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番外編 響さん、責任取って 1
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「ねえ、伊織、今度の土曜日、デートしようか?」
響さんの家で食事を済ませてテレビドラマを見ていたらCMに入ったタイミングでそう声をかけられた。
「デ、デート!?」
私はソファーの隣に座る響さんを見上げる。
響さんは私の腰に腕を回すと私を引き寄せた。
「そう、俺たちこうしてしょっちゅう会ってるけど二人で遊びに行ったことはないだろ?」
た、確かに……。
私は毎日の様にこの家に入り浸ってるけど、デートらしいデートはしたことないかも?
デートか……嬉しいっ!
「どこに行くんですか?」
「うん? 映画……? ちょっと見たいものがあって……」
響さんは何だか歯切れが悪い。
「何の映画ですか?」
「それは……秘密」
秘密って……。
正直、映画の内容なんて二人で出かけられるなら何でもいいけど。
アクション映画? それともヒューマンドラマ? まさか恋愛映画かな……?
そういえば、映画鑑賞って学生の頃はデートの定番だった。
二人で並んで映画を見て、そっと手をつないだりしちゃってさ。
高校生の頃なんか、もう映画の内容はそっちのけですっごくドキドキしたことを覚えている。
まあ、大人になった今は毎日並んでテレビを見てるし、そういう新鮮な気持ちはどうしても薄れちゃうよね……。
それでも……二人で出かけられるって事が嬉しいけど!
「まあ、楽しみにしてて」
響さんは優しいまなざしで私を見下ろすとニコッと笑った。
うわ……相変わらず、カッコイイ……。
私達が正式にお付き合いを始めてから三ヶ月がたった今も……。
こ、この整い過ぎた顔に慣れないよぉ。
オマケに残念なイケメンと言われていたころと違って、最近は身なりにも気をつかっているからイケメン度合いが急激にアップしていて参る。
私は照れ臭くてそっと目をそらした。
「……初めてのデートですね。嬉しい……あ」
CMが開けてドラマの続きが始まった。
一話完結の刑事ドラマ。
響さんは入院中にミステリー小説にどはまりして、退院してからはドラマも見るようになった。
物語はもう佳境を迎えていてそろそろ犯人が分かるところだ。
私は響さんから目をそらしてテレビの方を向いた。
……助かった!
そう思ったんだけど……。
「伊織……」
すっと隣から腕が伸びてきて私の顎が捕まった。
「ん、響さん……?」
顎に添えられた手が響さんの方を向くよう私に促す。
ちょ、ちょっと、これじゃ、テレビが見られないよ……。
「響さん、犯人が……」
響さんの顔がゆっくり近づいて来て唇が重なった。
「大丈夫、この話は原作を読んでるから……」
そ、そんなぁ……。
響さんの柔らかい唇がそっと私の上唇をついばむ。
「んんっ」
ちゅっ、とかわいい音をたてて響さんは一瞬離れた。
「伊織……好きだ……」
そうひと言呟くとまたキスが降ってくる。
甘い口づけは次第に深まって私はおもわず響さんの背に手をまわした。
「ん、んんっ……はぁっ……」
「犯人は……あとでゆっくり教えてやるよ……」
も、もう……!
でも。
響さんがくれるキスはとても優しくて気持ちが良くて。
「あ、ふぁっ……はぁ……や、約束ですよ……」
とても嫌だなんて言えない……。
「ああ……約束する……だから今は……」
土曜日の午後、響さんが連れて来てくれたのは郊外のショッピングモールだった。
映画まで時間がないということですぐに三階のシネコンに向かうと沢山の人でごった返している。
うわ、間に合うのかなぁ?
ちょっぴり不安な気持ちでチケット売り場の列に並ぼうとしていたら響さんに手を引かれた。
「チケットはもうネットで購入済みだから……俺たちはこっち」
響さんはそう言うと自動発券機にスマホをかざした。
すぐにチケットが二枚発券される。
「もう入場できるみたいだな……急ごう」
電光掲示板で素早く確認して入り口の列に並ぶ。
響さんがチケットをまとめて渡すと映画館のスタッフさんは半券をもぎりながら説明してくれた。
「突き当たりを右折して一番奥の七番スクリーンです」
そう言って何かを手渡される。
「ありがとう」
響さんは笑顔でお礼を言うとすたすた歩きだした。
さっきから手をつないだままの私も慌ててついてゆく。
一番奥の七番スクリーン……?
ほとんどの人は入ってすぐ左の一番スクリーンに向かうお客さんのようだ。
「……伊織、はいコレ」
響さんは歩を緩めずにグレーのサングラスを差し出した。
あ!
コレってアレだよね!
3D眼鏡!!
「え? 今から見る映画って3Dなんですか?」
「いや」
通路の角を右に曲がると一番奥のスクリーンの入り口にスタッフさんが立っていて、
「手荷物はロッカーに預けてくださーい」
と声をかけている。
「今から見るのは……3D4DXだよ」
3D……4DX……?
