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1章
5話 恋愛上級者なの?
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私たちは手水舎でお清めを済ませると本殿を参拝した。一緒に天満宮に来たのは小学生の時以来だ。
『神様、やっと遼太と二人でお参りに来られました。……これからは、今まで以上に教師の仕事も頑張ります。小学校では子供たちが楽しめる授業が出来ますように、あと、しっかり学習して子供たちに相応の学力が付きますように。それから……。』
天満宮は学問の神様、菅原道真公をまつっているのでついつい仕事の事ばかり念じてしまった……。
「行こうか」
「うん、ねえ、梅が枝餅食べたい!」
お参りの帰りは参道で梅が枝餅を一つずつ買って食べながら歩いた。
これも子供の頃と一緒だ。
駐車場につくともう夕方だった。
車に乗り込むと遼太が言った。
「なあ、このあと竈門神社に参拝に行かないか?」
「え?」
そ、そんなに恋愛偏差値の高いところに!
竈門神社は縁結びで有名な神社だ。
私は昨年小学校の同僚の先生達とお参りに行った。もちろん全員女の先生だ。
良縁に恵まれるようお願いに行ったのだ!
でも、男女でお参りするとなると……。
恋愛経験がほとんどない私にそれはハードルが高すぎるでしょう!
「あ、それで車だったの?」
竈門神社は宝満山の麓にある。あそこは車じゃないと無理だもんね。
「あーそれもあるけど……」
遼太は私のシートベルトを締めてくれた、って近い!う、美しい顔がすぐそこに……。
「車だと自然と二人きりになれるし、隣に座れるでしょ?」
遼太はにっこりと今日一番の笑顔を見せた。
この! イケメン!
策士だ……。遼太は策士だった。
「リョータは恋愛上級者なの?」
「ぷっ、上級者って……ちがうよ。正直好きな子以外から、粉掛けられても困るだけっていうか……」
イケメンならではの発言にびっくりする。
「ワーひどい男だー、女の子がカワイソー」
私は棒読みで非難する。でも、強力な反撃をくらってしまった。
「好きな子ってつまりお前のことだぞ」
うっ、遼太の攻撃力……やっぱりハンパナイ。
「俺は絶対にふらつかないからお前も覚悟を決めろよ」
しかも重い。この重さも嬉しいけどね。
「ねえ、リョータは竈門神社に行ったことあるの?」
「あるわけないだろ、行くならリカとって決めていた」
「そっかー、えへへ嬉しい」
ごめんね、幸せで。ああ、私、幸せだ!
天満宮の駐車場を出発した車は竈門神社に向かって走り出した。距離はそう遠くはない。混んでいなければいいけど。冬は陽が暮れるのが早い。暗くなる前には着きたいな……。
そういえば一つ疑問に思っていたことがあった。
「ねえ、そもそもなんで高三の時に初詣に誘ってくれたの?」
遼太は大きくため息をついた。
「あのさー、お前子供のころにした約束全部忘れてんのかよ」
「え? 何か約束してたっけ?」
「はぁぁ」
また、ため息。
「大きくなったら二人で初詣に行こうねって言ったことも、誘われるならクリスマスに誘われたいって言ったことも、どうせ覚えてないんだろうなぁ」
え? 私達そんな約束をしてたの? 一体いつ?
「小学生までは毎年一緒に来てただろ? その時に約束したんだよ。将来結婚する? って俺が聞いたら『リョータが大人になってかっこいい車にのってたら考えてもいいよ』だって」
「嘘? 私、そんな生意気な事言ったの? ごめん……」
「『仕事が一人前に出来るようになって、部下の一人でも出来たら迎えに来てね』みたいなことも言われたな」
うわー恥ずかしい……。子供の頃の私ひどすぎる。『恥ずか死ぬ』っていう言葉の意味を実感!
ああ、勉強したくない言葉を勉強してしまった!
