もう一度あなたに会うために

秋風 爽籟

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後編 あの人と会ってから

【42話】あの人のお父さん

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あの人のお母さんは

男を作って出て行ったこともあって

お父さんと二人で生活していたこともある。

でも、両親が離婚してから

親戚の家に預けられて

そこで虐待されたりした…

その後で、お母さんの再婚相手の人と

一緒に住んだそうだ。

お父さんは、離婚後

大手の会社を辞めて…

お母さんの再婚相手の仕事に来て

あの人も一緒に働いたこともあるという…

複雑な環境だったと…あの人は言っていた。


お父さんが居なくなった後

お母さんの再婚相手が

病気になって、病院代を稼ぐために

あの人は、昼夜働いたり…苦労したそうだ。

結局、そのお義父さんは亡くなった…


お母さんは、その後

また再婚して、家を出た。


あの人は、そんなお母さんのことを

大嫌いだと言って、あまり関わらないようにしていた。


それでも、家を買う時には

お母さんに頼んで、頭金を出して貰った。

私は、その時に

初めて、お義母さんに会った。

結婚にも賛成してくれて

私は、そんなに悪い印象を持たなかった。


お父さんとは、大人になって

一度、すれ違った程度しか

会ったことは無かったそうだ…


私達が半同棲になっても

あの人は毎日、自分の家に寄っていた。

その時に、留守番電話に

同じ番号が、何回も入っていた。

何日も続いたが、やっと留守電メッセージが入っていて

それを聞いて驚いた。


電話は警察からだった…

お父さんが、孤独死していたそうだ。

それで、息子のあの人に何度も連絡していた。


あの人は、警察署に出向いた。

お父さんは、家で孤独死をしていて

大家さんが、家賃が入らなくなったので

見に行ったら、亡くなっていた。

一月くらい経っていたそう…


それから、あの人は

マンションにも行った。

その時に、初めてお父さんが

そこに住んでいたことを知った。

お父さんの所有物を見ると

病気になっていたようで…

それが原因で亡くなったと思われる。


葬儀は「直葬」というのにした。

警察署から直接、火葬場に行って貰った。

その時には、あの人の息子も一緒に行った。


私は、その時はまだ再婚していなかったし

息子さんにも会ったことが無かったから

行かなかった…

遺骨は、家に持って帰った。


お父さんは、定年退職した後

年金生活をしていたようだが…

病気になって、年金でも足らなくなって

最後には病院代も払えなくなって

病院に行けなかったのではないかと

あの人から聞いた。

他にも分からない借金があったら

いけないからと…

司法書士事務所に頼んで、相続放棄もした。


あの人は、お父さんと

連絡を取っていればよかったと後悔した。


だから、お母さんには

家を買った後に

遊びに来て貰ったりして

連絡を取るようにしていた…


私が、知っていることは…

その後、お母さんと連絡が取れなくなる。

携帯電話に電話をしても出ない。

今の再婚相手とは、あまり面識もないようで

連絡が出来ないでいた。

お母さんも病気だったから、

いつどうなるか分からない…

何かあっても、再婚相手の人から

連絡が来るか分からないと言っていた。

そのまま、連絡が取れないまま

何年も経過していた…

これが、私が57歳までの記憶…


あの人は、複雑な幼少期を過ごして来て

心の底に闇を抱えている。

それが、たまに爆発するのか…

鬱なのか…

たまに冷酷な人になる…

それでも、普段が優しいから

私は、嫌いになれなかった…

ある意味、DVされている人みたいな感覚なのかもしれない…


お父さんの経験が…

先で役立つことになるのを

1度目の人生で私が知るのは、まだ先の話…
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