イケメンに迫られたときの対処法~誰か正解を教えてください!~

深海 なるる

文字の大きさ
上 下
9 / 15
2章

1話 もうっ、リョータのバッカヤロォォォオオオ!

しおりを挟む
「ええっ? カレシさんが浮気ぃ!?」
「ち、ちょっと原先生、声が大きいって!」
 同僚で同い年の原先生がカフェ中に響き渡るような大声を出したから私は慌てて隣に座る原先生の肩を叩いた。
「ごめん、今井先生。……でもマジでびっくりしちゃって。私二人はラブラブなんだと思っていたから……」
 それはね、私もそう思っていたのよ。
 だからホントに驚いたんだ。
……まさか遼太が浮気するなんて考えてもみなかった。
「でも、どうして今井先生はカレシさんが浮気してるって思ったの? 単なる思い過ごしってことは……?」
 思い過ごしであって欲しいよ。でもね……。
「目撃者がいるのよ」
「目撃者?」
「……すみません、それは、私デス」
 向かいの席に座ってコーヒーを飲んでいた中山先生が控えめに手を挙げた。
「目撃者って、中山先生……?」
「ハイ、それと佐藤先生デス……」
 三年生の担任の中山先生は同僚の佐藤先生と付き合っている。
 二人が遼太の浮気現場を目撃したのだ。
「中山先生の見間違いってことはないの? 今井先生のカレシさんと似ている人だったとか」
「残念ながらそれはあり得ません……だって今井先生のカレシさんは、一度見たら忘れられないほどの超絶イケメンなんですよ! あんな人そうそういませんよ……それにトシヤさ、佐藤先生も一緒に見ましたから間違いないデス……」
「今井先生のカレシさんって、そんなにイケメンなの……?」
 そう、だから困ってるんじゃないか。
 私は遼太の顔に惹かれて付き合っているわけじゃないけど、確かに良く見たらあの人ホントにかっこいい人だったのよ。
 私は全然気が付いていなかった。でも、世の中の女性は皆そのことに気が付いていたようだ……。

 ひどいよ、こんなに好きにさせといて浮気するなんて。
 もうっ、リョータのバッカヤロォォォオオオ!

 中山先生によると、十一月の初めの土曜日に自宅の近くで遼太らしき人物が女性と連れ立って歩いているのを見たのが始まりだったとか。
 その時は、一瞬の事だったし勘違いかも? と思ったらしいんだけど、翌、日曜日の昼間にも佐藤先生とスーパーに買い物に行った帰りに遼太が前日と同じ女性と談笑しながら近隣のマンションに入っていく姿をバッチリ目撃したらしい……。
 中山先生はそのことを私に告げるかこの一週間ずっと悩んでいたんだって。でも再び昨日の土曜日に……。
「今度は駅前の雑居ビルにカレシさんがこの間と同じ女性と入っていくところを目撃してしまったんデス……」
「二週連続か……それで、夕べ今井先生にカレシさんが浮気しているかも? って電話したワケね……」
「今井先生、ゴメンナサイ!」
「ううん、中山先生、話して貰えて嬉しいよ。ごめんね、私のために悩ませてしまって」
 中山先生が謝ることじゃない。
 謝るべきは遼太でしょ?
 いったいどういう事なんだ!
 私という恋人がいながら他の女性と浮気なんて!
「ねえ、中山先生、ところでお相手の女性ってどんな感じの人だったの?」
「は、原先生、それが……」
 中山先生は言いにくそうにうつむいてしまった。
「中山先生、私も教えて欲しい、是非、教えてちょうだい!」
 私もテーブルに身を乗り出して頼んだ。
「……多分、今井先生よりも年上だと思うんですけど……。品の良いスーツをビシッと着こなした、いかにもキャリアウーマンっていう感じの背が高い美女でした……」
「んー、今井先生と真逆……ハッ、先生ゴメン!」
 原先生がピョコっと頭を下げた。
 いいよ、自分がチビなのは自覚してるよ……。
 それにしても、そんな美人と隠れて会っているなんて……。
 許せん!
 リョータめ!
 今夜会ったらとっちめてやる!
「ま、今夜は久々にここでデートなんでしょ? その時に探りをいれてみたらいいじゃない。それよりせっかくキャナルに来たんだから夕方までショッピングを楽しも? ね、今井せんせ」
「うん……そうだね、パーッと買い物でもするか!」
「ハイ! あ、私コートが見たいデス!」
 私たちはカフェを出ると運河沿いを歩き始めた。
 今日は三人で中州にあるキャナルシティ博多に来ている。
 ここは、ショップやレストランだけでなく劇場やシネコン、ホテルも併設した複合商業施設だ。
 夕べ、中山先生から電話を貰った時に、夕方、キャナルで遼太と待ち合わせていることを話した。じゃあ、それまで一緒にショッピングをしようという事になったのだ。
 でも、本当のところは、中山先生が私を励まそうと原先生を誘ってここまで来てくれたんだと思う……。
「あ……?」
 ふいに中山先生が立ち止まった。
「どうしたの?」
 原先生が振り返る。
「いえいえ、何でもありません、あ、そうだ私さっきのカフェに忘れ物したかも?」
 中山先生は明らかに動揺したそぶりで私の腕をつかんだ。
 あ……?
 なるほど、そういう事か……。
「い、今井先生さっきのカフェに戻りましょう、ね、ほら回れ右ですよ」
「うん、大丈夫だよ、中山先生……ごめんね、気をつかわせてしまって。ありがとね」
 私は中山先生にお礼を言いながらも視線は運河にかかる小さな橋にくぎ付けだった。
 今日遼太は用事があるから、夕方からキャナルでデートしようと私を誘った。
 でも、今……こんな真昼間に運河を渡ってホテルに入っていくっていうのはどういう事なんだろう?

 ああ、もう分かんないよっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

処理中です...