「そ、そんな子供のころの約束を覚えているなんてリョータは意外とロマンチストなんだね……」
「……別に子供の頃に約束したからって律義にその通りにしたわけじゃないぞ。ただ、ずっとお前が俺の心にいたってだけだ」
「リョータ、私そろそろ恥ずか死ぬ……」
あ、早速使ってしまった……。
「お前は変わらないな」
遼太はあきれたように笑った。
竈門神社には思ったよりも早く着いた。嬉しくてつい走り出した私に遼太はまた言った。
「ホントにリカは変わらないな」
私は振り返って後ろ向きに歩く。
「私だって変わったよ。いつまでも子供じゃいられないんだから」
「大人になったってこと?」
「そうだね、大人になって一番変わったのは……自分の心の痛みに鈍感になったことかな」
私は歩くのをやめた。遼太が追い付いて正面に立った。
遼太はすごく背が高い。私はぐっと顔を上げた。
「リカ……ごめんな、俺はお前を傷つけた……あの時はお前が辻と高橋を誘ったと勘違いしていて、今思うと俺も冷静じゃなかった」
「……ううん、先にひどいことをしたのは私だよ……リョータを信じきれないでこの手を離しちゃったんだから。でも今こうして分かりあえたんだから全部帳消し!」
私たちは再び手を繋いで神社の長い石段を上った。
竈門神社は宝満山の麓にある小さな神社だ。ただここは単に緑豊かな山麓の神社ではない。千三百五十年以上の歴史ある神社なのに、とにかくおしゃれなのだ。女の子が来たくなるのも分かる。私も前回来た時に驚いた。
お札お守り授与所の建物は著名なインテリアデザイナーが手掛けたものでその内装も他の神社では見たことがないほどのセンスの良さだ。なかで授与されるお守りもとてもかわいい。干支が描かれた絵馬のデザインは世界で活躍している地元福岡の人気アーティストのものだった。
「すごいな……」
「お守り見てもいい?」
「いいよ、お参りが済んだらね」
私たちは並んで本殿にお参りした。
『神様、リョータとずっと一緒にいられますように……』
正直これからのハードルは高いと思う。私たちの親や叔母はどう思うだろうか? 世間はどういう反応をするだろうか? 考えるととても怖い。
遼太とちゃんと付き合えなくてもいい。気持ちが通じただけでも十分だ。
ただ、神様私たちを引き離さないで下さい。ずっと一緒にいさせて下さい……。
「おいで、お守り買ってあげる」
遼太は私の手を握るとお守り授与所に向かって歩き出した。
やっぱり子供扱いされている気が……。
結局ちりめんで出来たかわいい『いちご守り』を買ってもらってしまった……。
お守り授与所の裏手には板張りの展望舞台があってそこから眼下に広がる景色を一望できた。
もうすぐ陽が沈む。夕日に照らされた太宰府の街が凄く綺麗だ……。
私たちはイギリスのプロダクトデザイナーがデザインしたという庵治石で作られたベンチに座ってゆったりと流れる時間に浸った。
「リカ、八年前のあの日言えなかったことを言うよ。……俺達、ちゃんと付き合おう」
リョータ……!
……嬉しい。
本当に嬉しいよ。
あの日も今もずっと私が聞きたかった言葉を遼太がくれた。
でも。
「……でも私たちいとこ同士だよ。そんなの……いいのかな?」
それは許されない事のように感じた。
「そうだよ。俺たちはいとこだ」
「うん」
「リカ……俺たちは兄妹じゃないんだ。……付き合えるし、結婚も出来る」
「……たしかに……確かにそうだ……よね」
ガーンと衝撃を受けた気分だ!
確かにそうだ!
……私、自分で自分を枠にはめていたのか!
バカだ、大バカだ!
そうだよ! いとこって結婚できるんだよ!
親戚だから別れた後が大変じゃないの? とかそんな先の事を心配してもしょうがない!
私のバカ! この臆病者!
「私、馬鹿だ……」
「うん……それは俺もだ」
「私達、八年もムダにしてしまった……」
私は呆然とした。馬鹿すぎて力が抜ける……。
「ムダじゃないよ、今思えばだけどね。俺たち、高校生の頃に付き合っていたらすぐに別れていたと思う。ただ近くにいたからって付き合い始めても、世の中にはいろんな人がいるって気が付いてお互いに離れたくなったんじゃないかと思う」
「……だからあの時高橋君と付き合えって言ったの?」
「あの時は……俺たちは長く近くにいすぎることが問題だと思ったんだ。少し距離を置くべきだと思った。周りにも目をむけるべきだって。高橋はいい奴だ。もしリカが本気で高橋を好きになったとしてもあいつなら幸せにしてくれると思った……その判断を俺は死ぬほど後悔したけどな。でも、あの冬に俺たちは付き合わなかったから誰と付き合うよりもやっぱりお前がいいって、今、俺は確信をもって言える」
言葉にならなくて、私は何度も頷いた。
「リカ、好きだよ」
「うん……」
「お前は言ってくれないの?」
「私もリョータが……好き。ずっと、好きだった」
「リカ」
遼太は私をそっと抱きしめてくれる。
「リョータ、これからもずっとずっと大好きだよ」
私はその広い胸にすがって少し泣いた。
こんなに景色が良くておしゃれなベンチになぜ私たちがお正月に座れたのか……その理由はすぐに分かった。
冬に石のベンチは寒すぎる! 抱きしめあっていても体が冷えて仕方がない。
「陽が落ちたら危ないし、風邪をひく前に車に戻ろう!」
「寒い~!」
私たちは寒さに凍えつつも急いで石段を下った。
『神様、やっと遼太と二人でお参りに来られました。……これからは、今まで以上に教師の仕事も頑張ります。小学校では子供たちが楽しめる授業が出来ますように、あと、しっかり学習して子供たちに相応の学力が付きますように。それから……。』
天満宮は学問の神様、菅原道真公をまつっているのでついつい仕事の事ばかり念じてしまった……。
「行こうか」
「うん、ねえ、梅が枝餅食べたい!」
お参りの帰りは参道で梅が枝餅を一つずつ買って食べながら歩いた。
これも子供の頃と一緒だ。
駐車場につくともう夕方だった。
車に乗り込むと遼太が言った。
「なあ、このあと竈門神社に参拝に行かないか?」
「え?」
そ、そんなに恋愛偏差値の高いところに!
