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しおりを挟む俺と黒いのが塔の談話室に入ると、
淡い緑色の髪に、あちこちにアクセサリーをたくさんつけた、チャラっとしたお兄さんがいた。
チャラい。
なんだっけ、こう、不良?
そんな雰囲気。
服装が派手だからかな。
俺たちの制服とよく似てるんだけど、それよりもっとぶわぶわびらびらした、貴族みたいな服を着てて。
「うっわ、すっご!ホントにいた!始まりのと終わりのが孵化するのって、ホント滅多にないから、貴重な光景!ホントにすごい!!!!!」
なぜだか部屋に入った俺を見て、興奮してるっぽいんだけど。
理由がちょっとよくわからない。
チャラっとしてるんだけど、でも優雅な足取りっていうのかな?
すいっと寄ってこられて。
「俺風竜。風のって呼んで?君白銀のって言うんでしょ?今は色で呼び合うんだね?時代の差かな?お茶飲みながら、話さない?今日はみんなを、誘いにきたんだよねぇ。うっわぁ。それにしても、君かわいいね!俺はオスでもメスでも両方イケるから、今度一緒に遊ばない?」
、、ええと?
一度にたくさん話されて、なにを訊かれたのか聞き逃した。
黒いのが、俺の体をそっと抱き寄せたのを見て、風のが笑いながら、
「いいねぇ!甘酸っぱ!!!!!」
なにか食べたの?
まだ俺は風ののテンション?あれについていけてない。
おいでよー、と笑いながら席に戻っていく風のに続いて、俺と黒いのも談話室のソファーに座る。
談話室のソファーは大きくて、ソファーがローテーブルのまわりに四つあって。
赤いのと灰色のと、
青いのと白いのと、
それぞれが同じソファーに座って、召使いさんが淹れてくれたお茶を飲んでて。
風のが座ってるソファーの、横のソファーに、黒いのと一緒に座って。
そのタイミングで部屋にいた召使いさんが俺たちにもお茶を淹れてくれて、退室する。
すごい。
去り際にチリン、のベルをローテーブルに置いてってくれた。
ローテーブルの上には、綺麗なお皿の上に、色とりどりのクッキーが並んでる。
今日のクッキーも、おいしそう。
薔薇の花びらとかも、飾りで散らされてて。
これはさっきまでいた、薔薇園の薔薇みたい。
ほのかにいい香りがして。
きゅんきゅんする。
「白銀のも、会うのは初めてね。北の大陸にいて、滅多に人間と関わらない竜のひとり、風竜よ。氷竜が、テーマパークをつくったから、温泉もあるし、って。誘いにきてくれたの。せっかくだから、みんなで行きましょう?」
赤いのが、お茶を片手に手短に紹介をしてくれて、
ざっと説明をしてくれる。
テーマパークって、なんだろう。
ちょっと、気になる。
お茶を飲みながら興味がそそられて、うず、っとしてしまう。
黒いのを見れば、いいよ、って頷いてくれて。
やった!って。気分が上がる。
「みんなまとめて移動するなら、城に休暇届を出しておくか。黙って出かけると、人間たちがざわつくからな」
青いのがお茶を飲んでそう言って。
俺たちは休暇、っていうのの手続きをして、テーマパークに行くことが決まって。
灰色のは、とても嬉しそうで。
白いのも、ちょっと嬉しそうで。
俺も、嬉しくなって。
楽しみだな、と思って。
なんとなく、目の前にあるお皿の上にのった、ジャムのついたクッキーを、ひとつつまんで。
これはなんのジャムかな、って。
食べようとしたら。
隣のソファーから風のが身を乗り出して、
俺の手をつかんで、ぱく、っと。
そのクッキー、食べちゃって。
その瞬間。
談話室の窓ガラスが、外側に向かってすべて吹き飛んだ。
それはもう、粉々に。
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