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小話 青い世界 青竜と白竜 R15 白竜視点
しおりを挟むもう少しで夜が明ける、まだ薄暗い時間帯。
足元に広がる、黒い砂浜。
ここの砂浜の砂は火山石でできているから、黒いらしくて。
打ち上げられた氷河のかたまりがその黒い砂浜のあちこちに転がって。
薄暗い中でもキラキラ光ってる。
俺の好きな透き通った青色の氷に、
綺麗だな、と思う。
灰色のと白銀のは、こういうの好きだろうか。
とりわけキラキラしたものを彼らは好むから、おみやげで渡せば喜ぶかもしれない。
風のと青いのと一緒に世界のあちこちを回って。
見てきたあれやこれやに気分が悪くなって。
ほとんど笑えなくなって。
まあ、もともとそんなに笑ったりはしないんだけど。
青いのが抱いてくれて、
なんとか正気でいられるんだけど。
俺は俺がちょっと壊れたような気がする。
どこが壊れたのかとか、
それはよく、わからないけど。
でも確実に、なにかが壊れた。
風のが、白銀のが目覚めたみたいだから、氷のの所に戻ろうって言ってくれて。
戻るついでに青いのが、ちょっと寄り道をしたいって言って。
俺が、前に好きなものを訊かれて、青だと答えたから。
正確には、青いの、って答えたんだけど。
それ以来、青いのが、俺のために青いものを集めたり、そういう所に連れていってくれて。
今も、少し前まで、氷河の洞窟の中にいて。
上下左右、見渡すかぎり青い氷河で。
たぶん、そういう場所がないか、青いのが風のに訊いてくれて、風のからこの場所を勧められて、俺を連れてきてくれたんだと思う。
ちょっと、嬉しい。
ちなみに氷河の洞窟の中は暗いから、手のひらサイズの丸い障壁の中に光を閉じ込めたものをいくつか白銀のがくれてたから、それで洞窟内を照らすことができて。
あちこち青く光って、とても綺麗。
その氷河の洞窟の中で、青いのが抱いてくれて。
意識を落とした俺を青いのが抱き込んで寝てくれて。
さっき目が覚めて。
俺はちょっと抜け出してきた。
夜明け前の、まだ薄暗い時間帯で。
黒い砂浜の海岸には、誰もいなくて。
ぼたぼたと勝手に落ちてくる涙を、誰にも咎められない。
よく、わからないのだけど。
人間の国の、よくわからないしきたりというか、儀式、とか。
そんなので。
宗教的な施設の中で。
何人もの子どもが、薬物で自由と尊厳を奪われていて。
その施設の偉い人間が、精を与えて穢れを祓って清める?
なぜそんなことが必要なのか、さっぱりわからないのだけれど。
それはまだ、いいほうで。
魔石に呪いを込めるために、呪術の犠牲にされる命もあって。
そんなのの、連続。
それを、たくさん、見てきた。
ふらりとよろめいて。
けれど、倒れる前にがしりと、力強い腕に抱きとめられて。
視界に青が、飛び込んでくる。
足元の砂は黒くて。
その先に広がる海もまだ暗い色で、ほとんど黒に見えて。
夜が明けきる前だから、空も、まだ薄暗くて、灰色で。
けれど、目の前の青は、綺麗で。
夜が明けはじめて。
朝日に照らされた氷河のかたまりが、さっきよりもいっそう、青くキラキラしはじめて。
「まだ、抱くか?」
青いのに訊かれて、俺は緩く首を横に振って。
「おみやげを、選んでた。灰色のと、白銀のは、キラキラしたのが好きだから。ここの砂浜に打ち上げられてる氷河のかたまりとか。喜びそう。あと、黒い砂とか。きっと珍しがる」
目の前の、朝日を浴びてよりいっそう輝きだした綺麗な青色を見てそう言えば、
そうか、って。
でも、
「だがまだ俺がたりない。少しつきあえ」
かかえられて、あっという間に元の氷河の洞窟に連れ戻されて。
戻る途中に見た黒い砂浜の海岸は、もう夜が明けきって、朝日に照らされて。
空も海も明るくなっていて。
黒い砂浜に打ち上げられてる氷河のかたまりが、透き通った青に輝いて。
でも、俺を抱き上げてる青いののほうが、もっと青くて。
やっぱり俺は、青いのが好きだ。
氷河の洞窟に入って。
あちこち青いその中で、
俺は青いのにたくさん抱かれて。
たくさん気持ちがよくなって。
また意識を落とした。
風のとの集合時間に遅刻して。
おかげで氷のの所に着くのが夜になって。
でも、氷のお城とテーマパークの所で花火があがってて。
とても綺麗で。
飛びながらみとれてたら、竜体で横を飛んでた青いのにパクッと咥えられて、露天温泉にドボンと墜落した。
竜体だったから、怪我とかしなかったけど。
そのまま人化して、始まって。
その、竜体で交わるのもいいけれど、口づけができないから、俺は人化してつながるのが好きで。
拡張が少し大変なんだけど、人化した体もそこまで子どもではないから、なんとかなって。
ちなみに、灰色のと白銀のは、俺とそんなに生まれた時期は違わないみたいだけど、
彼らはちょっと体がまだ幼くて。
成長に時間がかかるのかな?
チュウガクセイとコウコウセイくらいの差があって。
、、、んん??なんだっけ、それ。
まあ、いいか。
とにかく、赤いのの番の灰色のはたぶん大丈夫みたいだけど、
黒いのの番の白銀のは、ちょっと、いや、かなり、、いや、ものすっっごく大変だと思う。
どうやってやってるのか想像するのも怖い。
ええと、まあ、それで、俺はなんとか青いのとつながっても大丈夫で。
いや、露天温泉とか野外で。
ちょっと恥ずかしかったけど。
人間の土地を離れて、みんなの所に帰ってきたっていうのと、打ちあげ花火を見て、ひさびさに心が躍って。
それを青いのが感じ取ったから、青いのも興奮したのかな?
まあいいか。
気持ちよかったし。
そういえば、氷河の洞窟の中で、青いのがお茶を淹れてくれて。
お茶というか、少し苦い飲み物なんだけど。
なんとなく、おいしくて。
世界を回ったときに、温かい地域でよく飲まれてるそれを見かけて。
いつも飲むお茶も、いいんだけど。
俺はこっちも好きで。
たぶん、灰色のとか、白銀のは苦手なのかな、とは思うけど。
風のも、独特の風味と苦味が苦手みたいで。
というか、氷のと風のは、葡萄とかで造るお酒が好きで。
風のは、他にもいろんな種類のお酒を飲むんだけど。
その苦い飲み物は、青いのと俺だけが好む飲み物だと思うと、余計に嬉しくて。
また、飲みたいと思った。
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