『第四世界』

ナカムラ

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俺が空中に浮かべた、青白い蛍光灯みたいな色の光が辺りを照らすけど。
ここは、なぜか、寂しくない。


あちこち、透明で。
俺の出した蛍光灯みたいな色の光に照らされて、虹色に光る場所もある。



ここは、巨大な、クリスタルの洞窟の中。
あちこちに光を浮かべてるから、
洞窟中がもう、キラッキラ。






きれい。
ただただ、きれい。









ここ、たぶん、俺を卵で産んだ竜が住んでた所なんじゃないかな?
なんとなく自分の鱗とここのクリスタル、似てて。
たぶんなんだけど、その竜がここで、
卵を孕んでるときに、ここのクリスタルの結晶を、ばりばり食べてたんじゃないかな?
あちこちかじった跡があるし。



めちゃめちゃおいしそうだったから、もちろん俺もかじったよ?
おいしすぎて、しばらく夢中でかじっちゃったけど。





どうやってここを見つけたか、なんだけど。
なんだろう。
なんとなくこっちに飛びたいなーって、思って。
その方向に飛んでたら着いたんだよね。
なんでだろ。
ここにこの洞窟があるの、知ってた、、、ような?
ちょっとよく、わかんないんだけど。
とにかく着いた。
よかった。






はぁ。
それにしてもここ、おちつく。
実家みたいな安心感が謎にある。




大人になって実家を出て、別の所で暮らしてて、
でもたまに帰って、冬とかなら、コタツにミカン?
コタツは実家にしかないし。
ひとり暮らしじゃミカンも買わなくて。
実家の玄関の前にはミカンの木が植えられてて、冬になるとそれを収穫して。
お店で買うのより小ぶりだったり色が悪かったり味がイマイチだったりするけど、なぜか愛着が湧いて食べちゃうやつ。
大丈夫だよ、おいしいよ、今年も頑張ったね、って。
あと、それだけじゃたりなくて買うのはいいけど、なんで箱で買うんだろうね?
急いで食べなきゃカビがきちゃう。
たくさん食べるから買うんじゃなくて、いつの間にかたくさんあるから食べなくちゃになるやつ。
実家あるあるっていうやつなんだろうか。



夏なら扇風機と、アイス??
電気代節約のために高めの温度で冷房を使うから、そのふたつは必須で。
しかもひとり暮らし用のワンルームよりも冷暖房効率?悪いしね?
でも冷房効きすぎ、ってほど冷えてないからアイス食べてもおなか痛くならなくてちょうどよくて。
冷房してて、窓を閉めてるのに窓際に風鈴があるのはなんでだったんだろう。
鳴らない風鈴。
掃除のときに換気のために窓を開けたら鳴ってたんだろうか。
もしくはカーテンの開け閉めのときとか?



あと、夏の麦茶は実家の冷蔵庫にしかない。
微妙に飲み残すと飲みきれって怒られるやつ。
ちゃんとやかんで沸かして、冷ましてつくるの。
ひとり暮らしじゃ作らないよね。
作っても水出しのやつ。
水出しのは簡単だけど、おいしいかおいしくないかで言うと、、、、、なんでもない。



そうだ。
アイスといえば、冬でもコタツでアイスとか、いいよね?
白い、大福みたいなアイス?あれは必須だと思う。
冷凍庫にあるのに、なんで凍らないんだろうね?
お餅とかなら、カチカチに凍るのに。
ふふ。





なつかしい。








地面で丸くなって、ぼんやりとそんなことを。
頭に浮かぶままに、考えてたら。
変な、音がして。







ガリガリガリガリ、ずずずずず、、、ボテっ。




、、、ぼてっ?





起き上がって音のほうを見たら、大きなブラックドラゴンが洞窟に入ってきてた。



ええ、、っと?



この洞窟、中の空間はとても大きいんだけど。
入り口はちょっと、狭くて。
車くらいの大きさの竜体の俺で、なんとか通れるくらいだったから。
戦車みたいな大きさで、よく通ったな、って。
穴を掘って、通り道を拡張して進んできたんだろうか。
急いでたのかな。
大きいままで、来たみたい。




ちょっと、びっくりしてたら。


ブラックドラゴンの目がまん丸になって。


いつも、縦長の瞳孔とかだから、黒いのの目がまん丸になってるの、珍しい。
キラキラ、キラキラ、、、、ああ!
黒いののまん丸の目の中に、どこもかしこもキラッキラに光を反射させてるというより食べたものの影響で内側から光ってる俺がうつってて。
黒いの、キラキラ、好きだもんね。
キラキラしてる俺のこと、気に入ったのかな。




戦車みたいなおっきな体のブラックドラゴンがそろそろっと近づいてきて、
そのおっきな翼を広げて。
そのまま、そのまま、、、、






えぇと?
アピール、してる???




