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ロビン兄様とお出かけ

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さて、入学から1年が経ち2年目の春を迎えた。
今年から女子は社交パーティや花嫁修行が加わってくる。私の婚約者は王家なので王家の教育も今まで以上に課題が増えて忙しい日々を送っている。
アルク様も外交や教育が忙しくなり、2人で過ごせていた日々が嘘のように会えなくなっていった。
アルク様に会えないのは寂しいけれど、アルク様も頑張っているのだか、私も頑張らないとと自分を励ますばかり。
だけど、そんな日も長くは続かなくてため息が多くなってきてしまった。
そんな時、久しぶりに家で寛いでいたロビン兄様が気晴らしに街へ行かないかと誘ってくれた。
気分転換にたまには良いかなって思い、その誘いに乗ることにした。

「ロビン兄様がこの時間に家にいるなんて珍しいですわね。朝は早く夜は遅くに家と学院を行き来しているのに。」

「やっと最近、余裕が出てきてね。これからは本格的に父上の補佐になるから家にいる時間も多くなってくると思うよ。」

「そうなんですね。ロビン兄様は結婚はされないの?あんなに釣り書が来てるのに全て断ってしまうんだもの。妹として心配ですわ。」

このロビン兄様はジル兄様と双子だけど、タイプが全く違く。明るく、逞しい筋肉に爽やかな笑顔を持つ太陽の様なジル兄様に対し、静かで身体の線が細めで聡明、優しい笑みを浮かべるロビン兄様は月の様。
2人ともお父様とお母様の良いとこ取りの容姿と中身なので、巷の女子達は血眼でアピールしているもジル兄様はミリヤしか目にないし、ロビン兄様は仕事人間だから恋愛に夢見るお年頃の子達は無理だろうな。ロビン兄様を待っていたら結婚適齢期が過ぎてしまうと思うし。

「僕はまだ結婚は考えてないよ。仕事や勉強が好きだかららね。幸いにも父上も母上も結婚は自由にしなさいと言ってくれてるし、心配もしてないさ。それにジルとミリヤがいる。公爵家の世継ぎ問題になっても彼らの子供がいれば問題もない。だから僕はやりたい事をやるよ。」

ニッコリと笑うロビン兄様。
女性だけでなく男性までも魅力してしまうその笑顔を独り占め出来るのは妹の特権ですね。

「それで?最近元気がないみたいだけど、何かあった?」

やはり、ロビン兄様も勘づいていたのね。でも、アルク様と会えなくて落ち込んで拗ねてるなんて、恥ずかしくて言えないわ。

「アルク様とお出かけやお茶会の頻度が減ってるのが原因なのかな?」

ニッコリと穏やかに話すロビン兄様。
ぅう…。見抜かれてます。

「レイラは隠し事とか嘘は苦手だもんね。昔から顔に出るから直ぐに分かってしまうよ。」

そんなに私って分かりやすいのね。しかも昔からだなんて、全然成長してないじゃない。

「レイラ。アルク様も今が頑張り時なんだ。わかってあげて欲しい。でも、寂しい事も伝える事も重要だよ。言葉にしないと伝わらないからね。大切な事だからこそちゃんと伝えるんだ。そうすれば、相手もわかってくれるし、わかってくれたと通じるんだ。口でも良いし手紙でも良い。思いを通わせる事が大事なんだ。」

そっか。私ばかり寂しいと拗ねてたけど、アルク様も立場的に弱音を吐く場所がないのかもしれない。

「お手紙…良いですわね!直接会えなくてもお手紙を書けばアルク様に通じますものね!何を書こうかしら。そうと決まったら早くお家に帰って書きたいですわ!」

「フフ。少しは元気になったみたいだね。でも、レイラ。今日は僕とのお出かけだよ?相手をしてくれないと僕も寂しいな。」

なんて甘え上手なロビン兄様!!そうやって虜にしていくのね!勉強になりますわ!
ロビン兄様の甘え上手を取得出来れば、私も上手にアルク様に甘えられる様になるかしら。
―――でも、アルク様はヒロインちゃんと…
あぁ!!ダメダメ!!せっかくロビン兄様が元気づけてくれたのだから、明るい気持ちでいなきゃ!

「そうだ。手紙に贈り物も添えてみるのも良いかもしれないよ。」

「贈り物?でも、何を贈れば…」

「レイラはアルク様から何を贈られたら嬉しい?」

「私の為に選んでくれたものならなんでも嬉しいですわ!」

「アルク様もそう思ってるよ。アルク様が喜んでくれそうな物を街で選んでみないかい?」

「はい!何が良いかしら?…フフ。楽しそうですわ!」

こうして街に着いた私はロビン兄様に付き合ってもらい、アルク様へのプレゼントを買いました。
選んだのは可愛い小鳥の文鎮。綺麗な金色で瞳はブルー。まるでアルク様みたいだったの。
誕生日じゃないけれど、アルク様、喜んでくれると良いな。
早速お家に帰って手紙をしたため、翌日従者にプレゼントも添えてアルク様に届けて貰った。
私がしたかった事だったから返事は特に期待してなかったけど、直ぐに返事が届いた。
10枚も綴ってくれた文字は急いで書いたのであろう、所々文字が歪んだり走り書きになっていた。
忙しいのにそれでも返事を書いてくれた事が嬉しくて、この手紙は私の一生の宝物にしようと決めた。
お手紙に添えられた花はミリヤが私の部屋に飾ってくれた。
色とりどりのお花は春の良い香りがした。
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