181 / 218
179 突然の来訪者
しおりを挟む
雪かきを行った日から、約一週間が過ぎていた。
ねこさんの筋肉痛地獄も終わりが見えだした穏やかな冬の日の事。
ぴんぽーん!
昼食を終え、まったりとおこたで横になっていると、不意に呼び鈴が鳴った。
「はーい、なのねー」
まだ若干の痛みを感じる腰をかばいつつ、ゆっくりと立ち上る。
「どちら様ですかー?」
そう聞きつつも、躊躇なくガチャリとドアを開け放った。
「あー、こんにちは……ねこしゃん」
「お!? こんにちはなのねー、大家さん」
そこに立っていたのは、あの年老いた大家さんであった。
御大自らが個々の部屋に来ることはほとんどないので、何事かと不安がよぎる。なのでねこさんは、さらりと聞いてみることにした。
「何かあったんですかー?」
「あ?」
やはり、普通の声ではよく聞こえていないようだった。
「あのー、お家賃はー、ちゃんと払ってますのねー!!」
一番初めに浮かんだ懸念を、少し声を張って言ってみる。
「あ? 親分はちゃんと祓ってます? わしは親分でもエクソシストでもないんじゃが……」
真顔で困惑する大家さんに、後ろで見ていたネコサンとリースが笑うのを必死に堪えていた。
「いーえ! お家賃はー! ちゃんと! 払って! ますのねー!」
「いえーい? お野菜は、ちゃんと洗ってますの……根? 大根かなにかの話かい?」
必死のねこさんと、全くかみ合わない大家さんのやり取りに、無機物たちの全身が激しく震える。
「だからー! お家賃! お家賃は! ちゃんと──」
「頂いてるねー……ねこしゃんは滞納がないから、助かるねー」
怒鳴るようなねこさんの言葉を、食い気味に遮る大家さん。
「……ですよねー」
飄々としている老猫と、すでにげっそりとしているねこさんに、たまらず二人はふきだした。
「お?」
その笑い声に、大家さんの頭上には大きな『?』が大量に浮かんでいた。
ねこさんの筋肉痛地獄も終わりが見えだした穏やかな冬の日の事。
ぴんぽーん!
昼食を終え、まったりとおこたで横になっていると、不意に呼び鈴が鳴った。
「はーい、なのねー」
まだ若干の痛みを感じる腰をかばいつつ、ゆっくりと立ち上る。
「どちら様ですかー?」
そう聞きつつも、躊躇なくガチャリとドアを開け放った。
「あー、こんにちは……ねこしゃん」
「お!? こんにちはなのねー、大家さん」
そこに立っていたのは、あの年老いた大家さんであった。
御大自らが個々の部屋に来ることはほとんどないので、何事かと不安がよぎる。なのでねこさんは、さらりと聞いてみることにした。
「何かあったんですかー?」
「あ?」
やはり、普通の声ではよく聞こえていないようだった。
「あのー、お家賃はー、ちゃんと払ってますのねー!!」
一番初めに浮かんだ懸念を、少し声を張って言ってみる。
「あ? 親分はちゃんと祓ってます? わしは親分でもエクソシストでもないんじゃが……」
真顔で困惑する大家さんに、後ろで見ていたネコサンとリースが笑うのを必死に堪えていた。
「いーえ! お家賃はー! ちゃんと! 払って! ますのねー!」
「いえーい? お野菜は、ちゃんと洗ってますの……根? 大根かなにかの話かい?」
必死のねこさんと、全くかみ合わない大家さんのやり取りに、無機物たちの全身が激しく震える。
「だからー! お家賃! お家賃は! ちゃんと──」
「頂いてるねー……ねこしゃんは滞納がないから、助かるねー」
怒鳴るようなねこさんの言葉を、食い気味に遮る大家さん。
「……ですよねー」
飄々としている老猫と、すでにげっそりとしているねこさんに、たまらず二人はふきだした。
「お?」
その笑い声に、大家さんの頭上には大きな『?』が大量に浮かんでいた。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる