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2章
4話 例え大好きな遼太の願いでもそれは聞いてあげられないよ
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「で? 誰なんだ、お前の相手は? 俺が知っている奴か? まさか佐藤先生じゃないだろうな」
遼太は私の顔をのぞき込んで言った。
「ち、ちょっと待って、リョータ。わ、私、浮気なんてしてないよ」
私は驚いて遼太の胸を押し返す。
抱きしめる腕がきつすぎて苦しい。
「じゃあ、さっきのメールは何なんだ!」
「それは……」
私の瞳からぽろりと涙が零れ落ちた。
自分の事は棚に上げて勘違いで私を責めるなんて、ひどい。
こんなのないよ……。
大好きな恋人に裏切られた事が急に現実味を帯びてきて涙が次々あふれ出す。
「う、浮気しているのはリョータじゃん……ひっ、く……そ、それなのに、そんなこと言うなんてひどいよ……うぅ……私はこんなにリョータの事が好きなのに……な、なんで浮気なんかするのっ……?」
遼太はまだ腕の力を緩めてくれない。私はこぶしで遼太の胸を叩いた。
「ひどいよ……リョータ、こんなに……好きなのにっ」
「リカ……ごめん」
謝ってもらってもどうしようもない。
やったことは取り返しがつかないのだ。
なんで浮気なんてしたの?
私よりその人の方が好き……?
もう、イヤだ!
もうっ!
「リョータのバカァァァァァアア!」
私は遼太の胸にすがって、子供みたいにわんわん泣いた。
「ごめん……ごめんな、リカ。お前を絶対悲しませないって決めていたのに……。」
私が泣きやむまで、遼太はそれ以上何も言わなかった……。
「リカ……落ち着いた? 少し、話せる……?」
「……うん……」
私は小さく頷いた。
みっともなく遼太にすがってしまった。
もし、別れたいって言われたら、イヤだけど、本当にイヤだけど遼太のために受け入れなきゃって思っていたのに。
いざ、こうやって抱きしめられたらそんな考え吹っ飛んでしまった。
私……絶対に遼太と別れたくない。
でも……。
遼太はどう思っているんだろう?
「あのさ……リカ、そもそもどうして俺が浮気しているって思ったんだ?」
「へ……? そ、それは……中山先生が見たんだよ、リョータが綺麗な年上の人と先生の家の近くのマンションに入っていくところ」
「ああ……なるほどね……中山先生は小学校の近くに住んでいるんだったな……」
遼太は浮気現場を抑えられたにしては飄々としている。
「他には?」
「え?」
「浮気の証拠。まさかそれだけってことはないでしょ?」
遼太は余裕の表情を崩さない。
「あ、あと、駅前の雑居ビルにその人と入って行くのも見たって」
「それも中山先生が目撃したの?」
「う、うん……中山先生だけじゃないよ! 佐藤先生も、わ、私だって見たんだもん。キャナルで夕方に待ち合わせしてたのに昼間、ホテルに入って行ったじゃん!」
「へー、それも見られてたんだ……」
遼太はしばらく考え込んだ後、口を開いた。
「リカはさ……俺が別れて欲しいって言ったら別れるつもりだったの?」
「そ、そんなのイヤだよ。別れたくないよ……ずっと一緒にいたいよ」
そんな事、聞かないで欲しい。
例え大好きな遼太の願いでもそれは聞いてあげられないよ。
私は遼太の広い背中に手をまわしてギュッと抱きしめた。
……離れたくない。
遼太はフゥーッと大きく溜め気をついて言った。
「……それを聞いて安心したよ」
「あのさ……リカ。俺、してないから……浮気」
「え?」
私は驚いて遼太の顔を見上げた。遼太は大きな手でグイっと私の涙をぬぐってくれる。
「……中山先生が見た一緒にマンションに入って行った女の人って、不動産屋の営業さんだから」
不動産屋……?
「ほら、駅前の雑居ビルにあるだろ? 不動産屋が。俺はただ……あのあたりで新居を探してただけだよ」
「そ、そうなの? リョータ、引っ越すの?」
「まあね」
遼太が引っ越しを考えていたなんて初耳だけど、それがホントなら……その女の人とは何でもないってこと……? でも。
「じゃ、じゃあ、ホテルは?」
「だから、学生時代の友達と会ってたって言ったろ? あのホテルで高校の時の友人が働いている」
「え? 私の知っている人……?」
「もちろん……お前が以前付き合っていた、高橋だ」
「え? えぇぇぇぇええ!」
高橋ってあの高橋君!? 高橋君があのホテルで働いているなんて、知らなかった……。
ホントにホントに浮気してないの?
「で、でもリョータ、私に嘘ついたじゃん、昼からキャナルにいたくせに、わたしには『さっき来た』って言った!」
「え? そりゃ、ホテルはキャナルじゃないだろ?」
「ホテルはキャナルだよ!」
「…………」
ん? あ、あれ?
