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肌寒い季節がやって参りました。私は先日、アルク様にプレゼントしていただいたショールを羽織廊下を歩いていると、後ろからセリーナさんに呼ばれた。
「レイラ様~。ごきげんよう。どちらへ向かわれるんですの~?」
「ごきげんよう、セリーナさん。これから学園書庫へ向かおうと思いまして。」
「調べものとかですか~?」
「ええ。この間、マリアさんからお勧めしていただいた本が気になりまして。書庫にあればお借りしようかと。」
「そうなんですね~。どんなお話なんですの?」
「搭に閉じ込められたお姫様と隣国の王子との甘く切ない恋愛ものだそうです。文章がとても綺麗で凄く惹き込まれたそうですよ。」
「まぁ~!私も気になりますわ~。学園書庫には本も豊富ですし新刊もすぐに並ぶので便利ですわよね~。私もご一緒してよろしいでしょうか?」
「もちろんですわ。一緒に参りましょう。」
それから私達はたわいのない話をしながら学園書庫へ向かいました。
学園書庫はとても広く、カフェも併設されていて人も多いが、静かに過ごすのがマナーなので紙を捲る音やヒソリと静かに話す声、机に置かれるカップの音、椅子の押し引きの音、誰かがコホンと咳き込む声...
ザワつく食堂では誰も気にとめないような音がここでは直ぐに拾われてしまうほどの静けさを保っていた。
私達は目的の本を探しに新刊コーナーや恋愛コーナーを探してみたが、目的の本は置いていなかった。
「はぁ。どこにも見当たりませんわ。」
「人気の本なんですのね~。」
小さな声で呟く私にセリーナさんも小さな声で応えた。
「そうみたいですわね。今日は諦めて出直しますわ。...あ、あそこにいらっしゃるのってレイド様ではなくて?」
「あら~!ここでお会い出来るなんて~!いつもは空き教室か王宮の執務室に行ってしまわれるのに。調べものかしら~。」
ぼんやりと彼を見つめるセリーナさんは寂しそうな#表情_かお_#をしていた。
「最近、前よりもっとお忙しいみたいなの~...学園終わりも休日も一緒に過ごせなくなってしまって...私、避けられているのかしら~って考えるようになって...」
「セリーナさん...」
「レイド様は将来、文官となり殿下の支えとなるお方。私のワガママで彼の邪魔をしたくはありませんの。だからこうやってレイド様を見つけられただけでも嬉しいんですの~。」
にっこりと無理やり微笑むセリーナさんを見て、私は切なくなりました。
そんな中、静寂を切り裂く甘ったるい声が書庫に響いた。
「あ!レイド様、みぃーつけたぁー!」
...この声はヒロインちゃん!?
しょ、書庫は静かにするのがマナーですよ!皆さんがヒロインちゃんをじろりと見てますよ!!
「はぁ。また君か。いい加減にしてくれないか。僕は君に構ってるほど暇じゃないんだ。」
「なんでよ!私はヒロインなんだから、私の事最優先にしなくちゃいけないのよ!」
「また訳の分からない事を...君は早くここから出ていくべきだ。君はここが書庫だとわからないのか?そんなに喚き散らして、僕だけじゃなく周りの人達にも迷惑だ。」
「もう!そんな固いこと言わないでよー!ね?カフェでおしゃべりしようよ!」
「ちょっと!離しなさい!!」
ヒロインちゃんがレイド様の右腕に自分の両腕を絡め、グッと距離を縮めました。
...は!これはレイド様ルートのイベントでは?
確かイベントは本を書庫に探しに来たヒロインちゃん。偶然居合わせたレイド様と話をしていた所、そこに鉢合わせたセリーナさんがヒロインちゃんを突き飛ばした衝撃で棚にぶつかり、棚が倒れてくる。それをレイド様が庇った故に発生する、レイド床ドンイベ!!
セリーナさんはヒロインちゃんを突き飛ばしてしまうのでしょうか...
そうすると床ドンイベントの相手はヒロインちゃん?
このイベントが発生してしまったら、レイド様はヒロインちゃんを庇い、セリーナさんを軽蔑してしまう。。そうしたらセリーナさんは...
私が暗くなりそうな気持ちで色々と考えている傍らでセリーナさんが動いていた。
「ごきげんよう~。レイド様、マカロン嬢。」
「セリーナ...」
「あら、セリーナ様。ごきげんよう。私、これからレイド様とお茶しますのよ。」
「レイド様...」
「ち、違う!セリーナ、誤解だ!おい、君!勝手なことを言うな!!」
「君じゃありませんわ!ローズですわ!」
「マカロン嬢。」
ヒロインちゃんの声に被さるようにセリーナさんは声を発し、ヒロインちゃんの前に立ちはだかった。
「その様に騒ぎ立ててはレイド様にもここを利用している方々にも迷惑ですわ。それに、レイド様は私の婚約者です。お引き取りいただけますか?」
セリーナさんはいつもはお色気たっぷりでのほほんとしているのに、今はのほほんがキリッとになっていて、お姉様って感じの雰囲気です。ギャップですね!ゴクリ!