って、何!?
響さんの家で食事を済ませてテレビドラマを見ていたらCMに入ったタイミングでそう声をかけられた。
「デ、デート!?」
私はソファーの隣に座る響さんを見上げる。
響さんは私の腰に腕を回すと私を引き寄せた。
「そう、俺たちこうしてしょっちゅう会ってるけど二人で遊びに行ったことはないだろ?」
た、確かに……。
私は毎日の様にこの家に入り浸ってるけど、デートらしいデートはしたことないかも?
デートか……嬉しいっ!
「どこに行くんですか?」
「うん? 映画……? ちょっと見たいものがあって……」
響さんは何だか歯切れが悪い。
「何の映画ですか?」
「それは……秘密」
秘密って……。
正直、映画の内容なんて二人で出かけられるなら何でもいいけど。
アクション映画? それともヒューマンドラマ? まさか恋愛映画かな……?
そういえば、映画鑑賞って学生の頃はデートの定番だった。
二人で並んで映画を見て、そっと手をつないだりしちゃってさ。
高校生の頃なんか、もう映画の内容はそっちのけですっごくドキドキしたことを覚えている。
まあ、大人になった今は毎日並んでテレビを見てるし、そういう新鮮な気持ちはどうしても薄れちゃうよね……。
それでも……二人で出かけられるって事が嬉しいけど!
「まあ、楽しみにしてて」
響さんは優しいまなざしで私を見下ろすとニコッと笑った。
うわ……相変わらず、カッコイイ……。
私達が正式にお付き合いを始めてから三ヶ月がたった今も……。
こ、この整い過ぎた顔に慣れないよぉ。
オマケに残念なイケメンと言われていたころと違って、最近は身なりにも気をつかっているからイケメン度合いが急激にアップしていて参る。
私は照れ臭くてそっと目をそらした。
「……初めてのデートですね。嬉しい……あ」
CMが開けてドラマの続きが始まった。
一話完結の刑事ドラマ。
響さんは入院中にミステリー小説にどはまりして、退院してからはドラマも見るようになった。
物語はもう佳境を迎えていてそろそろ犯人が分かるところだ。
私は響さんから目をそらしてテレビの方を向いた。
……助かった!
そう思ったんだけど……。
「伊織……」
すっと隣から腕が伸びてきて私の顎が捕まった。
「ん、響さん……?」
顎に添えられた手が響さんの方を向くよう私に促す。
ちょ、ちょっと、これじゃ、テレビが見られないよ……。
「響さん、犯人が……」
響さんの顔がゆっくり近づいて来て唇が重なった。
「大丈夫、この話は原作を読んでるから……」
そ、そんなぁ……。
響さんの柔らかい唇がそっと私の上唇をついばむ。
「んんっ」
ちゅっ、とかわいい音をたてて響さんは一瞬離れた。
「伊織……好きだ……」
そうひと言呟くとまたキスが降ってくる。
甘い口づけは次第に深まって私はおもわず響さんの背に手をまわした。
「ん、んんっ……はぁっ……」
「犯人は……あとでゆっくり教えてやるよ……」
も、もう……!
でも。
響さんがくれるキスはとても優しくて気持ちが良くて。
「あ、ふぁっ……はぁ……や、約束ですよ……」
とても嫌だなんて言えない……。
「ああ……約束する……だから今は……」
土曜日の午後、響さんが連れて来てくれたのは郊外のショッピングモールだった。
映画まで時間がないということですぐに三階のシネコンに向かうと沢山の人でごった返している。
うわ、間に合うのかなぁ?
ちょっぴり不安な気持ちでチケット売り場の列に並ぼうとしていたら響さんに手を引かれた。
「チケットはもうネットで購入済みだから……俺たちはこっち」
響さんはそう言うと自動発券機にスマホをかざした。
すぐにチケットが二枚発券される。
「もう入場できるみたいだな……急ごう」
電光掲示板で素早く確認して入り口の列に並ぶ。
響さんがチケットをまとめて渡すと映画館のスタッフさんは半券をもぎりながら説明してくれた。
「突き当たりを右折して一番奥の七番スクリーンです」
そう言って何かを手渡される。
「ありがとう」
響さんは笑顔でお礼を言うとすたすた歩きだした。
さっきから手をつないだままの私も慌ててついてゆく。
一番奥の七番スクリーン……?
ほとんどの人は入ってすぐ左の一番スクリーンに向かうお客さんのようだ。
「……伊織、はいコレ」
響さんは歩を緩めずにグレーのサングラスを差し出した。
あ!
コレってアレだよね!
3D眼鏡!!
「え? 今から見る映画って3Dなんですか?」
「いや」
通路の角を右に曲がると一番奥のスクリーンの入り口にスタッフさんが立っていて、
「手荷物はロッカーに預けてくださーい」
と声をかけている。
「今から見るのは……3D4DXだよ」
3D……4DX……?
って、何!?
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