なんだっけ、よく、雄が、雌にする、求愛行動、だっけ?



俺がつくった、蛍光灯みたいな色の光が、辺りの巨大な水晶の柱を光らせてて、
その洞窟の中で、戦車みたいに大きなブラックドラゴンが、おっきな翼を広げてるから。







かっ、、こ、ぃい、、、っ!!!!!






俺の目もたぶん、まん丸になってたと思う。




、、、うん。
黒いのは、かっこいい。
いつ見ても、俺は。
そう、思っちゃうから。






そろそろっと、ブラックドラゴンに近づいて。
その彼の喉元に、すりっ、、として。














俺はその求愛行動を、受け入れた。


























そのあとどうなったかって?
とっても楽しく過ごしたよ。
気絶せずできたし。
、、、、ぃゃちょっと、最後らへんは気絶、してたかも。
早く安定しないかな、魔素。






























ええと。
俺たち、その洞窟でちょっと過ごしたあと、
またこっそり元の国の、塔に帰ったよ。
その、どこにいてもいいんだけど、
俺たち大広間の大きな扉、壊してきちゃったし。


お姫様のことも気になるし、
それに、あの首飾りのこととかも。

















出てくるときもあっという間だったけど、
帰るのもあっという間です。
竜って便利。
移動スピードが桁違い。



塔に戻って、青いのと赤いのと灰色のと白いのに、迷惑をかけてごめんなさいって、黒いのと一緒に謝って。
黒いのはなんだかみんなにジトっと見られてた。
あれ?


お城の城主様にも挨拶をして、扉を壊したことを謝ったんだけど、
ごめんなさいって言ったらパタっと倒れちゃった。
とりあえず、扉は弁償しなくてもいいみたい?
そんなことを言ってたような気がする。


あのとき倒れたお姫様は、かなり寝込んでたみたいだけど、少しずつ回復をして、起き上がれるくらいになってて。
俺と黒いのに会ってくれたんだけど。
めちゃめちゃ綺麗なお姫様で。
俺はちょっと緊張してしまって、固くなってしまったけど、
お姫様が俺の緊張を和らげるように話しかけてくれて、
首飾りのこと、謝ってくれて。
俺と黒いのの結婚をおめでとうって、言ってくれた。
早く元気になるといいね。
ええと、黒いのはもう、俺のだから、あげられなくて。
代わりに俺の鱗いる?って。
訊いたけど、お姫様からの返事をもらう前に黒いのに抱っこされてその場を離れさせられたから。
返事が聞けなかった。
あとで、お姫様の侍女さん経由で『うろこはいりません』って言われた。
でもいつかお茶を一緒に飲みましょうって書いてあって。
たくさんおいしいお菓子を用意してくれる約束をしてくれた。
、、、すき。
灰色のと白いのも誘って、みんなで行きたい。
特に灰色のはお菓子、好きだもんね。
いっぱい食べよう。





そうだ。
黒いのの首にかけたあの首飾りについては、王都から人間たちが来て、たくさん調べてるらしい。
青いのと赤いのも、調べるって、言ってて。



、、人間って、すごい。
手先の器用さと、貪欲さで。
最上位種の竜でさえ、従属させる呪いを生み出す。





ここは、最上位種のコントロールを外れようとしている世界だと思う。



だから、もっと、
いろんなことを勉強して。
この世界のこと、知らないとね。







俺は、灰色のと白いのと一緒に、この世界のことを勉強することにした。




























そういえば、その、お勉強の、休憩時間のとき。
俺と白いのと灰色のと、先生役の赤いのがお茶を飲んでたんだけど。
赤いのが、



「あなたたちは、双子になるわね」



俺と灰色のを見て、そんなことを言ったから。
俺はびっくりして、飲んでたお茶、そっちのけで。
灰色のの顔を、マジマジと見つめてしまった。




、、、ふたご?



ふたごって、なんだっけ、って。
ちょっとボケたこと考えてたら。
赤いのが続けてまたびっくりなことを言った。




「私は黒いののあとで生まれたけれど、彼とは兄妹だし、青いのと白いのも、兄弟よ?どちらも、百年単位で歳が、離れているけれど」




ええ、、、と?
誰と誰が、きょうだい、って?




