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5話-事件の犯人-
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赤いペンキは黒板に”塗られた”というより”かけられた”の方が正しい。明らかにバケツか何かで思いっきりかけている。教室に突然として現れた存在感の強い赤。生徒たちは、困惑するよりも、ちょっとした非日常に気が高揚している者が多いようだ。ざわざわしている。女子が教室で体育の着替えを終わらせてから、体育が終わり、また教室に戻ってくるまでの時間に誰かがやった。
「早く着替えないと、男子が来るよ」
凛の声に異常な事態にひかれていた意識を取り戻す。はやく着替えなければならないし、何より誰がやったかなんて咲夜に聞けばわかる。
「そうだね、早く着替えよう。」
着替えを済ませた私と凛は咲夜を連れて教室を出て中庭の見える廊下の壁に寄り掛かった。まず私は咲夜に聞いた。ずっと心配だったこと。
「変な人に何かされてない?」
「大丈夫よ、なにもされてないわ。」
その声に安堵の息を漏らす。咲夜になにもされていないのならよかった。そして私は次の質問をしようとしたの だが、その前に咲夜がその回答を口にした。
「委員長よ。このクラスの。」
「え?委員長って…」
「なに、咲夜とちーちゃん、もしかして、あのペンキの話してる?」
咲夜の話に集中しすぎて凛を置いてけぼりにしていた。
「あぁごめんごめん。そうだよ、その話をしてる。で、それをやったのが」
「意外なことに島さんね…」
凛は小声でその名前を口にした。事実、意外だった。このクラスの委員長、島 成実はそんなことをするような人間とは思ってなかったからだ。綺麗な人だし、人当たりもいい。クラスメイトにも慕われている。私もたまに話すことがある。少なくとも私の知る限り、黒板にペンキをぶちまけるような人ではない。 何か理由があっての事だろう。私達は事の真相を考えてはみるが、やはり考えてもわからなかった。そしてだんだんと着替えの終わった男子たちも戻ってきて、より一層騒がしくなる。
「みんな!これ何の騒ぎ?」
男子たちが戻ってきたということは、龍も戻ってきたということだ。龍も騒ぎに気付き私たちに問いかける。私たちも知っていることの全てを龍に話した。龍もこの事件の実行者に驚いたが。冷静に質問してきた。
「島さんのこと、クラスのみんなや先生に言うの?」
「ううん。言う気は無いよ。島さんだって人に説明する根拠もないし、なにか特別な理由があったら嫌だからね。」
動機も根拠も証拠もなにもない。教室に置いてあった人形が見ていたからなんて信じてくれる人は、まずいない。そう考えると、宮本兄妹は私の事を信じてくれているのは感謝しかない。
チャイムが鳴る。2限の合図だ。だが、授業前に席についている人はほとんどいない。2限の数学の先生はいつも授業が遅れてから来る。今日もその例外ではなかった。授業が始まっても廊下にいる生徒、教室でざわざわしている生徒。遅れてきた先生も何かが起こっていることに気付いた。先生も困惑している。犯人捜しをするべきなのか、授業をするべきなのか考えているのだろう。
「授業どうなるんだろうね。」
「中止ってことはないけど少しスタートが遅れるんじゃない?」
「じゃぁラッキーでしょ。数学嫌いだし」
「「ちーちゃん数学の成績ひどいもんね」」
「千夜…」
「早く着替えないと、男子が来るよ」
凛の声に異常な事態にひかれていた意識を取り戻す。はやく着替えなければならないし、何より誰がやったかなんて咲夜に聞けばわかる。
「そうだね、早く着替えよう。」
着替えを済ませた私と凛は咲夜を連れて教室を出て中庭の見える廊下の壁に寄り掛かった。まず私は咲夜に聞いた。ずっと心配だったこと。
「変な人に何かされてない?」
「大丈夫よ、なにもされてないわ。」
その声に安堵の息を漏らす。咲夜になにもされていないのならよかった。そして私は次の質問をしようとしたの だが、その前に咲夜がその回答を口にした。
「委員長よ。このクラスの。」
「え?委員長って…」
「なに、咲夜とちーちゃん、もしかして、あのペンキの話してる?」
咲夜の話に集中しすぎて凛を置いてけぼりにしていた。
「あぁごめんごめん。そうだよ、その話をしてる。で、それをやったのが」
「意外なことに島さんね…」
凛は小声でその名前を口にした。事実、意外だった。このクラスの委員長、島 成実はそんなことをするような人間とは思ってなかったからだ。綺麗な人だし、人当たりもいい。クラスメイトにも慕われている。私もたまに話すことがある。少なくとも私の知る限り、黒板にペンキをぶちまけるような人ではない。 何か理由があっての事だろう。私達は事の真相を考えてはみるが、やはり考えてもわからなかった。そしてだんだんと着替えの終わった男子たちも戻ってきて、より一層騒がしくなる。
「みんな!これ何の騒ぎ?」
男子たちが戻ってきたということは、龍も戻ってきたということだ。龍も騒ぎに気付き私たちに問いかける。私たちも知っていることの全てを龍に話した。龍もこの事件の実行者に驚いたが。冷静に質問してきた。
「島さんのこと、クラスのみんなや先生に言うの?」
「ううん。言う気は無いよ。島さんだって人に説明する根拠もないし、なにか特別な理由があったら嫌だからね。」
動機も根拠も証拠もなにもない。教室に置いてあった人形が見ていたからなんて信じてくれる人は、まずいない。そう考えると、宮本兄妹は私の事を信じてくれているのは感謝しかない。
チャイムが鳴る。2限の合図だ。だが、授業前に席についている人はほとんどいない。2限の数学の先生はいつも授業が遅れてから来る。今日もその例外ではなかった。授業が始まっても廊下にいる生徒、教室でざわざわしている生徒。遅れてきた先生も何かが起こっていることに気付いた。先生も困惑している。犯人捜しをするべきなのか、授業をするべきなのか考えているのだろう。
「授業どうなるんだろうね。」
「中止ってことはないけど少しスタートが遅れるんじゃない?」
「じゃぁラッキーでしょ。数学嫌いだし」
「「ちーちゃん数学の成績ひどいもんね」」
「千夜…」
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