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179 突然の来訪者

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 雪かきを行った日から、約一週間が過ぎていた。

 ねこさんの筋肉痛地獄も終わりが見えだした穏やかな冬の日の事。

 ぴんぽーん!

 昼食を終え、まったりとおこたで横になっていると、不意に呼び鈴が鳴った。

「はーい、なのねー」

 まだ若干の痛みを感じる腰をかばいつつ、ゆっくりと立ち上る。

「どちら様ですかー?」

 そう聞きつつも、躊躇なくガチャリとドアを開け放った。

「あー、こんにちは……ねこしゃん」

「お!? こんにちはなのねー、大家さん」

 そこに立っていたのは、年老いた大家さんであった。

 御大自らが個々の部屋に来ることはほとんどないので、何事かと不安がよぎる。なのでねこさんは、さらりと聞いてみることにした。

「何かあったんですかー?」

「あ?」

 やはり、普通の声ではよく聞こえていないようだった。

「あのー、お家賃はー、ちゃんと払ってますのねー!!」

 一番初めに浮かんだ懸念を、少し声を張って言ってみる。

「あ? 親分はちゃんと祓ってます? わしは親分でもエクソシストでもないんじゃが……」

 真顔で困惑する大家さんに、後ろで見ていたネコサンとリースが笑うのを必死に堪えていた。

「いーえ! お家賃はー! ちゃんと! 払って! ますのねー!」

「いえーい? お野菜は、ちゃんと洗ってますの……根? 大根かなにかの話かい?」

 必死のねこさんと、全くかみ合わない大家さんのやり取りに、無機物たちの全身が激しく震える。

「だからー! お家賃! お家賃は! ちゃんと──」

「頂いてるねー……ねこしゃんは滞納がないから、助かるねー」

 怒鳴るようなねこさんの言葉を、食い気味に遮る大家さん。

「……ですよねー」

 飄々としている老猫と、すでにげっそりとしているねこさんに、たまらず二人はふきだした。

「お?」

 その笑い声に、大家さんの頭上には大きな『?』が大量に浮かんでいた。
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