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2章
6話 うぅぅ、胸がきゅんとする
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「あーあ、しっかし、俺の計画がボロボロだ。ホントはクリスマスにプロポーズをして正月に伯父さん伯母さんに挨拶しようと計画してたのに……」
遼太はそう言って天を仰いだ。
「ぜんぜん気が付かなくてごめん……」
そんな素敵な計画をたてているとは気づかずに思いっきり遼太を疑ってしまった。
「いやいや、気づかれたらそもそもサプライズは失敗だし……。いいんだよ、おれの独りよがりだった。これからはなんでも話すよ。二人でいっしょにしよう」
「うん」
えへへ、遼太の言葉が嬉しくて笑いかけたけど……。
遼太は瞳を伏せたまま、私の左手をそっとなぞった。
「ん……」
薬指に何度も優しく触れられて背筋がぞくぞくする。
「あ……リョータ……」
遼太はおもむろに私の手を持ち上げると甲に口づけ、舌を這わせた。
「は……ダメだって」
指先まで舌でたどられる。
「ダメ? リカ……」
ダメだよ。色っぽすぎる……。
遼太は私の手を握ったまま、
「じゃあ、こっちは……?」
と囁いて私の唇をふさいだ。
「ん……ふぁ……」
久しぶりの行為に心臓が高鳴るのを抑えられない。
胸がドキドキする。
「ん……リョータ……」
私は遼太の首に腕を回した。
触れるところすべてが気持ちいい……。
「おーい! 遼太―! 車を移動してくれー!」
一階の玄関から父の大きな声が聞こえた。
「え? お父さん帰って来た!」
「うわっ、やべ、俺すごい停め方してるかも……」
遼太は乱れた髪を手ぐしで素早く整えると、
「伯父さん、ゴメン!」
と言いながら階段を駆け下りた。
私が玄関の外に出るとちょうど、代行運転手が父の車を駐車場に停めたところだった。
父はほろ酔いのようだ。
遼太は自分の車を家の前に停めなおすと降りてきて父に話しかけた。
「伯父さん、明日お時間を頂けませんか?」
「ん? なんだ? かしこまって。話なら今聞くぞ」
「いえ……伯父さんが素面の時に話したいし。ちゃんとスーツで来たいので、改めて明日お伺いします」
遼太はそう言うと頭を下げた。父は驚いた様子でうなずいた。
「そ、そうか……」
「はい」
「そうか……」
父があんまり淋しそうにしていたから、私も少し淋しい気持ちになった……。
翌朝、遼太はスーツをビシッと着こなして両親に挨拶に来てくれた。
か、かっこいい……。
そしてちゃんと
「お父さん、お母さん、梨花さんと結婚させてください」
と頭を下げてくれた。
うぅぅ、胸がきゅんとする。
私、ホントに遼太と結婚するんだ。
「とりあえず、梨花を泣かさないって約束は守れよ」
父はそう言ったっきり、無言でお茶を飲んでいた。
そう言えば父母は一度も私たちの交際に口を出さなかった。私はキッチンで湯呑を洗っている母に聞いた。
「ねえ、私達いとこ同士で付き合っているのに、どうして何も言わなかったの?」
「そりゃ……ねえ」
母は困ったように微笑んだ。
「ん?」
「梨花が小さい頃から遼太の事を好きなのは分かっていたし……遼太もずっとそうだったでしょ? もう、二人は立派な大人だし、親は何も言わないわよ」
今思えば……物心ついた時には遼太の事が好きだった気がする。高校三年生の冬にその想いがダメになってからも……ずっと忘れられなかった。
……お正月に遼太が私の事を迎えに来てくれたから私たちはこれからずっと一緒に歩いて行ける。
その再会の後押しをしてくれたのはお母さんや叔母さんだ。