「なによ!悪役の癖に!邪魔しないでよ!」
ヒロインちゃんがムキになりセリーナさんの肩を押した弾みで、セリーナは本棚にぶつかってしまった。
「キャァ!」
「セリーナ!」
「セリーナさん!」
セリーナさんがぶつかった拍子に本棚がぐらついた。
レイド様がヒロインちゃんを安全な方に突き飛ばし、セリーナさんを胸に抱き込んだ瞬間、ぐらついた本棚はドォォンと大きな音を立てて2人の上に倒れていった。
「レイラ様~。ごきげんよう。どちらへ向かわれるんですの~?」
「ごきげんよう、セリーナさん。これから学園書庫へ向かおうと思いまして。」
「調べものとかですか~?」
「ええ。この間、マリアさんからお勧めしていただいた本が気になりまして。書庫にあればお借りしようかと。」
「そうなんですね~。どんなお話なんですの?」
「搭に閉じ込められたお姫様と隣国の王子との甘く切ない恋愛ものだそうです。文章がとても綺麗で凄く惹き込まれたそうですよ。」
「まぁ~!私も気になりますわ~。学園書庫には本も豊富ですし新刊もすぐに並ぶので便利ですわよね~。私もご一緒してよろしいでしょうか?」
「もちろんですわ。一緒に参りましょう。」
それから私達はたわいのない話をしながら学園書庫へ向かいました。
学園書庫はとても広く、カフェも併設されていて人も多いが、静かに過ごすのがマナーなので紙を捲る音やヒソリと静かに話す声、机に置かれるカップの音、椅子の押し引きの音、誰かがコホンと咳き込む声...
ザワつく食堂では誰も気にとめないような音がここでは直ぐに拾われてしまうほどの静けさを保っていた。
私達は目的の本を探しに新刊コーナーや恋愛コーナーを探してみたが、目的の本は置いていなかった。
「はぁ。どこにも見当たりませんわ。」
「人気の本なんですのね~。」
小さな声で呟く私にセリーナさんも小さな声で応えた。
「そうみたいですわね。今日は諦めて出直しますわ。...あ、あそこにいらっしゃるのってレイド様ではなくて?」
「あら~!ここでお会い出来るなんて~!いつもは空き教室か王宮の執務室に行ってしまわれるのに。調べものかしら~。」
ぼんやりと彼を見つめるセリーナさんは寂しそうな#表情_かお_#をしていた。
「最近、前よりもっとお忙しいみたいなの~...学園終わりも休日も一緒に過ごせなくなってしまって...私、避けられているのかしら~って考えるようになって...」
「セリーナさん...」
「レイド様は将来、文官となり殿下の支えとなるお方。私のワガママで彼の邪魔をしたくはありませんの。だからこうやってレイド様を見つけられただけでも嬉しいんですの~。」
にっこりと無理やり微笑むセリーナさんを見て、私は切なくなりました。
そんな中、静寂を切り裂く甘ったるい声が書庫に響いた。
「あ!レイド様、みぃーつけたぁー!」
...この声はヒロインちゃん!?
しょ、書庫は静かにするのがマナーですよ!皆さんがヒロインちゃんをじろりと見てますよ!!
「はぁ。また君か。いい加減にしてくれないか。僕は君に構ってるほど暇じゃないんだ。」
「なんでよ!私はヒロインなんだから、私の事最優先にしなくちゃいけないのよ!」
「また訳の分からない事を...君は早くここから出ていくべきだ。君はここが書庫だとわからないのか?そんなに喚き散らして、僕だけじゃなく周りの人達にも迷惑だ。」
「もう!そんな固いこと言わないでよー!ね?カフェでおしゃべりしようよ!」
「ちょっと!離しなさい!!」
ヒロインちゃんがレイド様の右腕に自分の両腕を絡め、グッと距離を縮めました。
...は!これはレイド様ルートのイベントでは?
確かイベントは本を書庫に探しに来たヒロインちゃん。偶然居合わせたレイド様と話をしていた所、そこに鉢合わせたセリーナさんがヒロインちゃんを突き飛ばした衝撃で棚にぶつかり、棚が倒れてくる。それをレイド様が庇った故に発生する、レイド床ドンイベ!!
セリーナさんはヒロインちゃんを突き飛ばしてしまうのでしょうか...
そうすると床ドンイベントの相手はヒロインちゃん?
このイベントが発生してしまったら、レイド様はヒロインちゃんを庇い、セリーナさんを軽蔑してしまう。。そうしたらセリーナさんは...
私が暗くなりそうな気持ちで色々と考えている傍らでセリーナさんが動いていた。
「ごきげんよう~。レイド様、マカロン嬢。」
「セリーナ...」
「あら、セリーナ様。ごきげんよう。私、これからレイド様とお茶しますのよ。」
「レイド様...」
「ち、違う!セリーナ、誤解だ!おい、君!勝手なことを言うな!!」
「君じゃありませんわ!ローズですわ!」
「マカロン嬢。」
ヒロインちゃんの声に被さるようにセリーナさんは声を発し、ヒロインちゃんの前に立ちはだかった。
「その様に騒ぎ立ててはレイド様にもここを利用している方々にも迷惑ですわ。それに、レイド様は私の婚約者です。お引き取りいただけますか?」
セリーナさんはいつもはお色気たっぷりでのほほんとしているのに、今はのほほんがキリッとになっていて、お姉様って感じの雰囲気です。ギャップですね!ゴクリ!
「なによ!悪役の癖に!邪魔しないでよ!」
ヒロインちゃんがムキになりセリーナさんの肩を押した弾みで、セリーナは本棚にぶつかってしまった。
「キャァ!」
「セリーナ!」
「セリーナさん!」
セリーナさんがぶつかった拍子に本棚がぐらついた。
レイド様がヒロインちゃんを安全な方に突き飛ばし、セリーナさんを胸に抱き込んだ瞬間、ぐらついた本棚はドォォンと大きな音を立てて2人の上に倒れていった。
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