竈門神社は縁結びで有名な神社だ。
私は昨年小学校の同僚の先生達とお参りに行った。もちろん全員女の先生だ。
良縁に恵まれるようお願いに行ったのだ!
でも、男女でお参りするとなると……。
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「あ、それで車だったの?」
竈門神社は宝満山の麓にある。あそこは車じゃないと無理だもんね。
「あーそれもあるけど……」
遼太は私のシートベルトを締めてくれた、って近い!う、美しい顔がすぐそこに……。
「車だと自然と二人きりになれるし、隣に座れるでしょ?」
遼太はにっこりと今日一番の笑顔を見せた。
この! イケメン!
策士だ……。遼太は策士だった。
「リョータは恋愛上級者なの?」
「ぷっ、上級者って……ちがうよ。正直好きな子以外から、粉掛けられても困るだけっていうか……」
イケメンならではの発言にびっくりする。
「ワーひどい男だー、女の子がカワイソー」
私は棒読みで非難する。でも、強力な反撃をくらってしまった。
「好きな子ってつまりお前のことだぞ」
うっ、遼太の攻撃力……やっぱりハンパナイ。
「俺は絶対にふらつかないからお前も覚悟を決めろよ」
しかも重い。この重さも嬉しいけどね。
「ねえ、リョータは竈門神社に行ったことあるの?」
「あるわけないだろ、行くならリカとって決めていた」
「そっかー、えへへ嬉しい」
ごめんね、幸せで。ああ、私、幸せだ!
天満宮の駐車場を出発した車は竈門神社に向かって走り出した。距離はそう遠くはない。混んでいなければいいけど。冬は陽が暮れるのが早い。暗くなる前には着きたいな……。
そういえば一つ疑問に思っていたことがあった。
「ねえ、そもそもなんで高三の時に初詣に誘ってくれたの?」
遼太は大きくため息をついた。
「あのさー、お前子供のころにした約束全部忘れてんのかよ」
「え? 何か約束してたっけ?」
「はぁぁ」
また、ため息。
「大きくなったら二人で初詣に行こうねって言ったことも、誘われるならクリスマスに誘われたいって言ったことも、どうせ覚えてないんだろうなぁ」
え? 私達そんな約束をしてたの? 一体いつ?
「小学生までは毎年一緒に来てただろ? その時に約束したんだよ。将来結婚する? って俺が聞いたら『リョータが大人になってかっこいい車にのってたら考えてもいいよ』だって」
「嘘? 私、そんな生意気な事言ったの? ごめん……」
「『仕事が一人前に出来るようになって、部下の一人でも出来たら迎えに来てね』みたいなことも言われたな」
うわー恥ずかしい……。子供の頃の私ひどすぎる。『恥ずか死ぬ』っていう言葉の意味を実感!
ああ、勉強したくない言葉を勉強してしまった!
