11 / 15
2章
3話 ええーん、大変なことになっちゃったよ……
しおりを挟む
『はっきりさせる』って決意しちゃった途端に怖気づいてしまって、あれから二人きりでは会っていない。
そもそも、遼太は休日のたびに忙しそうだからデートの約束すらしないまま十二月に入ってしまった。今日は十二月最初の土曜日だけどこの週末も二人で会う予定はない。
私もまた、忙しい時期に突入だ。
師走ってね、本当に忙しいの。おまけに、六年生はとにかく元気なのだ。私は相変わらず走り回っている。
あ、今年はカレンダーはちゃんとめくっている。
忙しさが嫌なことを一瞬だけ忘れさせてくれるけど、気を抜くとダメだ。
会えない日には、遼太は今頃誰と過ごしているんだろう? なんて考えてしまう。
お正月に付き合い始めてからずっと順調だと思っていたのに、一年もたたずにこんな状況になるなんて……。
私はベッドにごろんと寝ころんでぼんやりと天井を眺めた。もう、窓の外は薄暗くなってきている。
……面と向かって話せる気がしない。
勇気が出ないまま、こんな気持ちでずるずると関係を長引かせるのはお互いにとってどうなんだろう?
よし、メールしよう。
メールなら何とか気持ちを伝えられるかもしれない……。
私は長文を打っては消し……また少し打ってを繰り返しながらメールを作成した。
な、なんだかうまく書けない……。
とりあえず、伝えたいことを取り留めもなく書いた。
で、でもどうなの?
こんなの、送ってもいいんだろうか?
気が付いたらもう九時をまわっていた。メールひとつにどんだけ時間をかけているんだ。
ああ、お腹空いた。
私は、とりあえず階段を下りてキッチンに向かった。
今夜は、父は職場関係の付き合い、母はカラオケサークルの忘年会に出掛けている。
いつも通りならきっと二人とも帰りは十一時位だろう。
冷蔵庫にたいしたものは入っていなかった。
もう、ご飯と納豆にみそ汁でいっか……。
簡単に夕飯の準備をしてスマホを触っていたら……。
「あ……やっちゃったっ!」
うっかり、編集中の支離滅裂なメールを送信してしまった。
「や、やばい、送信取り消せないの? これ……」
焦るけど取り返しがつかない。
「ど、どうする? 間違いましたってメールする?」
でも、遼太からは返信もないし、電話もない……。
まだ気が付いていないのかも。
それに、どんなに取り繕ったってごまかしようがない気がするし……。
う、うーん、参った……。
と、とりあえず……。
「いただきます」
私は納豆をかき混ぜた。
お味噌汁を飲んでいると外で大きなブレーキ音がした。
キィィィィィィイイイ! バタンッ!
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!!
ドドドドンッ
ピンポーン! ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!
ど、どうしよう?
家の前に車を止めて慌ただしく玄関にやって来た人がチャイムを押しまくっている。
ち、ちょっと早すぎない。
さっきメールしたばかりなのに……。
ドドドドドドドン!
「おいっ! リカ! ここ開けろっ! いるんだろ!? リカッ!」
そ、そんなに叩いたらへこんじゃうよ……。
遼太がすごい剣幕で怒っているから、私は怖すぎて玄関の扉を開ける勇気がない……。
ドア越しに声をかける。
「リ、リョータ……ち、ちょっと落ち着いて……」
「これが落ち着いていられるかっ!」
ええーん、大変なことになっちゃったよ……。
どうして今夜に限って家に誰もいないんだ?
「早く開けないと俺の機嫌はもっと悪くなるぞ!」
こ、これ以上悪くなったら困る!
