イケメンに迫られたときの対処法~誰か正解を教えてください!~

深海 なるる

文字の大きさ
上 下
14 / 15
2章

6話 うぅぅ、胸がきゅんとする

しおりを挟む
「あーあ、しっかし、俺の計画がボロボロだ。ホントはクリスマスにプロポーズをして正月に伯父さん伯母さんに挨拶しようと計画してたのに……」
 遼太はそう言って天を仰いだ。
「ぜんぜん気が付かなくてごめん……」
 そんな素敵な計画をたてているとは気づかずに思いっきり遼太を疑ってしまった。
「いやいや、気づかれたらそもそもサプライズは失敗だし……。いいんだよ、おれの独りよがりだった。これからはなんでも話すよ。二人でいっしょにしよう」
「うん」
 えへへ、遼太の言葉が嬉しくて笑いかけたけど……。
 遼太は瞳を伏せたまま、私の左手をそっとなぞった。
「ん……」
 薬指に何度も優しく触れられて背筋がぞくぞくする。
「あ……リョータ……」
 遼太はおもむろに私の手を持ち上げると甲に口づけ、舌を這わせた。
「は……ダメだって」
 指先まで舌でたどられる。
「ダメ? リカ……」
 ダメだよ。色っぽすぎる……。
 遼太は私の手を握ったまま、
「じゃあ、こっちは……?」
 と囁いて私の唇をふさいだ。
「ん……ふぁ……」
 久しぶりの行為キスに心臓が高鳴るのを抑えられない。
 胸がドキドキする。
「ん……リョータ……」
 私は遼太の首に腕を回した。
 触れるところすべてが気持ちいい……。

「おーい! 遼太―! 車を移動してくれー!」
 一階の玄関から父の大きな声が聞こえた。
「え? お父さん帰って来た!」
「うわっ、やべ、俺すごい停め方してるかも……」
 遼太は乱れた髪を手ぐしで素早く整えると、
「伯父さん、ゴメン!」
 と言いながら階段を駆け下りた。
 私が玄関の外に出るとちょうど、代行運転手が父の車を駐車場に停めたところだった。
 父はほろ酔いのようだ。
 遼太は自分の車を家の前に停めなおすと降りてきて父に話しかけた。
「伯父さん、明日お時間を頂けませんか?」
「ん? なんだ? かしこまって。話なら今聞くぞ」
「いえ……伯父さんが素面しらふの時に話したいし。ちゃんとスーツで来たいので、改めて明日お伺いします」
 遼太はそう言うと頭を下げた。父は驚いた様子でうなずいた。
「そ、そうか……」
「はい」
「そうか……」
 父があんまり淋しそうにしていたから、私も少し淋しい気持ちになった……。

 翌朝、遼太はスーツをビシッと着こなして両親に挨拶に来てくれた。
 か、かっこいい……。
 そしてちゃんと
「お父さん、お母さん、梨花さんと結婚させてください」
 と頭を下げてくれた。
 うぅぅ、胸がきゅんとする。
 私、ホントに遼太と結婚するんだ。
「とりあえず、梨花を泣かさないって約束は守れよ」
 父はそう言ったっきり、無言でお茶を飲んでいた。

 そう言えば父母は一度も私たちの交際に口を出さなかった。私はキッチンで湯呑を洗っている母に聞いた。
「ねえ、私達いとこ同士で付き合っているのに、どうして何も言わなかったの?」
「そりゃ……ねえ」
 母は困ったように微笑んだ。
「ん?」
「梨花が小さい頃から遼太の事を好きなのは分かっていたし……遼太もずっとそうだったでしょ? もう、二人は立派な大人だし、親は何も言わないわよ」
 今思えば……物心ついた時には遼太の事が好きだった気がする。高校三年生の冬にその想いがダメになってからも……ずっと忘れられなかった。
……お正月に遼太が私の事を迎えに来てくれたから私たちはこれからずっと一緒に歩いて行ける。
 その再会の後押しをしてくれたのはお母さんや叔母さんだ。
「お母さん……ありがとう。……本当にありがと……」
「梨花、遼太と幸せになるのよ」
 うん、うん……。
 私は泣きながら母が洗った湯呑を布巾で拭いた。

「おい、お袋……何で今日来るんだよ?」
 遼太の機嫌が悪い。
 インターフォンがなったから母が昼食に頼んだお寿司が来たのかと思ったら夜勤明けの叔母だったのだ。
「普通、こういう日は結婚相手の家に親は来ないもんだろ?」
「いいじゃない、そんな、かたい事言わなくても。ちょうど仕事が終わったのよ」
 遼太の抗議も気にせずに叔母はリビングのコタツに座った。叔母は近所の大学病院で看護師をしている。
「ねえ、梨花ちゃん、ホントにいいの? 遼太みたいなメンドクサイ男と結婚して」
 叔母さんがこんなことを言うから遼太の機嫌はますます悪くなってしまった……。
「あ、もちろん、叔母さんは嬉しいのよ、梨花ちゃん大歓迎! でも……遼太ってちょっとストーカー気質というかさ……。しつこいところがあるでしょ? 子供の頃から絶対に梨花ちゃんと結婚するって決めてたからねぇ、ごめんね、梨花ちゃん。もう逃げられないと思うから観念してね」
 叔母さんがあまりに遼太の事をボロカスに言うもんだからお父さんは吹き出してしまった。
「お袋、勘弁してくれよ……」
 遼太も諦めたようにうなだれた。
「えっと……叔母さん、じゃないお母さん、私、遼太さんがいいんです。これからもずっと一緒にいたいって思ってます。だから、これからも……よろしくお願いします」
 私は両手を床について頭を下げた。
「こちらこそ、バカな息子ですが、末永くよろしくお願いします」
 叔母さんもそう言って丁寧にお辞儀をしてくれた。
 私の大好きな叔母さん、これからはお母さんになるんだ。
「お寿司来たから食べましょうか?」
 そう母が声をかけてくれたから、私たちはそろってお寿司を食べた。
「今日は飲めるんだろ?」
「ええ、電車で来たので」
 父と遼太は早速ビールで乾杯している。
 それからは、結局どんちゃん騒ぎになって、私はまたこたつで寝てしまった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

ふまさ
恋愛
 伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。  けれど。 「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」  他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

処理中です...