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2章
3話 ええーん、大変なことになっちゃったよ……
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『はっきりさせる』って決意しちゃった途端に怖気づいてしまって、あれから二人きりでは会っていない。
そもそも、遼太は休日のたびに忙しそうだからデートの約束すらしないまま十二月に入ってしまった。今日は十二月最初の土曜日だけどこの週末も二人で会う予定はない。
私もまた、忙しい時期に突入だ。
師走ってね、本当に忙しいの。おまけに、六年生はとにかく元気なのだ。私は相変わらず走り回っている。
あ、今年はカレンダーはちゃんとめくっている。
忙しさが嫌なことを一瞬だけ忘れさせてくれるけど、気を抜くとダメだ。
会えない日には、遼太は今頃誰と過ごしているんだろう? なんて考えてしまう。
お正月に付き合い始めてからずっと順調だと思っていたのに、一年もたたずにこんな状況になるなんて……。
私はベッドにごろんと寝ころんでぼんやりと天井を眺めた。もう、窓の外は薄暗くなってきている。
……面と向かって話せる気がしない。
勇気が出ないまま、こんな気持ちでずるずると関係を長引かせるのはお互いにとってどうなんだろう?
よし、メールしよう。
メールなら何とか気持ちを伝えられるかもしれない……。
私は長文を打っては消し……また少し打ってを繰り返しながらメールを作成した。
な、なんだかうまく書けない……。
とりあえず、伝えたいことを取り留めもなく書いた。
で、でもどうなの?
こんなの、送ってもいいんだろうか?
気が付いたらもう九時をまわっていた。メールひとつにどんだけ時間をかけているんだ。
ああ、お腹空いた。
私は、とりあえず階段を下りてキッチンに向かった。
今夜は、父は職場関係の付き合い、母はカラオケサークルの忘年会に出掛けている。
いつも通りならきっと二人とも帰りは十一時位だろう。
冷蔵庫にたいしたものは入っていなかった。
もう、ご飯と納豆にみそ汁でいっか……。
簡単に夕飯の準備をしてスマホを触っていたら……。
「あ……やっちゃったっ!」
うっかり、編集中の支離滅裂なメールを送信してしまった。
「や、やばい、送信取り消せないの? これ……」
焦るけど取り返しがつかない。
「ど、どうする? 間違いましたってメールする?」
でも、遼太からは返信もないし、電話もない……。
まだ気が付いていないのかも。
それに、どんなに取り繕ったってごまかしようがない気がするし……。
う、うーん、参った……。
と、とりあえず……。
「いただきます」
私は納豆をかき混ぜた。
お味噌汁を飲んでいると外で大きなブレーキ音がした。
キィィィィィィイイイ! バタンッ!
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!!
ドドドドンッ
ピンポーン! ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!
ど、どうしよう?
家の前に車を止めて慌ただしく玄関にやって来た人がチャイムを押しまくっている。
ち、ちょっと早すぎない。
さっきメールしたばかりなのに……。
ドドドドドドドン!
「おいっ! リカ! ここ開けろっ! いるんだろ!? リカッ!」
そ、そんなに叩いたらへこんじゃうよ……。
遼太がすごい剣幕で怒っているから、私は怖すぎて玄関の扉を開ける勇気がない……。
ドア越しに声をかける。
「リ、リョータ……ち、ちょっと落ち着いて……」
「これが落ち着いていられるかっ!」
ええーん、大変なことになっちゃったよ……。
どうして今夜に限って家に誰もいないんだ?
「早く開けないと俺の機嫌はもっと悪くなるぞ!」
こ、これ以上悪くなったら困る!
私は恐る恐る扉のカギを開けた。
「リカ、お前っ……」
扉を開けるなり遼太に強く肩を握られた。
「イタッ、痛いよ、リョータ」
「さっきのメール、どういう意味だよっ?」
「そ、それは……。ね、と、とりあえずリビングで話そ?」
「いや、お前の部屋がいい」
遼太は私の腕をきつく掴むと返事も聞かずにズンズン階段を上がっていった。
「伯父さんと伯母さんは?」
「いない……」
「だろうね、車がなかったし」
遼太は私の部屋のドアを乱暴に開けると私をベッドに座らせて自分は立ったままドアに寄りかかった。
に、逃げ道をふさがれている……。
背の高い遼太に見おろされて私はうつむいた。
そりゃ、一方的に支離滅裂なメールを送り付けたのは私が悪いよ。でも……。
もともと浮気したのは遼太じゃん……。
そう思ったけど、口には出来そうになかった。
「リカ、これどういう意味? 浮気しているの、私達分かれた方がいいのかな? って。リカ、俺のほかに好きな人が出来たってこと? 俺と別れてそいつと付き合うつもり?」
え? ちょっと待って!
な、何で、私が浮気していることになってるの!?
私は慌ててスマホを確認した。
いやいや、浮気しているの? って聞いているのは私の方なんだけど……。
たしかに……読みようによっては私が自分の浮気を告白するメールに読めなくもない!
『もうひと月位前から言おうと思っていて、
ずっと言い出せなかったんだけど、遼太
浮気しているの
私達別れた方がいいのかな?
新しい恋人と一緒に新年を迎えた方がいい
このままずるずる付き合っても傷つけあう
だけかも知れないから』
我ながら、なんなんだこのメールは!
内容がぐちゃぐちゃだ!