私は恐る恐る扉のカギを開けた。
「リカ、お前っ……」
扉を開けるなり遼太に強く肩を握られた。
「イタッ、痛いよ、リョータ」
「さっきのメール、どういう意味だよっ?」
「そ、それは……。ね、と、とりあえずリビングで話そ?」
「いや、お前の部屋がいい」
遼太は私の腕をきつく掴むと返事も聞かずにズンズン階段を上がっていった。
「伯父さんと伯母さんは?」
「いない……」
「だろうね、車がなかったし」
遼太は私の部屋のドアを乱暴に開けると私をベッドに座らせて自分は立ったままドアに寄りかかった。
に、逃げ道をふさがれている……。
背の高い遼太に見おろされて私はうつむいた。
そりゃ、一方的に支離滅裂なメールを送り付けたのは私が悪いよ。でも……。
もともと浮気したのは遼太じゃん……。
そう思ったけど、口には出来そうになかった。
「リカ、これどういう意味? 浮気しているの、私達分かれた方がいいのかな? って。リカ、俺のほかに好きな人が出来たってこと? 俺と別れてそいつと付き合うつもり?」
え? ちょっと待って!
な、何で、私が浮気していることになってるの!?
私は慌ててスマホを確認した。
いやいや、浮気しているの? って聞いているのは私の方なんだけど……。
たしかに……読みようによっては私が自分の浮気を告白するメールに読めなくもない!
『もうひと月位前から言おうと思っていて、
ずっと言い出せなかったんだけど、遼太
浮気しているの
私達別れた方がいいのかな?
新しい恋人と一緒に新年を迎えた方がいい
このままずるずる付き合っても傷つけあう
だけかも知れないから』
我ながら、なんなんだこのメールは!
内容がぐちゃぐちゃだ!
「ゴメン、リョータ……」
変なメールを送りつけちゃって。
「そんなこと、許さない」
遼太は私の横に座ると私を強く抱きしめた。
「たとえお前が別れたいって言ったって、俺はお前を離さない……悪い、離してやれない」
そもそも、遼太は休日のたびに忙しそうだからデートの約束すらしないまま十二月に入ってしまった。今日は十二月最初の土曜日だけどこの週末も二人で会う予定はない。
私もまた、忙しい時期に突入だ。
師走ってね、本当に忙しいの。おまけに、六年生はとにかく元気なのだ。私は相変わらず走り回っている。
あ、今年はカレンダーはちゃんとめくっている。
忙しさが嫌なことを一瞬だけ忘れさせてくれるけど、気を抜くとダメだ。
会えない日には、遼太は今頃誰と過ごしているんだろう? なんて考えてしまう。
お正月に付き合い始めてからずっと順調だと思っていたのに、一年もたたずにこんな状況になるなんて……。
私はベッドにごろんと寝ころんでぼんやりと天井を眺めた。もう、窓の外は薄暗くなってきている。
……面と向かって話せる気がしない。
勇気が出ないまま、こんな気持ちでずるずると関係を長引かせるのはお互いにとってどうなんだろう?
よし、メールしよう。
メールなら何とか気持ちを伝えられるかもしれない……。
私は長文を打っては消し……また少し打ってを繰り返しながらメールを作成した。
な、なんだかうまく書けない……。
とりあえず、伝えたいことを取り留めもなく書いた。
で、でもどうなの?
こんなの、送ってもいいんだろうか?
気が付いたらもう九時をまわっていた。メールひとつにどんだけ時間をかけているんだ。
ああ、お腹空いた。
私は、とりあえず階段を下りてキッチンに向かった。
今夜は、父は職場関係の付き合い、母はカラオケサークルの忘年会に出掛けている。
いつも通りならきっと二人とも帰りは十一時位だろう。
冷蔵庫にたいしたものは入っていなかった。
もう、ご飯と納豆にみそ汁でいっか……。
簡単に夕飯の準備をしてスマホを触っていたら……。
「あ……やっちゃったっ!」
うっかり、編集中の支離滅裂なメールを送信してしまった。
「や、やばい、送信取り消せないの? これ……」
焦るけど取り返しがつかない。
「ど、どうする? 間違いましたってメールする?」
でも、遼太からは返信もないし、電話もない……。
まだ気が付いていないのかも。
それに、どんなに取り繕ったってごまかしようがない気がするし……。
う、うーん、参った……。
と、とりあえず……。
「いただきます」
私は納豆をかき混ぜた。
お味噌汁を飲んでいると外で大きなブレーキ音がした。
キィィィィィィイイイ! バタンッ!
