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2章
5話 うん……もっと……
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で、でででで、溺愛って……。
私の顔に血が上るのが分かる。頬がすごく熱を持ってきた。
トシヤさんは真顔でなんてことを言うんだ。
ただでさえあまいマスクのイケメンで、今でも間近で顔を見るとドキドキするのにそんな言葉を囁かれたら……。
胸がキュンってなる。
呼吸が荒くなるほど胸が苦しい。
やっぱり……私はトシヤさんが好きだ。
トシヤさんのために別れた方がいいなんて言ってしまったけど、決して別れたいと思っているわけじゃない。
……大切にしたいのに……トシヤさんを傷つけてしまった。
ごめんなさい、トシヤさん。
そう、謝りたいけど……。
あんなことを真剣に言われたら、は、恥ずかしい……。
私は無言でトシヤさんの胸に頬をうずめた。
今はとても顔を見られる状態じゃない。
だって、お風呂上がりの浴衣姿のトシヤさんのかっこよさはいつもの二割増しなんだ。
……なんて、馬鹿なことを考えてる場合じゃない、気持ちを落ち着かせないと。
……それにしても。
でででで、溺愛って……。
破壊力抜群の告白に私の心はもう舞い上がってしまう。
付き合い始めてから毎日、冗談の様に口説いてくれていたけど……そんなに私の事を想ってくれていたんだ。
それなのにあんなこと軽々しく口にしてしまって、本当にごめんなさい。
私が浴衣の胸元を軽く握ると、トシヤさんは優しく背中をなでてくれた。
しばらくただ抱き合っていたら次第に気持ちが落ち着いてきた。
私はそっとトシヤさんの顔を見上げた。
「ん?」
トシヤさんはふっとほほ笑みを返してくれる。
ああ、すごく、安心する。
焦らなくていいって言ってくれて嬉しかった。
今はまだ考えられないけど……いつかトシヤさんと家族になれたらいいな。
私は素直にそう思えた。
「葵ちゃん……葵ちゃんは、今ね、ちょっぴり疲れちゃってるんだよ。だからそんなことを考えてしまう。……せっかく旅行にきたんだからリフレッシュしよ。仕事を頑張るためにも、休む時にはしっかり休むことが大切だよ。これが仕事の先輩でもある僕からのアドバイス……」
トシヤさんの形のいい唇がゆっくりと近づいて優しく私の口をおおった。
「ん……ト……シヤ、さ、ん……」
キスがすごく優しくて気持ちいい。
「今夜は美味しいものをお腹いっぱい食べて、ゆっくり温泉につかって……夜は僕の腕の中で眠りなさい」
「うん……トシヤさん……大好き……」
私はトシヤさんの首に腕を回してギューッと抱き着いた。
好き、やっぱり、大好き! トシヤさん!
再び見つめあっていると、トシヤさんの顔がまた近づいてチュッと音を立てて軽く唇に触れた。その後、さらに深くなる口づけに戸惑う。
ん? あれ?
「ふ……んあ……トシ、ヤさ、ん……そろそろ、夕食の時間、ですよ」
「分かってる、けど、もう少しだけ……」
頭の後ろを手のひらで押さえられて逃れられない。
頭の芯がくらくらするような快感におそわれて私はトシヤさんの浴衣に縋りついた。
どうしよう、背筋がゾクゾクする。
「あ……や……ダメですって……」
「……ごめん……でも、止められない……」
トシヤさんがくれる快感にあらがえない。
……私も。
気持ちが良すぎて……止まらない。
ダメだってトシヤさん。
指定された夕食の時間に遅れちゃうよ……。
だけど……。
「……うん……もっと……」
私もついキスをねだってしまった。
結局私たちは時間ギリギリまで唇を重ねていた……。
「あ? 葵ちゃん、納まるとこに納まった感じ?」
「ちいちゃん……ご心配をおかけしました」
美味しいバイキングでお腹がいっぱいになって部屋でくつろいでいたら、ちいちゃんが蓮君を抱いて遊びに来てくれた。
ちいちゃんにしがみ付いている蓮君が……。
「れ、蓮君が大きくなっている!」
「そりゃ、そうだよ~。蓮、もうすぐ一歳だもん、何歩かは歩けるんだよ」
梅雨に会った時に六ヶ月の赤ちゃんだった蓮君は畳の上におろされるとすぐにテーブルにつかまって立ち上がった。
蓮君が、もう寝ているだけの赤ちゃんじゃない!
