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8話 唯

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ゆいは、中学2年生だった。

中学2年生の中では、一番古くからここの施設にいる。



唯の、お母さんは…唯が小学生低学年の頃…

まだ赤ちゃんだった唯の弟を連れて…無理心中をして亡くなった…

その後…

父が家で自〇しているのを、兄と一緒に見つけた…



その衝撃は、計れ知れない…



それで、兄と一緒に施設に来た。

施設に来た頃は、喋らない子だったそうだ。

兄は、私が入る前に退園して就職していた。



唯は、そんな過去があるとは思えないくらい…

しっかりしている子だった。



でも、時々ヌケていて…

それが、また面白くて…可愛い子。



学校での態度もいい優等生で…

困らせることがない子だった。



唯は、長期休暇になると…

祖父母の所に帰省した。

いつも、しっかりしている唯だったけど…

祖父母に会えた時の顔は、童心にかえったように

可愛い笑顔になる。



唯は、中3になって生徒会長に立候補した。

その時は、私の所に…

立候補する理由の文章を一緒に考えてと

来てくれたから、一緒に考えた。

文章を考えるのは苦手だと叫びながらも頑張って考えた。

でも、結果は男子に負けてしまったけど…



唯は、いつも頑張っていた。



施設では、参観日に職員が行く。

職員が教室に入った途端に…

その子によって態度が違うのだけど…

唯は、ニヤニヤして

すごく嬉しそうな顔をしてくれる。

それが、すごく可愛かった…



唯は、受験でどの高校を志望校にしようか…

すごく迷った。



施設では、就職に向けて役に立つ学科がある高校を勧める。

最初、唯は看護学科がある高校にしようかと言っていたけど…



唯が最後に決めたのは…

公立校の普通科だった。

今は、将来のことが考えられない…

高校で考えて…出来れば大学に行きたいと…



施設から公立高校の普通科に行くのは珍しい…

それでも、唯は優等生だったから認められた。



唯は、公立高校に、みごと合格した。

その学校は、合格するとすぐ課題が出された。



施設の図書室には、専門書はあまりない…

施設の本は、すべて寄付された物ばかりだ…

どうしても児童書が多い。



自由に、国がやっている図書館にも行けない。

私は、大学の時にレポートを書くために

図書館に通っていたから…利用できる。

課題に合わせて、本を検索して…

唯に確認を取って、本を借りにいった。



唯は、期待通り…

課題の小論文を書き上げた…



唯は、高校に通うために、より近い高校生のホームに移った。



土日になると…

たまに運動指導で、施設に来る。



「高校どう?楽しい?」



「勉強は大変だけど、楽しいよ。テニス部に入った」



そう、教えてくれた。



唯は、他の子が好きな人の話をしていても

全然、話に乗っていかない子だった。

誰かに聞かれても…



「好きな人はいない」



唯は、そういう子だったけど…



友達と喧嘩をしたことも無いし…

嫌なことを言われたら、しっかり言い返す子だった。



唯が、中学で作成した木の時計を捨てておいてって言って来たけど、すごく良い時計だったし動いていたから…

私が、ちょうだいって言って貰って帰った。



その時計は、うちでまだ動いている。

私は、その時計を見る度に、唯を思い出す…



唯は今年度、高校卒業のはずだ。

でも、辞めてしまった私の所に話は流れて来ない。



唯の兄は、就職した所を辞めて…

祖父母の所に戻っていたけど

新しい就職先を見つけて頑張っていた。

妹が大学に行きたいなら、自分は応援したいと言っていたそうだ。



どうか、あんな苦しい想いをした兄妹に

幸せが訪れますように…

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