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!!
ドドドドンッ
ピンポーン! ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!
ど、どうしよう?
家の前に車を止めて慌ただしく玄関にやって来た人がチャイムを押しまくっている。
ち、ちょっと早すぎない。
さっきメールしたばかりなのに……。
ドドドドドドドン!
「おいっ! リカ! ここ開けろっ! いるんだろ!? リカッ!」
そ、そんなに叩いたらへこんじゃうよ……。
遼太がすごい剣幕で怒っているから、私は怖すぎて玄関の扉を開ける勇気がない……。
ドア越しに声をかける。
「リ、リョータ……ち、ちょっと落ち着いて……」
「これが落ち着いていられるかっ!」
ええーん、大変なことになっちゃったよ……。
どうして今夜に限って家に誰もいないんだ?
「早く開けないと俺の機嫌はもっと悪くなるぞ!」
こ、これ以上悪くなったら困る!
私は恐る恐る扉のカギを開けた。
「リカ、お前っ……」
扉を開けるなり遼太に強く肩を握られた。
「イタッ、痛いよ、リョータ」
「さっきのメール、どういう意味だよっ?」
「そ、それは……。ね、と、とりあえずリビングで話そ?」
「いや、お前の部屋がいい」
遼太は私の腕をきつく掴むと返事も聞かずにズンズン階段を上がっていった。
「伯父さんと伯母さんは?」
「いない……」
「だろうね、車がなかったし」
遼太は私の部屋のドアを乱暴に開けると私をベッドに座らせて自分は立ったままドアに寄りかかった。
に、逃げ道をふさがれている……。
背の高い遼太に見おろされて私はうつむいた。
そりゃ、一方的に支離滅裂なメールを送り付けたのは私が悪いよ。でも……。
もともと浮気したのは遼太じゃん……。
そう思ったけど、口には出来そうになかった。
「リカ、これどういう意味? 浮気しているの、私達分かれた方がいいのかな? って。リカ、俺のほかに好きな人が出来たってこと? 俺と別れてそいつと付き合うつもり?」
え? ちょっと待って!
な、何で、私が浮気していることになってるの!?
私は慌ててスマホを確認した。
いやいや、浮気しているの? って聞いているのは私の方なんだけど……。
たしかに……読みようによっては私が自分の浮気を告白するメールに読めなくもない!
『もうひと月位前から言おうと思っていて、
ずっと言い出せなかったんだけど、遼太
浮気しているの
私達別れた方がいいのかな?
新しい恋人と一緒に新年を迎えた方がいい
このままずるずる付き合っても傷つけあう
だけかも知れないから』
我ながら、なんなんだこのメールは!
内容がぐちゃぐちゃだ!
「ゴメン、リョータ……」
変なメールを送りつけちゃって。
「そんなこと、許さない」
遼太は私の横に座ると私を強く抱きしめた。
「たとえお前が別れたいって言ったって、俺はお前を離さない……悪い、離してやれない」
0
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【本編完結】番って便利な言葉ね
朝山みどり
恋愛
番だと言われて異世界に召喚されたわたしは、番との永遠の愛に胸躍らせたが、番は迎えに来なかった。
召喚者が持つ能力もなく。番の家も冷たかった。
しかし、能力があることが分かり、わたしは一人で生きて行こうと思った・・・・
本編完結しましたが、ときおり番外編をあげます。
ぜひ読んで下さい。
「第17回恋愛小説大賞」 で奨励賞をいただきました。 ありがとうございます
短編から長編へ変更しました。
62話で完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる