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188 典型的なダメ二世

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「あわわわわ!? ねね、ねこさん? たたた……」

 クロ主任が青ざめて、右往左往している。

「さっすが先輩でっす!」

 かたやみけ子は、どこかスッキリとした表情で、ねこさんの元に小走りで近づいた。

「……こ、この方は、誰なのねー?」

 大の字で倒れている三毛猫を指さし、彼女に尋ねる。

「はい、とっても嫌なヤツでっす!」

「み、みけ子くん!? そんなこと言うもんじゃないよ? 聞かれたら君まで──」

「もう、聞こえてるよ……」

「ひっ!? すす、すいませんですう!?」

 腰を押さえつつ立ち上がる彼に、クロ主任はおびえつつも手を差しのべた。

「いらねえし……それより、自分の心配でもしたら?」

 その鋭い視線に、主任が白目を剥いて立ち尽くした。

「それから……同じ三毛猫のよしみで彼女にしてやるって言ったけど……もうお前はいいや」

「はあ? そんなのこっちから願い下げでっすよ! 調子のんなこのタコ!」

「……この僕が……タコ……?」

 どこかチャラかった表情が一転、鬼の形相に変わる。

「社長の息子のこの僕が……タコ……ざけんなこのアマ!」

「あ、ごめんなさいでっす!」

「謝っても遅いんだよ!」

「アンタへの謝罪じゃないでっすよ! アンタのことをタコ呼ばわりして、タコさんに迷惑かけたその謝罪でっす!」

「許さん!」

 しゃ、と鋭い猫パンチがみけ子を襲う。

 ぱあん!

「な……!?」

 だがその拳は、みけ子には届かなかった。

「うーん、ねこさん何が何やらわからないのねー……だけど、女性に手を上げるのは、だめなのねー」

 拳を受け止めた右掌に力を込めて握りこむ。

「い、いだだだだーっ!?」

「ねね、ねこさん! この方は、社長のご子息で、今は私の上司のローク様だよ!」

「……え?」

 ぐぎゅーっ!

「ぎゃーっ!?」

 驚きすぎて、思わずロークの拳を握りつぶしそうになったねこさんだった。
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