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しおりを挟む怖い。
もうひたすら怖い。
いや、その、ブルードラゴンのお口にパクリとされてるのもびっくりなんだけど、そっちが怖いんじゃなくて。
み、見つかる!バレる!それ絶対やだ!!
竜体になって、逃げようとしたけど。
俺がそう考えたのがわかるみたいで。
ブルードラゴンが、
おとなしくしてろ
そんなふうに、伝えてきて。
でも俺、ブラックドラゴンには、会いたくなくて。
いや、なにしにきたんだって感じなんだけど。
だから、最初から、会いにきたんじゃなくて、見にきたんだって!
こっそり!
バレない前提で!
バ、バレたくない、、、っ、
泣く。もう泣く。
俺がそんなふうに思ってたら、
くろいののところにはいかない
あかいののところにいく
なんとなく、そんなふうに伝わってきて。
「ほんと?黒いのの所には、行かない?」
ブルードラゴンの口に咥えられながら訊いたら、
ちょっと間があいて、
いかない
そう、伝えられたから。
俺は体から力を抜いた。
よかった。
ブルードラゴンは城塞都市の中の、お城とは少し離れた所にある塔に俺を運んで。
そこの屋上に着陸して。
俺を下ろしてくれた。
そういえば上から見たら、城塞都市はけっこう大きかった。
でもあちこちに建物が密集してて、酪農家のお爺ちゃんが言ったとおり、放牧とか、そういうのはちょっと無理っぽい。
なんだかごちゃっと、してるなぁ。
ぽけっとそんなことを考えてたら。
建物の中から屋上に、赤いのと、灰色のと、白いのが、ぞろぞろっと出てきた。
酪農家のお爺ちゃんから聞いてたのより、色が多い。
数か月前の情報とかだったから、最近増えたのかな。
ごめんなさい。さっきから、色で識別してて。
赤とか、灰色とか、白とか。
みんな髪の毛の色です。
赤いのは、艶々の赤い髪が緩いウェーブを描いて腰のとこまであって、
その女の人の、華やかな容姿にとても似合っていて。
俺より年上の、めちゃめちゃ美人の女の人?
灰色のは、灰色の長い髪の女の子で、やっぱりこっちも美人さん。
色が落ち着いてるから、クールビューティー系。
でも俺と、歳がそんなに変わらなさそうだから、落ち着いてるんだけど、女の人っていうより女の子って感じがする。
白いのは白色の髪の男の子で、俺と同じくらいの歳だと思うんだけど、俺より背が高くて。
なんだか物語に出てくるキラッキラの王子様みたい?
「珍しい髪の色なのね」
赤色の、華やか系美女さんに言われて。
俺は自分の髪の色を、そういえば何色だったっけ?って考える。
そんなに長く伸びてないから、あんまり視界に入らなくて。
気にしてなかった。
「白でもなく、灰色でもなく。白銀かしら?」
すてきな色ね、って。
手袋をした指先で赤いのにそっと髪をなでられて。
謎にドキドキしてしまう。
ものすっごい美人さんだから、どうしよう。
話しかけて、いいのかな。
でもなにを喋ればいいの。
だめだ緊張してなにも喋れない。
きゅむ、っと。
顔の近くで動く手にどうしたらいいかわからなくて。
目を閉じてたらそのまま頬をついっとなでられて。
くすぐったくて思わずふる、と震えたら、あらかわいい、って言われた。
もうなんて返事をしたらいいのか余計にわからなくて、そのままじっとしていたら、
「とりあえず中へ入れ。コレは黒いのに会いたくないらしい。まあ、来ないとは思うが。コレが着てる他の雄の気配のする服を、念のため着替えさせたほうがいい」
黒いの、の単語にびくっとしてしまった俺を、後ろからがしっとつかんだのは、さっき俺をここに運んだブルードラゴンで。
人化して軍服みたいな制服を着てる。
あれ?人化して、裸じゃない??
ちょっとどうやるのかあとで訊こう。
屋上からそのまま塔の中に連れていかれて、
たくさん制服が用意されてる部屋に通されて、
体や足のサイズを測って、
俺は今、衝立の中で、白いのと灰色のに囲まれて、着替えをしてる。
いや、着替えたいんだけど、ふたりがそれぞれ手に制服を持ってて、どっちの色の制服を着るかで揉めてて。
だからなかなか着替えが進まない。
「白!ねえ、白がいいよね?君、白銀の珍しい髪の色だから、絶対白いのが似合うよ!」
「いいえ黒です!白銀の髪には、絶対に黒が似合います!」
それぞれ、キラキラ王子様みたいな白いのが白い制服を持って、
クールビューティー系美少女の灰色のが黒い制服を持ってて。
ちなみに白いのは男用の軍服みたいな白い制服姿で、
青いのもその制服。
灰色のは裾が広がったワンピースタイプの軍服みたいな黒い制服姿で。
赤いのもその制服。
俺に、男用の軍服みたいな制服を持ってきてくれたんだけど。
白にするか、黒にするかで決まらない。
それにしても、それぞれ、基本的なデザインは同じなんだけど、白と黒と、男用とワンピースタイプで、四種類あるって。
服飾文化がすごい。
誰がデザインしてるんだろう?
しかも、ワンピースはスカートの部分がふわっとしてて、いや、中にズボンと太ももまでのブーツをはくから、風でふわっとなっちゃっても大丈夫なやつだよ?
男用のも、上に着る服の、後ろの裾が長くて、歩くたびにふわふわひらひらする。
お城の中ではふわふわひらひらが大事みたい。
ちなみに王都とかだと、もっとぶわぶわびらびららしい。
くりかえすけど服飾文化がすごい。
お城にお勤めしてる軍属の人たちは、お城の中にいる内勤組は白で、お城の外に出る外勤組は黒らしい。
黒いほうが、汚れが目立たないもんね?
ただ、ドラゴンは別で、
白か黒か、好きなほうの制服を着てていいみたい。
なら、その、、
「黒いのは、どっちの色のを、着てる?」
そっと訊いたら、白いのが教えてくれた。
「お姫様の所にいる黒いのなら、今は黒いのを着てるよ?」
「、、、今は?」
「婚約式と結婚式では白いのを着る予定になってる」
もう、南に飛んで、いいかな?
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