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ジュウ
しおりを挟むあの日より通算一週間
何時ものように仕事をして半日過ぎた午後、ヘルメスは上司から呼び出しを受けた
何故か上司の顔は険しい
ヘルメスは上司に付いて来るように言われた
用件を訪ねたが『着いてくれば分かる』と教えて貰えない
何処へ連れて行かれるのか気にはなるが自分は可もなく不可もなしの平社員
上司の背中を見ながら最近の失敗を思い浮かべていた
………私生活以外での失敗はなかった
縦皺の意味は分からないが幸い上司は人に八つ当たりする人ではない
縦皺と自分は別と考えたヘルメスは何かの手伝いに駆り出されたのだろうと気楽な気分になる
上司は3件隣の立派な建物へ入って行った
普段入ることのないエリート達が闊歩する、選ばれし者達が集う棟だ
能力平均値のヘルメスには一生関係のない場所で物珍しくてキョロキョロしてしまう
調度品は見るからに高い壺や絵画が飾られていた
絶対に触れてはいけないと心に誓う
それらを鑑賞しながら着いた場所は宰相室だ
式典などで国王の隣にいたな~位の認識の人
それだけの筈なのに何故か扉の前に立つと冷や汗が流れた
背筋がゾクゾクして落ち着かない
ヘルメスはここで初めて危機感を覚えた
本能は前から危機を訴えていたが鈍過ぎて今まで気楽にいられたヘルメスは焦った
上司が緊張の面持ちで扉を叩くのに待ったをかけたいが出来るはずもなく、無意識に掌が開閉を始める
&&&&&&&&&&&&&&&&&&
そんなヘルメスの扉挟んだ向こう側では呆れた目を上司に向けている宰相補と急に貧乏揺すりを始めたエルネスト、優雅にティータイムする殿下
「落ち着きなよエルネスト。そんなにテーブルを揺らす紅茶が溢れてしまうよ」
「だが、だが!」
「男は何時でもドンと構えてるものさ」
「………ふむ、そうだな。愛しい人者には頼りがいのある男に見られたい」
恋愛以外は優秀な男エルネストは落ち着きを取り戻す
ピタリと足を止め、椅子に深く腰掛け足を組む
「そうそう一息入れなよ」
殿下がそんなエルネストに紅茶を差し出す
二人は優雅にティータイムを始めた
美丈夫と美丈夫が紅茶を飲み交わすシーンは絵画のようだ
宰相補以外の者が見れば感嘆の溜息を漏らすか、黄色い悲鳴が上げるだろう
「ケッ」
二人を胡乱げな顔で宰相補は見てイラッとする
「これ上げるよ」
「これは?……クククッ」
「フフッ必要ないかもしれないが兄にお願いして書いてもらったんだ。要らなけば処分してくれたらいいからね」
書類を見た宰相補は目をカッと開き青褪めた
気軽に書いて貰ったのは婚姻を強要する王命書だった
なんて無駄な越権行為
ヘルメスに逃げ道はない
「我が恋人は恥ずかしがりやで素直でない。結婚式から新婚旅行まで決まってるが念の為貰っておこう」
素早く懐に仕舞うヘルメス
ヘルメスとエルネストは一度しか会ってない
手紙の返事を寄越さぬヘルメスをエルネストは恥ずかしくて書けなかったと勝手に脳内変換していた
「何処に行く予定?」
「妻の希望で南国のハピワイだ」
酔っぱらってる時の話しだ
宰相補は心の中でアホなの、バカなの、ポンコツ過ぎだと上司を罵った
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