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175 脱出!

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「ねえ、今、目の前に見えているモンスターって、どんな奴?」

 冷静さを取り戻したキジメロの声が響く。

「ねこさんに見えているのは……またたびゴーレム……あまり思い出したくない奴なのね」

 だが、言葉とは裏腹に、ねこさんはそいつを睨みつけた。

「そう……あたしには、フロストドラゴンに見えているのよ」

「そいつがキジメロさんのトラウマ……?」

 その問いに、彼女は言葉を紡ぎかけて、だが、俯いた。

「……やっぱり何でもないのね。ねこさんは何も聞かないのねー」

 精悍な表情を貼り付けた顔が、またたびゴーレムに向けられた。

「この程度の精神攻撃で音を上げていたら、ダンジョンまたたびにリベンジなんて出来ないのねー!」

 ぽう、とねこさんの体が光に包まれた。

「これって、魔力……なの?」

 魔力のないキジメロでさえ、その膨大なエネルギーを感じている。

「ねこ魔法……猫たちの大行進キャッツ・パレード!」

 ぱぱぱぱぱーっ! と無数の魔法陣が足もとに浮かび上がった。

 発現当初とは比べ物にならないその数に、ねこさんの魔力量が増加している事がわかる。

「さあ、異世界の猫たちよ! またたびゴーレムを血祭りにあげて、さらにこの魔法生物の体を突き破るのねー!!」

 にゃー!

 とんでもない数の猫たち。その同意の鳴き声が、うるさいくらいに響いた。

 ず……どどど……どどどどどどどどどどーっ!!

 そして、パレードが始まった。

 またたびゴーレムに殺到した猫たちは、それをかのようになぎ倒し、蹂躙し、粉々に粉砕した。

 勢いそのままの彼らは、躊躇なくにゃんこキラーの内壁に突撃して、そのどす黒い体に風穴を開けたのだった。

 ぐぎゃああぁあああぁっ!?

 耳障りな断末魔を残して、魔法生物にゃんこキラーは消え去った。

「ふう……無事生還なのね。でも、ねこさんにはこれくらいやってもいいけど、ねこさん以外には止めた方がいいのね」

「ねこさん?」

「猫にはそれぞれ違ったトラウマがあるのね……重さもみんな違うのね」

「……」

 当初のイメージとは全く違うねこさんに、キジメロは戸惑った。

「やり過ぎたネコサンには、後でしっかりとお仕置きなのねー」

 でも、結構好みのタイプ、といった発言は、間違っていなかった……そう思えた。
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