「お母さん……ありがとう。……本当にありがと……」
「梨花、遼太と幸せになるのよ」
うん、うん……。
私は泣きながら母が洗った湯呑を布巾で拭いた。
「おい、お袋……何で今日来るんだよ?」
遼太の機嫌が悪い。
インターフォンがなったから母が昼食に頼んだお寿司が来たのかと思ったら夜勤明けの叔母だったのだ。
「普通、こういう日は結婚相手の家に親は来ないもんだろ?」
「いいじゃない、そんな、かたい事言わなくても。ちょうど仕事が終わったのよ」
遼太の抗議も気にせずに叔母はリビングのコタツに座った。叔母は近所の大学病院で看護師をしている。
「ねえ、梨花ちゃん、ホントにいいの? 遼太みたいなメンドクサイ男と結婚して」
叔母さんがこんなことを言うから遼太の機嫌はますます悪くなってしまった……。
「あ、もちろん、叔母さんは嬉しいのよ、梨花ちゃん大歓迎! でも……遼太ってちょっとストーカー気質というかさ……。しつこいところがあるでしょ? 子供の頃から絶対に梨花ちゃんと結婚するって決めてたからねぇ、ごめんね、梨花ちゃん。もう逃げられないと思うから観念してね」
叔母さんがあまりに遼太の事をボロカスに言うもんだからお父さんは吹き出してしまった。
「お袋、勘弁してくれよ……」
遼太も諦めたようにうなだれた。
「えっと……叔母さん、じゃないお母さん、私、遼太さんがいいんです。これからもずっと一緒にいたいって思ってます。だから、これからも……よろしくお願いします」
私は両手を床について頭を下げた。
「こちらこそ、バカな息子ですが、末永くよろしくお願いします」
叔母さんもそう言って丁寧にお辞儀をしてくれた。
私の大好きな叔母さん、これからはお母さんになるんだ。
「お寿司来たから食べましょうか?」
そう母が声をかけてくれたから、私たちはそろってお寿司を食べた。
「今日は飲めるんだろ?」
「ええ、電車で来たので」
父と遼太は早速ビールで乾杯している。
それからは、結局どんちゃん騒ぎになって、私はまたこたつで寝てしまった……。
遼太はそう言って天を仰いだ。
「ぜんぜん気が付かなくてごめん……」
そんな素敵な計画をたてているとは気づかずに思いっきり遼太を疑ってしまった。
「いやいや、気づかれたらそもそもサプライズは失敗だし……。いいんだよ、おれの独りよがりだった。これからはなんでも話すよ。二人でいっしょにしよう」
「うん」
えへへ、遼太の言葉が嬉しくて笑いかけたけど……。
遼太は瞳を伏せたまま、私の左手をそっとなぞった。
「ん……」
薬指に何度も優しく触れられて背筋がぞくぞくする。
「あ……リョータ……」
遼太はおもむろに私の手を持ち上げると甲に口づけ、舌を這わせた。
「は……ダメだって」
指先まで舌でたどられる。
「ダメ? リカ……」
ダメだよ。色っぽすぎる……。
遼太は私の手を握ったまま、
「じゃあ、こっちは……?」
と囁いて私の唇をふさいだ。
「ん……ふぁ……」
久しぶりの行為に心臓が高鳴るのを抑えられない。
胸がドキドキする。
「ん……リョータ……」
私は遼太の首に腕を回した。
触れるところすべてが気持ちいい……。
「おーい! 遼太―! 車を移動してくれー!」
一階の玄関から父の大きな声が聞こえた。
「え? お父さん帰って来た!」
「うわっ、やべ、俺すごい停め方してるかも……」
遼太は乱れた髪を手ぐしで素早く整えると、
「伯父さん、ゴメン!」
と言いながら階段を駆け下りた。
私が玄関の外に出るとちょうど、代行運転手が父の車を駐車場に停めたところだった。
父はほろ酔いのようだ。
遼太は自分の車を家の前に停めなおすと降りてきて父に話しかけた。