「あれ……? ごめん、完全に私の勘違い……?」
「そうだよ……カンペキ濡れ衣だよ」
「ゴ、ゴメンナサイ……」
遼太は浮気なんてしていなかった。
……どうやら、私の独り相撲だったみたい……。
遼太は私の顔をのぞき込んで言った。
「ち、ちょっと待って、リョータ。わ、私、浮気なんてしてないよ」
私は驚いて遼太の胸を押し返す。
抱きしめる腕がきつすぎて苦しい。
「じゃあ、さっきのメールは何なんだ!」
「それは……」
私の瞳からぽろりと涙が零れ落ちた。
自分の事は棚に上げて勘違いで私を責めるなんて、ひどい。
こんなのないよ……。
大好きな恋人に裏切られた事が急に現実味を帯びてきて涙が次々あふれ出す。
「う、浮気しているのはリョータじゃん……ひっ、く……そ、それなのに、そんなこと言うなんてひどいよ……うぅ……私はこんなにリョータの事が好きなのに……な、なんで浮気なんかするのっ……?」
遼太はまだ腕の力を緩めてくれない。私はこぶしで遼太の胸を叩いた。
「ひどいよ……リョータ、こんなに……好きなのにっ」
「リカ……ごめん」
謝ってもらってもどうしようもない。
やったことは取り返しがつかないのだ。
なんで浮気なんてしたの?
私よりその人の方が好き……?
もう、イヤだ!
もうっ!
「リョータのバカァァァァァアア!」
私は遼太の胸にすがって、子供みたいにわんわん泣いた。
「ごめん……ごめんな、リカ。お前を絶対悲しませないって決めていたのに……。」
私が泣きやむまで、遼太はそれ以上何も言わなかった……。
「リカ……落ち着いた? 少し、話せる……?」
「……うん……」
私は小さく頷いた。
みっともなく遼太にすがってしまった。
もし、別れたいって言われたら、イヤだけど、本当にイヤだけど遼太のために受け入れなきゃって思っていたのに。
いざ、こうやって抱きしめられたらそんな考え吹っ飛んでしまった。
私……絶対に遼太と別れたくない。
でも……。
遼太はどう思っているんだろう?
「あのさ……リカ、そもそもどうして俺が浮気しているって思ったんだ?」
「へ……? そ、それは……中山先生が見たんだよ、リョータが綺麗な年上の人と先生の家の近くのマンションに入っていくところ」
「ああ……なるほどね……中山先生は小学校の近くに住んでいるんだったな……」
遼太は浮気現場を抑えられたにしては飄々としている。
「他には?」
「え?」
「浮気の証拠。まさかそれだけってことはないでしょ?」
遼太は余裕の表情を崩さない。
「あ、あと、駅前の雑居ビルにその人と入って行くのも見たって」
「それも中山先生が目撃したの?」
「う、うん……中山先生だけじゃないよ! 佐藤先生も、わ、私だって見たんだもん。キャナルで夕方に待ち合わせしてたのに昼間、ホテルに入って行ったじゃん!」
「へー、それも見られてたんだ……」
遼太はしばらく考え込んだ後、口を開いた。
「リカはさ……俺が別れて欲しいって言ったら別れるつもりだったの?」
「そ、そんなのイヤだよ。別れたくないよ……ずっと一緒にいたいよ」
そんな事、聞かないで欲しい。
例え大好きな遼太の願いでもそれは聞いてあげられないよ。
私は遼太の広い背中に手をまわしてギュッと抱きしめた。
……離れたくない。
遼太はフゥーッと大きく溜め気をついて言った。
「……それを聞いて安心したよ」
「あのさ……リカ。俺、してないから……浮気」
「え?」
私は驚いて遼太の顔を見上げた。遼太は大きな手でグイっと私の涙をぬぐってくれる。
「……中山先生が見た一緒にマンションに入って行った女の人って、不動産屋の営業さんだから」
不動産屋……?
「ほら、駅前の雑居ビルにあるだろ? 不動産屋が。俺はただ……あのあたりで新居を探してただけだよ」
「そ、そうなの? リョータ、引っ越すの?」
「まあね」
遼太が引っ越しを考えていたなんて初耳だけど、それがホントなら……その女の人とは何でもないってこと……? でも。
「じゃ、じゃあ、ホテルは?」
「だから、学生時代の友達と会ってたって言ったろ? あのホテルで高校の時の友人が働いている」
「え? 私の知っている人……?」
「もちろん……お前が以前付き合っていた、高橋だ」
「え? えぇぇぇぇええ!」
高橋ってあの高橋君!? 高橋君があのホテルで働いているなんて、知らなかった……。
ホントにホントに浮気してないの?
「で、でもリョータ、私に嘘ついたじゃん、昼からキャナルにいたくせに、わたしには『さっき来た』って言った!」
「え? そりゃ、ホテルはキャナルじゃないだろ?」
「ホテルはキャナルだよ!」
「…………」
ん? あ、あれ?
「あれ……? ごめん、完全に私の勘違い……?」
「そうだよ……カンペキ濡れ衣だよ」
「ゴ、ゴメンナサイ……」
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……どうやら、私の独り相撲だったみたい……。
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