もう一度あなたに会うために

秋風 爽籟

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後編 あの人と会ってから

【46話】相続放棄

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兄は、後妻さんの話をした時に…

実は…と語りだした。

兄は、父が入院した日に

私が父に会いに行った後に病院に行った。

その時に、父が…

「後妻さんに、お金をやりたくない」と言ったそうだ。

父への態度がよっぽど酷かったのかもしれないと…思ったけど

最後まで見て貰ったし…と思っていたと話した。


兄は、父が元気な頃から

内緒で父に度々、お金を借りに行っていた。

それは聞いていたが…

だから、父は生命保険の受取を兄から私に変更したのだ。


それと、兄は姉に言われて中古の家を買うと言い出した。

それで、家を探して買おうとしたが…

兄は自己破産しているから兄の名義では買えなかった。

それで、兄は甥っ子の名義で買うことにして

父に保証人になって欲しいと頼み、父は連帯保証人になっていた。


私は、無いとは思うけど…

兄も甥っ子も払えなくなって保証人が亡くなっていたら

相続人の所に来るかもしれない。

私は、生命保険は貰っているし…

遺産は要らないと思った。

だから、相続放棄をすることにした。


あの人のお父さんの時にお世話になった

司法書士事務所に頼んだ。


だから、相続は後妻さんと兄で二分の一ということになった。


兄は、後妻さんにそれを告げて

マンションもすぐ売れるか分からないけど

マンションを売って現金と合わせて二分の一にするか

現金かマンションか、どちらかを選ぶのがいいか

決めて欲しいと提案した。


その時に、後妻さんに香典を返して欲しいと言ったら

後妻さんは、「銀行に入れたから今は無い」と言った。

私は「香典返しの手続きをして、もうお金も払ったから

今度、お金を出しておいて下さい」と頼んだ。

父は、定年退職した時に金のネックレスを買っていた。

兄が、後妻さんに知らないかと聞いたけど

後妻さんは知らないと…

本当に無かったのかは定かじゃないけど…


後妻さんは父の服等、早々に売りに行って処分していた。

この人は、本当に冷たい人だな…


私は父から、墓が骨壺でいっぱいだから

保険金で墓を広くして欲しいと頼まれていたから

墓石屋さんに頼んで広くして貰った。


父が亡くなって1年近くなって…

ようやく、後妻さんから

「私は、マンションを貰うことにした」

と連絡があった。


兄は、書類を作成して

後妻さんと書類を交わした。

父の荷物は、兄がトラックで来て運ぶと言ったら

後妻さんは、「仏壇も持って行って欲しい」と言った。

これにも驚いたが…

運ぶ当日…作業していたら

「遺影も持っていって」と言った。

どこまで、酷い人なんだろうと…

私も兄も驚いた…

その時に、香典をやっと返してくれた。

私は、父のカメラを貰った…


1周忌は、後妻さんも呼んだが…

その後の会食には出ず、お寺だけで帰ると帰って行った。


兄とは、現金は今後のお寺の費用に使うと

約束したけれど…

すぐ、他の事に使ってしまったのかもしれない…


こうして、父の遺産相続の決着は着いた。


あの人は

「父は幸せだったと思う。亡くなる時に、みんなに来て貰って

その中で死んでいくって、すごく幸せだと思うよ」

と、泣きながら言ってくれた。

再婚もして、家にも呼ぶことが出来て

安心して逝けたかな…

ただ…

今度うちのお風呂に入りたいと言っていた

父との約束は実現できなかった…


会いに行かなかった日に会いに行っただけでは

足りない…

どう頑張ったとしても…

どんなに人生をやり直したとしても…

人が亡くなったら後悔するもんなんだな…


しかも、出来事を変えてしまったら

影響が出てしまう…

それはハッキリと分かった。
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