上 下
31 / 39
第二章

勇者ちゃん、もう一人の勇者ちゃんと会う。③

しおりを挟む

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

『そう、それは私達も知らなかった情報。局長には私から報告しておく』

 授業を終えて、放課後。
 場所は校庭の隅の大きな木の下。

 俺は自分のMaRQを耳に当てて、南条さんへと思念を用いた通話で今日の事を報告している。
 
 各国秘匿のオカルト技術が一般に流出した事により、思念波を用いた連絡手段は最早常識的に普及した。

 電波や地形に左右されず、触媒であるMaRQさえあれば誰にで使用できる、オカルティックサイエンスの最たる技術だ。

 俺らみたいな裏稼業の人間にとっては、数十年前から当たり前に使用していた物で、極端な話M aRQを使わなくても使用しなくても行使できる技術なのだが、せっかく楽に使えるガジェットがあるならそっちを使いたい。
 
 盗聴・妨害を避ける時なんかは、秘匿チャンネルをしっかりと利用してるし、要領良く生きていかないとな。

「一応、詳しい話はこれから聞く事になってるんだ。なんでこのまま局にアムを送り届けたら、しばらくは連絡がつかないかも」

『この任務の裁量権は貴方にある。任せるから、上手く立ち回って欲しい。それで、その『神剣の御使』って娘は、今どうしてる?』

 グルンと振り返って、本校舎の玄関で俺を待つアムを見る。
 今日知り合ったクラスメイト達と楽しそうに談話しているアムの足元で、ディアはどことなく嬉しそうにして佇んでいた。

「今んとこ、俺かアムからは一切離れないって感じかな。ディアアイツ単体で結構な威力の攻撃魔法が使えるらしいから、これからも注意して見とくよ」

 俺の知らないところであんな物騒なのバンバン打たれても困るしな。

『お願いね。今日の報告書は明日の夜までで良いから、貴方はその淡島さんからできるだけ穏便に情報を聞き出して。貴方の話だと、その子はかなりまともな子って印象を受ける』

「淡島? ああ、アイツなら本当に大人しいいい奴だ。性格も守備的だし、人の話もちゃんと聞けるし」

 最近の俺の周りの女性は人の話も聞かずに猪突猛進する奴らばかりだからな。

 アイツの存在は俺の心の清涼剤でもあったんだが、こうなってしまってはどう転ぶかも分からん。

 なので俺は今、ちょっと悲しい。

『ディア、ちゃん? 彼女の説明だと、御使の姿を見る事の出来る勇者はそれなりに力を持っていると思われる。もしかしたら、グランハインドさんと同等か、それ以上の力を持っててもおかしくない』

「そんな存在が国内にいるなんて、第六情報室オレらが見逃してるとは思えないんだがなぁ」

『そうね。ただ、そういうのも有り得るのが、この世界。一応、気をつけて任務に当たる事』

「了解。じゃあ切るぜ?」

 これから本局のある霞が関までアムを送り届け、またこっちに逆戻りだ。
 ほんと休む暇が無い。

 唯一の救いは車で移動できる事だろうか。
 電車嫌いなんだよな俺。

『あ。そういえば』

「ん? なんです?」

 南条さんが連絡ごとを忘れるなんて珍しいな。
 なんだなんだ?

『流華ちゃんからメールが来てた。なんか凄い怒ってて読み取れなかったんだけど、アレ何?』

「気にしないでください。ただの病気です」

 まだ怒ってたのか愚妹めが!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エージェントSIX~自堕落エージェントは暗殺者を狙う~

智天斗
ファンタジー
日本には暗殺者が存在する。 ある実験の被験者であるエージェントSIXはその実験の6番目の生還者だった。 時は2025年。上官に呼び出されたエージェントSIXはある任務を任され、高校に潜入することになる。その任務とは同じ高校に通い始める、現内閣総理大臣である丸山忠臣のご子息、丸山零を狙う暗殺者を探し出し、殺害すること。 エージェントSIXは丸山零を狙う暗殺者を探し出すことが出来るのか。

討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR
ファンタジー
                その日、俺は有限(いのち)を失った――――  どうも、ラーメンと兵器とHR/HM音楽のマニア、顔出しニコ生放送したり、ギャルゲーサークル“ConquistadoR(コンキスタドール)”を立ち上げたり、俳優やったり色々と活動中(有村架純さん/東山紀之さん主演・TBS主催の舞台“ジャンヌダルク”出演)の中学11年生・LucifeRです!  本作は“小説カキコ”様で、私が発表していた長編(小説大会2014 シリアス・ダーク部門4位入賞作)を加筆修正、挿絵を付けての転載です。  作者本人による重複投稿になります。 挿絵:白狼識さん 表紙:ラプターちゃん                       † † † † † † †  文明の発達した現代社会ではあるが、解明できない事件は今なお多い。それもそのはず、これらを引き起こす存在は、ほとんどの人間には認識できないのだ。彼ら怪魔(マレフィクス)は、古より人知れず災いを生み出してきた。  時は2026年。これは、社会の暗部(かげ)で闇の捕食者を討つ、妖屠たちの物語である。                      † † † † † † †  タイトル・・・主人公がデスペルタルという刀の使い手なので。  サブタイトルは彼の片目が魔王と契約したことにより鉐色となって、眼帯で封印していることから「隻眼」もかけたダブルミーニングです。  悪魔、天使などの設定はミルトンの“失楽園”をはじめ、コラン・ド・プランシーの“地獄の事典”など、キリス〇ト教がらみの文献を参考にしました。「違う学説だと云々」等、あるとは思いますが、フィクションを元にしたフィクションと受け取っていただければ幸いです。  天使、悪魔に興味のある方、厨二全開の詠唱が好きな方は、良かったら読んでみてください! http://com.nicovideo.jp/community/co2677397 https://twitter.com/satanrising  ご感想、アドバイス等お待ちしています! Fate/grand orderのフレンド申請もお待ちしていますw ※)アイコン写真はたまに変わりますが、いずれも本人です。

夜空に瞬く星に向かって

松由 実行
SF
 地球人が星間航行を手に入れて数百年。地球は否も応も無く、汎銀河戦争に巻き込まれていた。しかしそれは地球政府とその軍隊の話だ。銀河を股にかけて活躍する民間の船乗り達にはそんなことは関係ない。金を払ってくれるなら、非同盟国にだって荷物を運ぶ。しかし時にはヤバイ仕事が転がり込むこともある。  船を失くした地球人パイロット、マサシに怪しげな依頼が舞い込む。「私たちの星を救って欲しい。」  従軍経験も無ければ、ウデに覚えも無い、誰かから頼られるような英雄的行動をした覚えも無い。そもそも今、自分の船さえ無い。あまりに胡散臭い話だったが、報酬額に釣られてついついその話に乗ってしまった・・・ 第一章 危険に見合った報酬 第二章 インターミッション ~ Dancing with Moonlight 第三章 キュメルニア・ローレライ (Cjumelneer Loreley) 第四章 ベイシティ・ブルース (Bay City Blues) 第五章 インターミッション ~ミスラのだいぼうけん 第六章 泥沼のプリンセス ※本作品は「小説家になろう」にも投稿しております。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

仔猫殿下と、はつ江ばあさん

鯨井イルカ
ファンタジー
魔界に召喚されてしまった彼女とシマシマな彼の日常ストーリー 2022年6月9日に完結いたしました。

処理中です...