君を助けるための石

秋風 爽籟

文字の大きさ
上 下
21 / 23

21話 島根県鹿足郡の神社

しおりを挟む
鈴が倒れて5日目 10時



尊は、病室に戻った後で…ウトウトしてしまった。

気が付くと…持っていた石が無い…



―――あれ?俺、石を持っていたはずなのに…



ポケットを見ても、鈴の布団の中にも無い…



―――あの石が無くなったら…鈴を助けられない…



尊は焦った…



ふと、ベットの下を覗き込むと…

子どもと目が合った…

5歳くらいの男の子だ。



「あれ?君はここで何をしているの?」



「隠れてる…」



その子の手を見ると…石を握りしめている…



「ボク、その石はオジサンの大事な石なんだ。返してくれるかな?」



「あっ、ごめんなさい。オジサンが落としたから…」



「拾ってくれたんだね。ありがとう」



そう言って手を伸ばすと、石を返してくれた。



「なんで、隠れてるの?」



「検査をするって言われたから…逃げて来た」



「そうか…検査は嫌だよね…」



「オジサンも入院していたことがあるから、分かるよ。でも、オジサンが良くなって退院できたのも検査をしたからなんだよ」



「そうなんだ…」





突然、ノックの音とともに看護師さんが慌てた様子で入って来た。



「あっ、翔くんここにいたんだね。病室に帰ってお話をしよう?」



「うん、わかった…」



「ごめんなさいね…ありがとうございました」



「オジサン、さよなら」



「翔君、またね」



―――危なかった~。石を無くしたら大変だ…

―――気を付けないとな…



次の神社は、何処かな…

アプリを開いて、スワイプするけど…

なかなか神社がない…



4年前は、滝に行くのにハマっていたから滝の写真ばかりだな…



あっ、あったあった…

4年前の5月だ…



ここは、尊が自分用に新しい車を買った時に行ったんだ…

軽自動車は、鈴が通勤用に使っているから

バイクを売った代わりにスポーツカーを買ったんだ…

でも、展望台や滝は狭い道が多いから、車高の低いこの車では行かない。



それで、今日は観光地と決めて…鈴と出かけたんだった。



津和野の街並みを見て回って…

その後で、この神社に行ったんだ。



さて、行ってみるか…



すると…

そこには、朱色の明るい建物が見えた。

朱色の鳥居をくぐって階段を上る…



ここは、津和野城の城山の一角に位置し、時刻を知らせる太鼓が鳴り響いた谷間であったことから名前がついたようだ。

現在では、日本五大稲成一社に数えられているらしい。



すごい神社だったんだ…



御祭神は、宇迦之御魂神うがのみたまのかみ伊弉冉尊いざなみのみこと

願望成就の神様として崇められているそうだ。



鈴は、子どもの事を願ったかもしれないな…



まずは、本殿に行ってみよう。

でも、人が多いな…

人がいない方に行って石を置いてみよう。

尊は、石を置いてみたが…石は変化しない…

隣の建物にも石を置いてみたが…石は光らない…



隙を見て、本殿にも石を置いてみた…

石は、やはり光らなかった…



ここでもないのか…

尊は、戻るしかなかった…



「鈴、またダメだったよ…ごめんな…」



そう、話し掛けても鈴は答えない…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

すれ違ってしまった恋~期限付きだけど…やり直します~

秋風 爽籟
恋愛
楓は、死んだはずだった… でも、1年間の期限付きで戻れると聞いて… 剣と付き合った、中学2年に戻ることにした… すれ違ってしまった恋の続編です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...