、、、、、、えええ?







だいぶ、混乱してたんだけど。
灰色のが、



「私は、闇竜で、闇の魔法が得意だけど、少しなら、光の魔法も使えるから」



にこ、と笑って言ったから。
灰色のは普通に、知ってたみたい?
というか、竜って、使える魔法の属性で、きょうだいの見分けをする、、、の?




ぽかーんと、していたら。
だいじょうぶ、おれもあんまりわかってないから、って。
白いのが慰めてくれた。


それを見た灰色のが、もう、って。
ちょっとむくれて、教えてくれる。



「卵を孕んだほうの特性が、強く出て、孕ませたほうの特性も、少しだけ受け継ぐから。お互いに卵を孕んだら、同時期に卵が産み落とされて、双子になるの。私が闇で、光も少しあって、あなたは光で、闇が少しあるでしょう?きっと、私たちを孕んだのは、雌の竜たちだったのじゃない?雌同士だと、双子になりやすいの」



同じ腹から出てはいないけど、
同時に孕ませ合って、産み落とされたものを、竜の感覚で双子と言うらしい。



へぇ。
もう、へぇ、って納得することにした。
灰色のは俺や白いのよりたくさん勉強してるみたい。
すごい。


闇と、光。
ダークドラゴンと、ライトドラゴン?
うーん?俺は自分のことを、クリスタルドラゴンだって思ったんだけど。
別名だと、光竜なの?
晶竜とかのほうか、しっくりくるんだけど。
あでも、髪の色で白銀のって、呼ばれてるんだっけ?



自分に関わる名前、のとこで。
ちょーっと混乱して。
ぐーるぐる、してたら。



「あなたがそう思うなら、そう思うそれがあなたよ。私は闇の魔法が得意だから、闇竜とも言えるのだけど、灰色だから、灰竜でもいいの。人間たちは、灰竜って言うみたいね。灰色の、って、色で呼ぶのは、愛称に近いわ。あなたは私を、ダークドラゴンって呼んでくれるの?それもすてきね?とても数が少ないから、それで大丈夫なの」

 

にこ、と。
灰色のが笑って。
つられて俺もにこにこしてしまう。
灰色だから、グレードラゴンでもいいみたいだけど、なんとなく、ダークドラゴンのほうが、しっくりくる?
どっちで呼んでも同じ個体を指すらしいけど。



「もっと北の、極地には風竜や氷竜がいるわよ」



私たちよりも、もっと昔からいる竜で、人間とは関わらない竜たちね、って。
赤いのが教えてくれて。




「彼らが喧嘩をすると、大きく気候が崩れちゃうの」




コソッと、灰色のが教えてくれる。


あちこちに行きたがる風竜と、極地に留まりたい氷竜が喧嘩になって。
でもお互いに一緒にいたいから、風竜のフラストレーションが溜まって、極地で竜巻が発生したり、
我慢ができなくなって風竜が極地を離れて、氷竜が探しにいくと、あちこち大寒波になったり。
長く世界にいる竜だから、世界に与える影響が大きくなるらしい


ちなみに、色は氷竜が水色で、風竜が緑だって。



「風竜が、移り気なところがあって。それもまとめてかわいいと、氷竜は思っているみたいだけれど」



赤いのが、華やかな顔でくすりと楽しそうに笑って。
それを見た俺と灰色のが、そろって赤くなってしまった。
赤いのが楽しそうに笑うと、俺たちはなぜかそうなる。


やっぱり双子だから、似てるのかな?
それにしても、いろんな呼び方で呼んでも、ぜんぶその竜になるって、なんだかおもしろい?
それだけ、数が少ないってことなんだろうけど。



かちゃん、と。お茶のカップをお皿に置いて、音を立ててしまった。


手袋をしてお茶を飲んでるから、やっぱりまだ慣れない。
ちなみに、塔で出される赤いジャムのクッキーは、苺ジャムのクッキーだった。
おいしい。



「そのクッキー、今、とても人気なのよ?」



赤いのが、にこ、と笑って言う。



「食いしん坊の黒竜と苺ジャムのクッキーっていう、お話ができたみたいよ?」



塔で出された苺ジャムのクッキーを巡って黒竜が騒動を起こしたという話を、人間たちがつくって。
爆発的人気商品になっているらしい。


ちなみにこの話を聞いた青いのは、腹の底から爆笑したらしい。












こんな感じで。
俺は今日も楽しく過ごしてます。




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