夫の親友〜西本匡臣の日記〜

2024年5月

5月15日 1/2

妻は朝から明らかに怒っていた。
今までは一緒に寝ていたので、次の日に持ち越すことはなかったが、今回は解決できなかった。
謝らなければと思ってはいるが、キッカケが見つからないまま家を出た。

4時頃に佐々木君の依頼人から電話が来たので、一緒に行ってきた。
戸を取り付けて、帰ろうとした時に奥様が「あれ何とか出来ないの？」と壁を指した。
佐々木君が言っていた溶けたコンセントだった。
一度佐々木君に断られたのに俺にも言ってくるということは相当困っていたのだろう。
隣で工具箱を持った佐々木君の顔が曇った後に身構えた。
使えないと困るところなのかと聞くと、夏に扇風機をつなぎたいらしい。
一昨年ダメになってしまって、去年困ったので何とかしてほしいと話していた。
俺たちは電気工事は出来ないので、他の会社に依頼しないと駄目だと言うと、何とかならないのかと聞かれた。
近くの会社に電話してみるか、俺の付き合いがある会社に依頼するかだと聞くと、どちらでもいいとのことだったので、近くの会社に電話をした。
幸いすぐにこれるとのことだったのでお願いした。
これでと帰ろうとすると、一緒に見て欲しいとのことだった。
変える時間が遅くなるが、無碍には出来ないので工事を見守った。
電話してから終わるまで40分ほど掛かった。
暴言を吐かれたりと佐々木君が言っていたような事は起こらなかった。
とても感謝され、帰りに缶コーヒーの箱を貰ったので会社に置いてきた。
帰り道は学生の下校時間や帰宅ラッシュに巻き込まれた。
妻に帰りが遅くなる旨のメールをすると、一言「はい」とだけ帰ってきた。
家に帰りたくなくてわざと遅く帰る人ようだと思ったが、気がついた時にはもう遅かった。

信号で止まったときに、佐々木君から「嫌なこと言われなくて良かったですね。今日もなんか言われるかと思ってドキドキしてました。」とホッとしたように話しかけられた。
俺も昔は高齢者がいきなり不機嫌になって嫌なことを言われたことがあると言うと、どうやって乗り越えたのかと聞かれた。
前に話した鷲尾さんに、「俺も先輩から教えてもらったんだけど、自分で出来ないことがあると人間は不快なんだと。子供が言葉を少し話せる頃になると、伝えてるのに伝わってないからと不機嫌なるやつと一緒。周りに出来る人がいるのに、自分には出来ないからって。俺も実際に子供が出来たらわかったんだけどな。」と諭された事を話した。
俺も鷲尾さんが話していたように長女が言葉を話し始めてから理解したと言うと、佐々木君は訝しげにしていた。