「伯父さん、明日お時間を頂けませんか?」
「ん? なんだ? かしこまって。話なら今聞くぞ」
「いえ……伯父さんが素面の時に話したいし。ちゃんとスーツで来たいので、改めて明日お伺いします」
遼太はそう言うと頭を下げた。父は驚いた様子でうなずいた。
「そ、そうか……」
「はい」
「そうか……」
父があんまり淋しそうにしていたから、私も少し淋しい気持ちになった……。
翌朝、遼太はスーツをビシッと着こなして両親に挨拶に来てくれた。
か、かっこいい……。
そしてちゃんと
「お父さん、お母さん、梨花さんと結婚させてください」
と頭を下げてくれた。
うぅぅ、胸がきゅんとする。
私、ホントに遼太と結婚するんだ。
「とりあえず、梨花を泣かさないって約束は守れよ」
父はそう言ったっきり、無言でお茶を飲んでいた。
そう言えば父母は一度も私たちの交際に口を出さなかった。私はキッチンで湯呑を洗っている母に聞いた。
「ねえ、私達いとこ同士で付き合っているのに、どうして何も言わなかったの?」
「そりゃ……ねえ」
母は困ったように微笑んだ。
「ん?」
「梨花が小さい頃から遼太の事を好きなのは分かっていたし……遼太もずっとそうだったでしょ? もう、二人は立派な大人だし、親は何も言わないわよ」
今思えば……物心ついた時には遼太の事が好きだった気がする。高校三年生の冬にその想いがダメになってからも……ずっと忘れられなかった。
……お正月に遼太が私の事を迎えに来てくれたから私たちはこれからずっと一緒に歩いて行ける。
その再会の後押しをしてくれたのはお母さんや叔母さんだ。
「お母さん……ありがとう。……本当にありがと……」
「梨花、遼太と幸せになるのよ」
うん、うん……。
私は泣きながら母が洗った湯呑を布巾で拭いた。
「おい、お袋……何で今日来るんだよ?」
遼太の機嫌が悪い。
インターフォンがなったから母が昼食に頼んだお寿司が来たのかと思ったら夜勤明けの叔母だったのだ。
「普通、こういう日は結婚相手の家に親は来ないもんだろ?」
「いいじゃない、そんな、かたい事言わなくても。ちょうど仕事が終わったのよ」
遼太の抗議も気にせずに叔母はリビングのコタツに座った。叔母は近所の大学病院で看護師をしている。
「ねえ、梨花ちゃん、ホントにいいの? 遼太みたいなメンドクサイ男と結婚して」
叔母さんがこんなことを言うから遼太の機嫌はますます悪くなってしまった……。
「あ、もちろん、叔母さんは嬉しいのよ、梨花ちゃん大歓迎! でも……遼太ってちょっとストーカー気質というかさ……。しつこいところがあるでしょ? 子供の頃から絶対に梨花ちゃんと結婚するって決めてたからねぇ、ごめんね、梨花ちゃん。もう逃げられないと思うから観念してね」
叔母さんがあまりに遼太の事をボロカスに言うもんだからお父さんは吹き出してしまった。
「お袋、勘弁してくれよ……」
遼太も諦めたようにうなだれた。
「えっと……叔母さん、じゃないお母さん、私、遼太さんがいいんです。これからもずっと一緒にいたいって思ってます。だから、これからも……よろしくお願いします」
私は両手を床について頭を下げた。
「こちらこそ、バカな息子ですが、末永くよろしくお願いします」
叔母さんもそう言って丁寧にお辞儀をしてくれた。
私の大好きな叔母さん、これからはお母さんになるんだ。
「お寿司来たから食べましょうか?」
そう母が声をかけてくれたから、私たちはそろってお寿司を食べた。
「今日は飲めるんだろ?」
「ええ、電車で来たので」
父と遼太は早速ビールで乾杯している。
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