「そ、そんな子供のころの約束を覚えているなんてリョータは意外とロマンチストなんだね……」
「……別に子供の頃に約束したからって律義にその通りにしたわけじゃないぞ。ただ、ずっとお前が俺の心にいたってだけだ」
「リョータ、私そろそろ恥ずか死ぬ……」
あ、早速使ってしまった……。
「お前は変わらないな」
遼太はあきれたように笑った。
竈門神社には思ったよりも早く着いた。嬉しくてつい走り出した私に遼太はまた言った。
「ホントにリカは変わらないな」
私は振り返って後ろ向きに歩く。
「私だって変わったよ。いつまでも子供じゃいられないんだから」
「大人になったってこと?」
「そうだね、大人になって一番変わったのは……自分の心の痛みに鈍感になったことかな」
私は歩くのをやめた。遼太が追い付いて正面に立った。
遼太はすごく背が高い。私はぐっと顔を上げた。
「リカ……ごめんな、俺はお前を傷つけた……あの時はお前が辻と高橋を誘ったと勘違いしていて、今思うと俺も冷静じゃなかった」
「……ううん、先にひどいことをしたのは私だよ……リョータを信じきれないでこの手を離しちゃったんだから。でも今こうして分かりあえたんだから全部帳消し!」
私たちは再び手を繋いで神社の長い石段を上った。
竈門神社は宝満山の麓にある小さな神社だ。ただここは単に緑豊かな山麓の神社ではない。千三百五十年以上の歴史ある神社なのに、とにかくおしゃれなのだ。女の子が来たくなるのも分かる。私も前回来た時に驚いた。
お札お守り授与所の建物は著名なインテリアデザイナーが手掛けたものでその内装も他の神社では見たことがないほどのセンスの良さだ。なかで授与されるお守りもとてもかわいい。干支が描かれた絵馬のデザインは世界で活躍している地元福岡の人気アーティストのものだった。
「すごいな……」
「お守り見てもいい?」
「いいよ、お参りが済んだらね」
私たちは並んで本殿にお参りした。
『神様、リョータとずっと一緒にいられますように……』
正直これからのハードルは高いと思う。私たちの親や叔母はどう思うだろうか? 世間はどういう反応をするだろうか? 考えるととても怖い。
遼太とちゃんと付き合えなくてもいい。気持ちが通じただけでも十分だ。
ただ、神様私たちを引き離さないで下さい。ずっと一緒にいさせて下さい……。
「おいで、お守り買ってあげる」
遼太は私の手を握るとお守り授与所に向かって歩き出した。
やっぱり子供扱いされている気が……。
結局ちりめんで出来たかわいい『いちご守り』を買ってもらってしまった……。
お守り授与所の裏手には板張りの展望舞台があってそこから眼下に広がる景色を一望できた。
もうすぐ陽が沈む。夕日に照らされた太宰府の街が凄く綺麗だ……。
私たちはイギリスのプロダクトデザイナーがデザインしたという庵治石で作られたベンチに座ってゆったりと流れる時間に浸った。
「リカ、八年前のあの日言えなかったことを言うよ。……俺達、ちゃんと付き合おう」
リョータ……!
……嬉しい。
本当に嬉しいよ。
あの日も今もずっと私が聞きたかった言葉を遼太がくれた。
でも。
「……でも私たちいとこ同士だよ。そんなの……いいのかな?」
それは許されない事のように感じた。
「そうだよ。俺たちはいとこだ」
「うん」
「リカ……俺たちは兄妹じゃないんだ。……付き合えるし、結婚も出来る」
「……たしかに……確かにそうだ……よね」
ガーンと衝撃を受けた気分だ!
確かにそうだ!
……私、自分で自分を枠にはめていたのか!
バカだ、大バカだ!
そうだよ! いとこって結婚できるんだよ!
親戚だから別れた後が大変じゃないの? とかそんな先の事を心配してもしょうがない!
私のバカ! この臆病者!
「私、馬鹿だ……」
「うん……それは俺もだ」
「私達、八年もムダにしてしまった……」
私は呆然とした。馬鹿すぎて力が抜ける……。
「ムダじゃないよ、今思えばだけどね。俺たち、高校生の頃に付き合っていたらすぐに別れていたと思う。ただ近くにいたからって付き合い始めても、世の中にはいろんな人がいるって気が付いてお互いに離れたくなったんじゃないかと思う」
「……だからあの時高橋君と付き合えって言ったの?」
「あの時は……俺たちは長く近くにいすぎることが問題だと思ったんだ。少し距離を置くべきだと思った。周りにも目をむけるべきだって。高橋はいい奴だ。もしリカが本気で高橋を好きになったとしてもあいつなら幸せにしてくれると思った……その判断を俺は死ぬほど後悔したけどな。でも、あの冬に俺たちは付き合わなかったから誰と付き合うよりもやっぱりお前がいいって、今、俺は確信をもって言える」
言葉にならなくて、私は何度も頷いた。
「リカ、好きだよ」
「うん……」
「お前は言ってくれないの?」
「私もリョータが……好き。ずっと、好きだった」
「リカ」
遼太は私をそっと抱きしめてくれる。
「リョータ、これからもずっとずっと大好きだよ」
私はその広い胸にすがって少し泣いた。
こんなに景色が良くておしゃれなベンチになぜ私たちがお正月に座れたのか……その理由はすぐに分かった。
冬に石のベンチは寒すぎる! 抱きしめあっていても体が冷えて仕方がない。
「陽が落ちたら危ないし、風邪をひく前に車に戻ろう!」
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