射する、<火矢の魔法>。空間に浮かぶ水の球を発生させる、<水球の魔法 >。風を自由に吹かせる、<風操作の魔法>。宙に浮かぶ光源を創る、<光球の魔法>。どれも科学ではとても説明できない奇跡の技だ。
最初はそう思っていた。
この奇跡が使えるようになった当初、私は夢中になって魔法を連日使用していた。なんせ魔法だ。手に炎が出せるようになったら、誰だってはしゃいで使いたくなると思う。
そんな中、ふと気がついたことがあった。魔法による結果は常に一定、なのだ。
例えば、私が先程放った火矢の魔法。これは手から真っ直ぐ炎の矢を放つ魔法なのだが、その射程距離は無限ではない。的に当たらなければ、飛んでいる間に少しずつ高度が落ちていき、やがて地面に当たる。そして同じ条件で発動させれば、何度やっても同じ『落下して地面に当たる』という結果になる。
魔法は決して無秩序なものではなく、一定のルールに従っているように私には見えた。言い換えるなら法則性があるように見えた。ならば、科学的に説明できる部分があるはずだ。現象の中からルールを発掘するのが科学なのだから。
私はいくつか仮説を立て、条件を変えながら何度も火矢の魔法について実験を行った。自分だけでは難しいので、私よりも魔力量が多いエイオスにも協力してもらった。角度を付けて撃つ。二人で同時に魔法を放つ。石を一緒に投げる。思いついたことをいろいろ試していって、その結果わかったことは以下の通り。
『1つ。水平方向には同じ速さで飛び続け、加速も減速もしない。地面方向には落下する。物体にはたらく重力加速度より遅い。およそ1/3。
1つ。この魔法は風の影響を受ける。風は魔法の素となっている媒質そのものを運んでしまうためと考えられる。
1つ。矢の初速度は発動する際に込めた魔力の量で決まる』
ようするにこの魔法は、風が吹いてなければ発射したときの速度と角度だけで着弾点が決まり、数学と物理学によってその軌道を計算することができるのである。
そして今日。その成果が全弾命中して燃えている板である。
「見ろ!エイオス。この世界でも科学は十分に通用する。それがたった今、証明されたのだ!」
「なんか色々やってた結果が出たようで良かったな!しっかし、ここまで離れた的に当てるなんて科学の力ってすげーな!」
エイオスの視線の先にあるのは燃えている板。私が放った火矢の魔法が直撃した結果だ。
「言ったとおりになったろ。この魔法の軌道は計算で出せる。これが科学だ」
この世界には魔法と呼ばれる不思議な現象がある。自然現象、物理法則を無視して結果を発生させることができる技だ。矢のような形の炎を創り出し発射する、<火矢の魔法>。空間に浮かぶ水の球を発生させる、<水球の魔法 >。風を自由に吹かせる、<風操作の魔法>。宙に浮かぶ光源を創る、<光球の魔法>。どれも科学ではとても説明できない奇跡の技だ。
最初はそう思っていた。
この奇跡が使えるようになった当初、私は夢中になって魔法を連日使用していた。なんせ魔法だ。手に炎が出せるようになったら、誰だってはしゃいで使いたくなると思う。
そんな中、ふと気がついたことがあった。魔法による結果は常に一定、なのだ。
例えば、私が先程放った火矢の魔法。これは手から真っ直ぐ炎の矢を放つ魔法なのだが、その射程距離は無限ではない。的に当たらなければ、飛んでいる間に少しずつ高度が落ちていき、やがて地面に当たる。そして同じ条件で発動させれば、何度やっても同じ『落下して地面に当たる』という結果になる。
魔法は決して無秩序なものではなく、一定のルールに従っているように私には見えた。言い換えるなら法則性があるように見えた。ならば、科学的に説明できる部分があるはずだ。現象の中からルールを発掘するのが科学なのだから。
私はいくつか仮説を立て、条件を変えながら何度も火矢の魔法について実験を行った。自分だけでは難しいので、私よりも魔力量が多いエイオスにも協力してもらった。角度を付けて撃つ。二人で同時に魔法を放つ。石を一緒に投げる。思いついたことをいろいろ試していって、その結果わかったことは以下の通り。
『1つ。水平方向には同じ速さで飛び続け、加速も減速もしない。地面方向には落下する。物体にはたらく重力加速度より遅い。およそ1/3。
1つ。この魔法は風の影響を受ける。風は魔法の素となっている媒質そのものを運んでしまうためと考えられる。
1つ。矢の初速度は発動する際に込めた魔力の量で決まる』
ようするにこの魔法は、風が吹いてなければ発射したときの速度と角度だけで着弾点が決まり、数学と物理学によってその軌道を計算することができるのである。
そして今日。その成果が全弾命中して燃えている板である。
「見ろ!エイオス。この世界でも科学は十分に通用する。それがたった今、証明されたのだ!」
「なんか色々やってた結果が出たようで良かったな!しっかし、ここまで離れた的に当てるなんて科学の力ってすげーな!」
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