ふっくらしたほっぺにクリッとした瞳がかわいい男の子に成長していた。
もうっ、すごくカワイイ!
やっぱり、ちいちゃんに、似ている。
「え? すごーい! 蓮君! たっちが上手だね!」
「子供の成長って早いな」
トシヤさんも目を細めて喜んでいる。
「蓮君、抱っこさせてー!」
ぷにぷにのほっぺを触りたくて蓮君に駆け寄ったらすごく早いハイハイでちいちゃんの腕の中に戻ってしまった。お尻をふりふりしながら必死に進むさまはとっても愛らしいんだけど……。
「ゴメン、葵ちゃん、蓮、最近人見知りなんだよね、家族や保育園の先生以外には愛想ないの……」
「そっか……うー、蓮くぅん……」
抱っこしたかったよ!
がっくり落ち込む私に、トシヤさんが
「これも成長だから……ちゃんと人を見分けられるようになったって事だよ」
と慰めてくれた。
そりゃ、成長だと考えたら嬉しいけど……葵先生はちょっぴり淋しいよ、蓮君。
「ね、ところでさ、ちいちゃんは今日誰と旅行に来てるの? さっきお昼寝中の蓮君を部屋に置いてきてたでしょ?」
私はふと気になっていたことを聞いた。
サプライズでちいちゃんがこのホテルを予約してくれたそうだけど、まだ全然詳しい話をしていなかった。
「えっと、それは……その……」
だから、驚いてしまったんだ。
あんまり、ちいちゃんが顔を真っ赤にさせてしどろもどろになったから。
さっきのトシヤさんに対する塩対応が嘘だったみたいに乙女な反応だ。
これって……なにかありそうじゃない?
「私の……こ、こ、こ……」
「こ?」
も、もしかして?
私はトシヤさんと顔を見合わせた。
そっか、ちいちゃん、もしかして!
「恋人!?」
「こ、恋人って!? 違う! 違う!」
ちいちゃんは私の問いを首をブンブン振って否定した。
「違うよ! 婚約者……なの」
「こ、こんやくしゃぁぁああああ!?」
って、ちいちゃん! 聞いてないよーーーーーー!
私の顔に血が上るのが分かる。頬がすごく熱を持ってきた。
トシヤさんは真顔でなんてことを言うんだ。
ただでさえあまいマスクのイケメンで、今でも間近で顔を見るとドキドキするのにそんな言葉を囁かれたら……。
胸がキュンってなる。
呼吸が荒くなるほど胸が苦しい。
やっぱり……私はトシヤさんが好きだ。
トシヤさんのために別れた方がいいなんて言ってしまったけど、決して別れたいと思っているわけじゃない。
……大切にしたいのに……トシヤさんを傷つけてしまった。
ごめんなさい、トシヤさん。
そう、謝りたいけど……。
あんなことを真剣に言われたら、は、恥ずかしい……。
私は無言でトシヤさんの胸に頬をうずめた。
今はとても顔を見られる状態じゃない。
だって、お風呂上がりの浴衣姿のトシヤさんのかっこよさはいつもの二割増しなんだ。
……なんて、馬鹿なことを考えてる場合じゃない、気持ちを落ち着かせないと。
……それにしても。
でででで、溺愛って……。
破壊力抜群の告白に私の心はもう舞い上がってしまう。
付き合い始めてから毎日、冗談の様に口説いてくれていたけど……そんなに私の事を想ってくれていたんだ。
それなのにあんなこと軽々しく口にしてしまって、本当にごめんなさい。
私が浴衣の胸元を軽く握ると、トシヤさんは優しく背中をなでてくれた。
しばらくただ抱き合っていたら次第に気持ちが落ち着いてきた。
私はそっとトシヤさんの顔を見上げた。
「ん?」
トシヤさんはふっとほほ笑みを返してくれる。
ああ、すごく、安心する。
焦らなくていいって言ってくれて嬉しかった。
今はまだ考えられないけど……いつかトシヤさんと家族になれたらいいな。
私は素直にそう思えた。
「葵ちゃん……葵ちゃんは、今ね、ちょっぴり疲れちゃってるんだよ。だからそんなことを考えてしまう。……せっかく旅行にきたんだからリフレッシュしよ。仕事を頑張るためにも、休む時にはしっかり休むことが大切だよ。これが仕事の先輩でもある僕からのアドバイス……」
トシヤさんの形のいい唇がゆっくりと近づいて優しく私の口をおおった。
「ん……ト……シヤ、さ、ん……」
キスがすごく優しくて気持ちいい。
「今夜は美味しいものをお腹いっぱい食べて、ゆっくり温泉につかって……夜は僕の腕の中で眠りなさい」
「うん……トシヤさん……大好き……」
私はトシヤさんの首に腕を回してギューッと抱き着いた。
好き、やっぱり、大好き! トシヤさん!