「ゴメン、リョータ……」
変なメールを送りつけちゃって。
「そんなこと、許さない」
遼太は私の横に座ると私を強く抱きしめた。
「たとえお前が別れたいって言ったって、俺はお前を離さない……悪い、離してやれない」
そもそも、遼太は休日のたびに忙しそうだからデートの約束すらしないまま十二月に入ってしまった。今日は十二月最初の土曜日だけどこの週末も二人で会う予定はない。
私もまた、忙しい時期に突入だ。
師走ってね、本当に忙しいの。おまけに、六年生はとにかく元気なのだ。私は相変わらず走り回っている。
あ、今年はカレンダーはちゃんとめくっている。
忙しさが嫌なことを一瞬だけ忘れさせてくれるけど、気を抜くとダメだ。
会えない日には、遼太は今頃誰と過ごしているんだろう? なんて考えてしまう。
お正月に付き合い始めてからずっと順調だと思っていたのに、一年もたたずにこんな状況になるなんて……。
私はベッドにごろんと寝ころんでぼんやりと天井を眺めた。もう、窓の外は薄暗くなってきている。
……面と向かって話せる気がしない。
勇気が出ないまま、こんな気持ちでずるずると関係を長引かせるのはお互いにとってどうなんだろう?
よし、メールしよう。
メールなら何とか気持ちを伝えられるかもしれない……。
私は長文を打っては消し……また少し打ってを繰り返しながらメールを作成した。
な、なんだかうまく書けない……。
とりあえず、伝えたいことを取り留めもなく書いた。
で、でもどうなの?
こんなの、送ってもいいんだろうか?
気が付いたらもう九時をまわっていた。メールひとつにどんだけ時間をかけているんだ。
ああ、お腹空いた。
私は、とりあえず階段を下りてキッチンに向かった。
今夜は、父は職場関係の付き合い、母はカラオケサークルの忘年会に出掛けている。
いつも通りならきっと二人とも帰りは十一時位だろう。
冷蔵庫にたいしたものは入っていなかった。
もう、ご飯と納豆にみそ汁でいっか……。
簡単に夕飯の準備をしてスマホを触っていたら……。
「あ……やっちゃったっ!」
うっかり、編集中の支離滅裂なメールを送信してしまった。
「や、やばい、送信取り消せないの? これ……」
焦るけど取り返しがつかない。
「ど、どうする? 間違いましたってメールする?」
でも、遼太からは返信もないし、電話もない……。
まだ気が付いていないのかも。
それに、どんなに取り繕ったってごまかしようがない気がするし……。
う、うーん、参った……。
と、とりあえず……。
「いただきます」
私は納豆をかき混ぜた。
お味噌汁を飲んでいると外で大きなブレーキ音がした。
キィィィィィィイイイ! バタンッ!
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!!!
ドドドドンッ
ピンポーン! ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!
ど、どうしよう?
家の前に車を止めて慌ただしく玄関にやって来た人がチャイムを押しまくっている。
ち、ちょっと早すぎない。
さっきメールしたばかりなのに……。
ドドドドドドドン!
「おいっ! リカ! ここ開けろっ! いるんだろ!? リカッ!」
そ、そんなに叩いたらへこんじゃうよ……。
遼太がすごい剣幕で怒っているから、私は怖すぎて玄関の扉を開ける勇気がない……。
ドア越しに声をかける。
「リ、リョータ……ち、ちょっと落ち着いて……」
「これが落ち着いていられるかっ!」
ええーん、大変なことになっちゃったよ……。
どうして今夜に限って家に誰もいないんだ?
「早く開けないと俺の機嫌はもっと悪くなるぞ!」
こ、これ以上悪くなったら困る!
私は恐る恐る扉のカギを開けた。
「リカ、お前っ……」
扉を開けるなり遼太に強く肩を握られた。
「イタッ、痛いよ、リョータ」
「さっきのメール、どういう意味だよっ?」
「そ、それは……。ね、と、とりあえずリビングで話そ?」
「いや、お前の部屋がいい」
遼太は私の腕をきつく掴むと返事も聞かずにズンズン階段を上がっていった。
「伯父さんと伯母さんは?」
「いない……」
「だろうね、車がなかったし」
遼太は私の部屋のドアを乱暴に開けると私をベッドに座らせて自分は立ったままドアに寄りかかった。
に、逃げ道をふさがれている……。
背の高い遼太に見おろされて私はうつむいた。
そりゃ、一方的に支離滅裂なメールを送り付けたのは私が悪いよ。でも……。
もともと浮気したのは遼太じゃん……。
そう思ったけど、口には出来そうになかった。
「リカ、これどういう意味? 浮気しているの、私達分かれた方がいいのかな? って。リカ、俺のほかに好きな人が出来たってこと? 俺と別れてそいつと付き合うつもり?」
え? ちょっと待って!
な、何で、私が浮気していることになってるの!?
私は慌ててスマホを確認した。
いやいや、浮気しているの? って聞いているのは私の方なんだけど……。
たしかに……読みようによっては私が自分の浮気を告白するメールに読めなくもない!
『もうひと月位前から言おうと思っていて、
ずっと言い出せなかったんだけど、遼太
浮気しているの
私達別れた方がいいのかな?
新しい恋人と一緒に新年を迎えた方がいい
このままずるずる付き合っても傷つけあう
だけかも知れないから』
我ながら、なんなんだこのメールは!
内容がぐちゃぐちゃだ!
「ゴメン、リョータ……」
変なメールを送りつけちゃって。
「そんなこと、許さない」
遼太は私の横に座ると私を強く抱きしめた。
「たとえお前が別れたいって言ったって、俺はお前を離さない……悪い、離してやれない」
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