再び見つめあっていると、トシヤさんの顔がまた近づいてチュッと音を立てて軽く唇に触れた。その後、さらに深くなる口づけに戸惑う。
ん? あれ?
「ふ……んあ……トシ、ヤさ、ん……そろそろ、夕食の時間、ですよ」
「分かってる、けど、もう少しだけ……」
頭の後ろを手のひらで押さえられて逃れられない。
頭の芯がくらくらするような快感におそわれて私はトシヤさんの浴衣に縋りついた。
どうしよう、背筋がゾクゾクする。
「あ……や……ダメですって……」
「……ごめん……でも、止められない……」
トシヤさんがくれる快感にあらがえない。
……私も。
気持ちが良すぎて……止まらない。
ダメだってトシヤさん。
指定された夕食の時間に遅れちゃうよ……。
だけど……。
「……うん……もっと……」
私もついキスをねだってしまった。
結局私たちは時間ギリギリまで唇を重ねていた……。
「あ? 葵ちゃん、納まるとこに納まった感じ?」
「ちいちゃん……ご心配をおかけしました」
美味しいバイキングでお腹がいっぱいになって部屋でくつろいでいたら、ちいちゃんが蓮君を抱いて遊びに来てくれた。
ちいちゃんにしがみ付いている蓮君が……。
「れ、蓮君が大きくなっている!」
「そりゃ、そうだよ~。蓮、もうすぐ一歳だもん、何歩かは歩けるんだよ」
梅雨に会った時に六ヶ月の赤ちゃんだった蓮君は畳の上におろされるとすぐにテーブルにつかまって立ち上がった。
蓮君が、もう寝ているだけの赤ちゃんじゃない!
ふっくらしたほっぺにクリッとした瞳がかわいい男の子に成長していた。
もうっ、すごくカワイイ!
やっぱり、ちいちゃんに、似ている。
「え? すごーい! 蓮君! たっちが上手だね!」
「子供の成長って早いな」
トシヤさんも目を細めて喜んでいる。
「蓮君、抱っこさせてー!」
ぷにぷにのほっぺを触りたくて蓮君に駆け寄ったらすごく早いハイハイでちいちゃんの腕の中に戻ってしまった。お尻をふりふりしながら必死に進むさまはとっても愛らしいんだけど……。
「ゴメン、葵ちゃん、蓮、最近人見知りなんだよね、家族や保育園の先生以外には愛想ないの……」
「そっか……うー、蓮くぅん……」
抱っこしたかったよ!
がっくり落ち込む私に、トシヤさんが
「これも成長だから……ちゃんと人を見分けられるようになったって事だよ」
と慰めてくれた。
そりゃ、成長だと考えたら嬉しいけど……葵先生はちょっぴり淋しいよ、蓮君。
「ね、ところでさ、ちいちゃんは今日誰と旅行に来てるの? さっきお昼寝中の蓮君を部屋に置いてきてたでしょ?」
私はふと気になっていたことを聞いた。
サプライズでちいちゃんがこのホテルを予約してくれたそうだけど、まだ全然詳しい話をしていなかった。
「えっと、それは……その……」
だから、驚いてしまったんだ。
あんまり、ちいちゃんが顔を真っ赤にさせてしどろもどろになったから。
さっきのトシヤさんに対する塩対応が嘘だったみたいに乙女な反応だ。
これって……なにかありそうじゃない?
「私の……こ、こ、こ……」
「こ?」
も、もしかして?
私はトシヤさんと顔を見合わせた。
そっか、ちいちゃん、もしかして!
「恋人!?」
「こ、恋人って!? 違う! 違う!」
ちいちゃんは私の問いを首をブンブン振って否定した。
「違うよ! 婚約者……なの」
「こ、こんやくしゃぁぁああああ!?」
って、ちいちゃん! 聞いてないよーーーーーー!
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